遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅰ
洋助は決闘場に走っていき、僕は、先に会話に飽きてベンチに座って寛いでいた風香の隣にいく。
「光輝〜平和な時は積み決闘しよう!」
風香はどこからともなくエクストラデッキの山を取出し、自分のデュエルディスクに差し込むと、モードを積みデュエルに変えた。
積みデュエルとは、お互いでカードを引き、モンスターレベルの高いカードを引いたものが勝利する簡単なゲームだ。
「デッキの調整するんじゃなかったのかよ?」
聞けば、風香は首を横に振る。
「別に〜?」
何を考えているのか分からない奴である。僕は風香のディスクからカードを引いた。レベル9シンクロモンスター【ミストウォーム】が現れた。
「よっしゃ!レベル9だぜ、こりゃ僕の勝ちだな!」
僕は勝ちを確信して風香に目を向ける。
「お主なかなかやるではないか〜!だが!まだまだよ」
風香はじじくさく言いながらディスクからカードを引いた。
「はい、勝ち〜」
風香は引いたカードを裏返す、そこには融合モンスター【FGD(ファイブゴッドドラゴン)】レベル12の姿があった。
「ば!!!馬鹿な!!」
「エクストラデッキ80枚〜先行は光輝だったからファイブゴットドラゴンを引く確率は79分の1だよ〜」
わかっていた。風香に運で勝利するなんて事は不可能だからだ。良くしらないが、彼女は生れ付きから非常に運がいい少女なのだという。決闘の際もその運の良さが遺憾なく発揮されるため、我がクラスの最強の決闘人は彼女であるといっても過言ではない。
「だが!僕は!!運命を変える!!」
挫けずに僕は二枚目を引く、ランク1エクシーズモンスター、ベビートラゴン。
「…………」
エクシーズモンスターにレベルの概念はない…この時点で相手がエクシーズモンスターを引かない限り、僕の敗北が確定される。
「あちゃー…運無いね〜」
風香は二枚目を引こうと手を伸ばした。
「光輝〜!!」
一人の生徒が走ってくると、息を切らせて倒れこむ。
「だ…大丈夫か?」
僕は積みデュエルを中断し、生徒を引き起こす。
「光輝〜!オレのデッキが!!オレのデッキが〜!!」
彼は我がクラスの生徒で名前は【高無武】という。僕はまさかと思い、彼のデュエルディスクに目を向ける、そこにデッキはない。
「落ち着いて武君、何があったの?」
風香が優しく声を掛けると、武はゆっくり顔を上げ瞳いっぱいに涙を溜める。
「ひでえんだよ!…普通に調整したいとか言って僕と決闘して…勝ったら勝ったでアンティールールだとかいって無理矢理僕のデッキを…!」
恐らく、洋助の言っていたデッキ強盗だろう…明確な…悪だ…。
【パアァッ】
そこで、僕の悪という心の声に連動するかのように、僕のデッキケースが光りだした。
『悪しき汚れを拭い取り、輝きを取り戻せ…』
僕の頭を突き抜けた不思議な言葉…、それは僕の心に正義の心を呼び覚まさせる。
「光輝?聞いてる?」
「武、その悪の居場所は?」
俺は武の前で立ち上がる。
「でた〜!光輝の正義モード〜!」
気の抜けたような言い方の風香、そんな軽口を無視した俺は武るを見つめた。
「つ!ついて来てくれ!!」
武は、希望の光を見いだしたかのように俺の手を取り、走りだした。
俺が案内されたのは体育館の裏側だった。
「あんた達ね…最近噂のデッキ強盗!」
そこには既に海里がおり、海里は凄まじい形相で、目の前でカードを見ながらにやけあう上級生の不良三人と睨み合っていた。
「だったらどうしたよ、可愛い子ちゃん?」
不良の一人は立ち上がり、海里に迫る。
「くっ…」
思わず身構える海里。
「滅びの爆裂疾風蹴りー」
前にいた不良の身体が、風香の全体重を乗せたドロップキックを浴びる。
「どあ〜!!」
不良はそのまま軽々と飛んで倒れ、手にしていた武のデッキらしきカードが散らばり地面に落ちる。
「なにしやがるテメェ!!」
当然見ていた二人が風香に掴み掛かるが、風香は風のような身のこなしですり抜け海里の前に行くと、二組の間に俺が割って入る。
「なんだテメェ!」
不良の一人が俺に叫んで来るが、俺は怯まない。
「決闘人の命を奪う貴様等の悪業、聞かせて貰った…俺と決闘だ!貴様らの悪に汚れた宝石…俺が磨いてやるっ!」
俺はデュエルディスクをセットし、身構える。
「こ…こいつ…」
不良の一人が光輝を見て身を退いた。
「ま……まさか!…こいつがあの宝石の騎士!?」
「宝石の…騎士?」
もう一人の不良は知らない様子の素振りをした。
「こいつと決闘して敗けた奴は…魂を抜かれて人格を変えられちまうんだっ…」
まるで俺が悪みたいな言い草をしやがる…。完全にビビった二人は腰を抜かして倒れる。
「どうした?…悪よ…俺に恐れを為したのか?…そんな程度の根性で悪事に手を出したのかっ!!」
俺に怒鳴られた二人は完全に腰を抜かした。
「何してんだ?…おまえら」
そこへ、遥かに背の高い大柄の男が現れる。丸坊主の男は目にサングラスをかけ、袖のないコートを着ており、屈強な褐色の両腕が覗いている。
「あ!?、兄貴!!」
二人は希望を見いだし、兄貴と呼ばれた男に駆け寄る。
「兄貴!あいつ!!宝石の騎士ですぜ!!」
「あん?宝石の騎士だあ?」
男は俺をじろじろと見れば、サングラスを外してピアスにまみれた唇を笑わせる。
「単なるガキ相手に何をビビってやがる…」
俺は確信した…そして彼の心(宝石)の汚れを見た。
「貴様が親玉だな…さあ!決闘だ!!」
俺が怒鳴ると、男はカクカクと肩を揺らして不気味に笑う。
「面白い…テメェの命もスクラップにされてえようだな!!!」
「スクラップ…だと?」
俺の反応に男は下衆の笑みを浮かべる。
「ああ!そうよっ、俺は決闘者の命を踏み躙るのが大好きなんだよ!!ははっ…敗けてデッキを奪われた奴らの顔は…傑作だったぜ!?ははははははっ…」
「黙れ…」
俺は明確な悪に身体から怒りが沸き上がって来るのを感じた。
「ああん?…」
男は不愉快そうに首を傾げ身構えた…最早話す言葉はない…俺はこいつを倒すそれだけだ。
「はは!!いいねその目!!ゾクゾクするぜ!!」
男は狂喜の笑みで顔を歪ませ、取り出したデュエルディスクを取り付け、サングラスのようなDゲイザーをとりつけた。
「「決闘ッ!!」」
二人の掛け声を合図に、Dゲイザー越しにバーチャルな世界が広がると、二人の頭上に4000の表記が浮かび上がる。
「俺は塵山武士だ!!」
突然、武士が名乗りを上げた。
「…何?」
そんな俺の表情をみた武田は不気味に笑う。
「敗けて命を失うんだ…名前ぐらい名乗らねえと後ぐされわりいだろ?」
「…くだらん…」
心底下らない…俺はそう思いながらも口元は笑わせてしまっていた。
「先行は頂くぜ!!ドロー!!!」
塵山はその右腕でカードを掴み取り引く一目見るなり、それを左手の手札に加える。
「俺は!スクラップ・ビースト(レベル4チューナー・効果、獣族、攻撃力1600、守備力1300)を攻撃表示で召喚だぜ!!」
作品名:遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅰ 作家名:黒兎