遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅲ
「蟻岩土ブリリアント!!!討ち取ったり!!」
土煙の中から海里が姿を現す。
「くくく……」
(2800〜2700)
その背後から蟻岩土ブリリアントの巨大な姿が再び姿を現す。
「はがなっ……」
闇が驚きに目を見開き、口をあんぐりとあけたまま驚きを露に呟いた。
「No.はNo.でなければ倒せない…あたし達には常識よお?そんな常識も知らずにやってたのお!?」
「なんてでたらめな効果を……」
風香は墓地を確認する、墓地にはガスタが二枚…ガルドスの破壊効果は使える、しかし…風香は首を横に振った。
「何故だ風香ッ!?効果なら破壊できる!!」
闇が叫ぶ、しかし風香は無言で打ち切る。
「…ターン終了…だよ…」
「あっはっはっ!!勝ちをみすみす捨てたのかい!!?」
海里はカードをドローしてから、舌打ちする。
「ちっ…屑デッキが…」
海里は、自身のデッキに文句をいうと、険しくなっていた顔を狂喜で笑わせる。
「まあいいわ…蟻岩土ブリリアントのモンスター効果発動!!」
最後のエクシーズ素材を取り除き、攻撃力が2400となる。
「バトル!!【ダイガスタ・ガルドス】に攻撃!!」
蟻岩土ブリリアントはダイガスタガルドスに歩み寄り、そしてガルドスをその巨大な足で踏み潰した。
「い!!!ぎゃあああっ!!!??」(4000〜3800)
風香の絶叫が響いた、目を向ければ、風香は目を見開いて身体を抑えるように蹲り、痛みを堪えるような仕草で震えている。
「なっ…たった200ポイント削られただけだぞ!?…」
洋助は何を大袈裟にとでもいいたそうに風香を見ていた。
「そりゃそうさ〜…なんたってモンスターが受ける痛みをそのまま受けて貰っているのだから〜…擦り潰される痛みなんて…どんな痛みなのかしらね〜?ミドリムシちゃん?…」
海里は見下したように倒れた風香に目を向ける。
「貴様!!」
僕は思わず前に飛び出そうとした。
「戦争だって言ったでしょお?…そりゃあどちらかが滅びるんだから…当然ライフが尽きたら彼女には死んでもらうわあ?…サレンダーなんて認めない…死ぬまで嬲殺しにしてやるわ…」
「そんな事っ!!」
「こうき!!」
風香は顔をしかめたまま立ち上がる。
「風香!!…でもお前っ…」
「じゃましないで…大丈夫…だから…」
風香は痛がりだ、少しの擦り傷でも涙を滲ませるような奴が、磨り潰される痛みを受けながら笑顔で囁き掛けてくる。
「海里の為だから…」
真剣な眼差しで風香は答えた、馬鹿野郎が…僕は静かに首を横に振った。。
「ふん…あたしはターン終了だ…さあ!モンスターを出しな!!」
風香はカードをドローし、そのカードをまじまじと睨んでから、海里に笑いかけた。
「ねえ…No.さん?、海里は…本当に友達が欲しいって願ったの?」
まだ痛みが残るのか、弱々しく儚く消えてしまいそうな声を搾りだした。
「…当然だろ?No.は、宿主の欲望を増幅させるのさ!だから友達が欲しいという欲望を叶えてやってるんじゃないか!」
海里は呆れたように、残忍で残酷な笑みで突き返す。すると風香は、哀れむような瞳を海里に向け、目を閉じた。
「馬鹿な海里…友達ならいるじゃん…あたしやこうきやようすけ!あむ君にひかりちゃん!だって…」
「はっ!なんだい?泣き落としかい!?たった五人じゃないか!!」
「五人も…!!だよっ!!」
風香は一歩も引かずに、海里の心に届けとでも言わん位の声量で叫び返した。
「あたしはガスタ・グリフを守備表示で召喚し、ターン終了!!」
風香は手札からカードを取り出して守備表示のガスタ・グリフが現れる。
「くそガキが…いちいちうぜぇ…」
海里は汚い暴言を吐き出しながらもカードをドローして見た瞬間、表情がにこやかに変わる。
「はっ!!!…あんたの命運も尽きたようねえ…」
海里はカードをニヤニヤ眺めながら風香を見つめ、そして…。
「あたしは…墓地のゴミ共2体を除外し!…フェンリル(レベル4→3、効果、獣族、攻撃力1400→1600、守備力1200→1400)を攻撃表示で特殊召喚!!」
「不味いぞ!!」
青い水の狼が現れると、僕は思わず叫んでいた、そんな事は風香でも百も承知だった。
「フェンリルで!ガスタ・グリフを攻撃!!」
狼は瞬く間にガスタ・グリフに飛び掛かり、その牙で食い千切る。
「はははは!!これであんたはドロー出来ない!!さあ!!ブリリアントでダイレクトアタックだ!!」
巨大な蟻岩土ブリリアントが足を振り上げれば、そのまま風香を叩き潰す。
「ふ!!風香ー!!!」
巻き上がる土煙の中に風香はいた、風香の伏せカード…速攻魔法【緊急テレポート】が発動していた。
「う…ウィンダ…」
尻餅を付いた風香の前にウィンダのウサギのぬいぐるみが転がっている。
「ち…ゴミがじゃましやがって…」
「ウィンダはゴミなんかじゃない!友達だっ!!」
風香は涙を拭い立ち上がる。
「ガスタの巫女ウィンダが倒されたとき!ウィンダの意思を仲間が紡ぐ!あたしはガスタ・イグル(レベル1、チューナー・効果、鳥獣族、攻撃力200、守備力400)を守備表示で特殊召喚!!」
ガルドよりも小さく、ひ弱そうな雛鳥が舞い降り、身体を守るように顔を翼で隠した。
「はんっ!…ならその友達を全滅させてやるよ!ターンエンドだ!」
何も伏せず、海里は風香をいかに残酷になぶり殺そうか考えているかのようににやついていた。
「……」
ドローをロックされた風香は、ハンドの一枚をじっと眺めた…何かを躊躇うような表情で…。
「ターン…エンド…」
そして何かを決心したようにうつむき、目を伏せた。
「さあ!フィナーレといこうじゃないか!ドロー!!」
海里はドローしたカードを見て最高の笑みを浮かべる。
「あたしは!リチュア・ナタリア(レベル4→3、スピリット・効果、魔法使い族、攻撃力2000、守備力1100)を召喚!!」
白髪の霊体となった少女が、まるで風香を誘うかの如く浮かび上がる。
「バトル!!フェンリルでイグルに攻撃!!」
フェンリルが瞬く間にイグルを噛み契り、粉砕する。
「イグルが破壊された事により!!あたしはデッキの中からレベル4以下のガスタを特殊召喚できる!!あたしは!!ガスタ・サンボルト(レベル4、効果、雷族、攻撃力1500、守備力1200)を攻撃表示で特殊召喚!!」
「だからどうした!!リチュア・ナタリアで攻撃!!!」
ナタリアの腕に握った杖でサンボルトを横殴りに叩き飛ばし破壊する。
「いっ!!!!」
(3800〜3300)
風香もサンボルトのように横殴りに叩き飛ばされ、頭から鮮血が飛び散り、地面に倒れる。
「あらあら!!もうお友達は終わり?なら…蟻岩土ブリリアントで…」
倒れた風香の前に巨大な蟻岩土ブリリアントが立ちはだかる。
「あ…ああ…」
「風香!!」
怯えすくみ挙がる風香の顔を見て、僕はいてもたってもいられなくなり駆け出していた。
「ダイレクトアタック!!」
作品名:遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅲ 作家名:黒兎