遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅴ
「ひ！ひいいいい！！！？」（4000-0）
ミス・マドルチェは光に呑まれてライフを浄化され弾き飛ばされた。
「み！！ミス・マドルチェ！！おのれ！外道がっ！！」
ナイト・マドルチェは怒りいっぱいに叫べば、光は腕を組んで笑い飛ばす。
「わっはっは！正義は必ず勝のよ！！ターンエンド」
そしてようやく僕のターンになる。
「では、僕のターン…ドロー…」
「ライフ900の手札事故君に何が出来る？君ではわたしのライフは削れんよ！」
ナイト・マドルチェは気丈に僕を甘く見てきた。
「そうかい…」
僕は何もいわずにカードをドローする。手札に来たのは…このデッキで最強の悪だった。
「僕は手札から魔法カード…愚かな埋葬を発動、デッキからモンスターカードを墓地に送る…ボクが送るのはインヴェルズ万能態（効果、レベル２、悪魔族、闇属性、攻撃力1000、守備力0）を捨てる…」
デッキから弾き出された万能態を墓地ゾーンへ移動させる。
「自分フィールド上にモンスターが存在しない時…インヴェルズの魔細胞（効果、レベル１、悪魔族、闇属性、攻撃力0、守備力0）を特殊召喚…」
漆黒のまがまがしいてんとう虫がフィールドに現れ、降り立つ。
「罠カード発動、侵略の波紋…このカードは500ポイント支払うことで、墓地のインヴェルズと名の付くレベル４以下のモンスターを特殊召喚できる…僕は先程すてたインヴェルズの万能態を特殊召喚…」（900-400）
墓地から弾き出されたぐちゃぐちゃの黒い塊は、不気味に眼を見開きナイト・マドルチェを睨む。
「なんと面妖な…」
「インヴェルズ万能態は、２体分のリリースに使用する事が出来る…」
インヴェルズ万能態は２つに分かれ、ぐちゃぐちゃと汚らしく動き回る。
「な…まさか！」
ナイト・マドルチェは顔を青ざめさせた。
「その、まさかさ…僕は三体をリリースし、インヴェルズ・グレズ（効果、レベル１０、悪魔族、闇属性、攻撃力3200、守備力0）を攻撃表示で召喚」
現れた巨大な４つの手が、万能態と魔細胞を掴み取り闇の中へと引き摺り込んでぐちゃぐちゃと咀嚼すると、ゆっくりと巨大で、強大で、凶悪な悪魔が姿を現した。４つもの鋭い角を生やした腕を組み、朧気な輝きをする瞳がナイト・マドルチェを見下ろした。
「君は運がないな…僕は手札から魔法カード…巨大化を発動…このカードの効果により、インヴェルズ・グレズの攻撃力は二倍となる」
インヴェルズ・グレズ（3200-6400）
「こ！！攻撃力…ろくせんよんひゃ…」
「一つ言っておくよ…僕のデッキに手札事故なんて存在しない…バトル！インヴェルズ・グレズでダイレクトアタック！」
インヴェルズ・グレズはその４つの腕を大きく開き、紫色の侵略の輝きを纏わせてゆく。
「焼き払え…【侵略の業火・ヘル・アブソリュート・フレア】」
４つの腕よりもたらされし侵略の波動が灼熱の業火になり、放たれた業火がマドルチェ・シャトーを焼き払い全てを蹂躙する。
「あ！！あああ！！！ああああああああー！！！！」
ナイト・マドルチェは瞬く間にライフを消し炭にされ、僕の前にWINの表示が踊った。
その後…
「うっわ〜！！」
僕は姉と共にプディンセスケーキを病院へと運び入れた。
「お前、大会でたのか」
病室には海里と光輝もおり、目を丸くしていた。
「闇くん！これ！！ホントに食べていいの！？」
風香はいても立ってもいられない様子ではしゃいでいた。
「勿論ですよ、君が欲しがるだろうと予想していたからね」
「計り知れないわね」
海里は僕を見ながら肩を竦める。
「僕達も出ようとしたんだけどさ、風香に反対されちゃってさ」
光輝が聞いてもいないのにしゃべりだす。
「風香が…反対？」
僕は首を傾げる、風香なら喜んで運びだす筈だ。
「あの時の反対ぶりは凄かったわよね〜」
海里は苦笑混じりに風香に目を向ければ、風香はプクッと顔を膨らませる。
「だってぇ…カップルじゃなきゃ出れないっていうしぃ…」
膨れっ面な彼女も素敵だ…と、見惚れてしまってはいけない。
「あたしが光輝と出てみる？て聞いたらも〜暴れてすごかったんだから」
海里は両手を挙げてお手上げを示してくる。
「暴れてないよ！枕なげたりナースコール沢山押したりしただけだもんっ」
「それを暴れたって言うんだろ？…たく、夜遅くまで電話かけて一緒にいて〜とか…どんだけ恐がりなんだっつの」
光輝はため息をもらして肩の力を抜く。
「だってぇ！光輝が海里と付き合っちゃうかもしれないし！！」
風香は本気で嫌そうに言うのだ。彼女のこんな表情は実に新鮮である。言われた海里と光輝は同時にすっこけている。
「あるわけねーだろっ」
「そうよ！天地がひっくり返っても光輝なんてないわっ！あたしはシャーク様一筋なの！！」
海里はムキになって否定し、光輝は照れた様子で頬をかいている。
「なら〜」
今まで傍観に徹していた光がわざわざ光輝の膝上に座る。
「のわ！」
飛び退こうとする光輝の光は背中に手を回して顔を寄せる。
「あたしの助手になる？」
妖艶な表情でそう言うと、光輝は顔を真っ赤にする。
「き！！キスするか光ッ！！」
「ダメエエエエッ！！」
風香が泣きながら叫び枕を掴んで光輝の顔面に全力で投げつけた。
「どふう！！」
咄嗟に避ける光、直撃を受けた光輝は弾けて床に転がる。いい気味だ。
「冗談よ〜…泣くことないじゃないの馬鹿ね〜」
僕には分かる、光は冗談何て言ってはいない…しかし光はハンカチで泣いてしまった風香の涙を拭ってやる。
「うっ…ひっく…だって〜」
そのままティッシュを掴み取り鼻をかむ。
「ひかりんに迫られたら、光輝なんて一発で落ちちゃうもん！あたし未亡人になっちゃうよ！！」
「いや、未亡人だったらそれ死んでるから光輝が…」
鋭い姉の突っ込みに風香は首を傾げる。
「ふえ？」
そこで光輝は立ち上がり服の土埃を払うと、自らの身体を呈して枕の地面への落下を防いでいた。
「よ！浮気者！」
海里は冷やかすように言えば、光輝は肩の力を抜いてため息を吐き出す。
「勝手にしてくれ…」
光輝はため息を吐きながらも元の席に戻り、風香に枕を返した。
「そろそろ食べるかい？」
僕は立ち上がり、ウェディングケーキのような特大ケーキに歩み寄る。
「なんかウェディングケーキみたいよね…」
海里はケーキを見上げて言えば、風香がバシッと手を挙げる。
「光輝！一緒に入刀しよう！！予行練習しよー！」
風香は凛々しい顔つきでそう決め顔をした。
「はあ？やだよ恥ずかしい…」
光輝は嫌そうに表情を歪める。
「なら風香、僕とやろうか」
「ふえ？あむ君と〜？うん、いいよ〜」
ふふ！入刀役どころか旦那の座はもらった…ここまで長かった…ふふ…。
「いい？ここよ？」
「わあ！すっごおいズブズブささるね！！」
意識を戻した僕の視界に、姉の光が風香とケーキを斬っている姿だった。
「ね！！！姉さんっ！！？」
僕は今年一番の大声でさけんでいただろう。
作品名：遊☆戯☆王ZEXAL THE ORIGINAL Ⅴ 作家名：黒兎