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ぼんくらー効果
ぼんくらー効果
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巴マミが魔法少女になる前の話

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 千花はなにも言わなかった。どう思ったかは知らない。でも、いつものわたしじゃないように演じれば、きっとこの世界が夢であると思える。そう信じた。
 ――それよりも、逃げ切らなくちゃ。
 まず、この崩壊した現状をなんとかせねば。なんとかしなくちゃ。そのあとのことも考えながら、そのあとのことは後で考えよう。そう思い、思考を停止した。

 先に見えた曲がり角。わたしは千花が転んでしまわないように減速しながら慎重に曲がった。しかし、やや進んだ頃に電柱の雨とは違う風を切る音が先の方向からした。その正体がコンクリートの壁のものであることを知るのはそれほど先のことではなかった。
 稲妻が落ちたような音を立てて目の前に落ちたそれはわたし達の行く手を阻んだ。

(どうする……?)

 立ち止まり、石壁を触れて確かめたが、とてもではないが破ることはできそうもない。――この力を使っても。右手にはひまわり畑。左手にもひまわり畑。だが、この中を進むのは得策ではない。

(気配はあるが、感じれない――そんなヤツらが潜む中に進むのはあまりにも危険すぎる――!!)

 もし、このひまわり畑自体が化物が擬態したものならば、それこそ終わりだ。――実際にそれもあり得る。この世界は異形で出来ている。普通のものなど存在しないと思っていたほうがいい。

 幸い、電柱の雨は一時的に止んでいた。おそらく弾が尽きたのだろう。あれだけの質量を動かし、しかもあれだけ連続したのだから相応だろう。お陰で考える時間も確保できた。かと言ってのんびりもしていられない。現に千花も後ろからの追手の姿をはっきりと見たせいで慌てている。
 しかし、あれだけ焦っていたわたしの頭は冴えていた。重ねてしかし、妙案が思いつくわけでもない。

「ルミちゃん!!」
(なら……どこに?)
「ルミちゃん!!」
(壁は登れない。右も左も塞がっている)
「ルミちゃん!? 後ろ!!!」

 そう言われて、ハッと振り返ると、まだまだ後ろにいたはずの化物がすごい勢いで跳躍し、こちらに突っ込んで来ていた。咄嗟に千花の前に出て、千花を後ろに下げた。しかし、咄嗟の判断ではここまでしかできない。
 
(――チッ!! せめてこの場だけでも!!)

 懐に手を忍ばせ、首に掛けている指輪を握り締めて、横に一線、薙ぐ。しかし、間に合わない。
 忍ばせた右手を化物の顎が捕らえた。皮膚を裂き、血があふれる。燃えるような熱い感覚と粘質の液体に浸された気持ち悪い感覚が痛みより先に感じられた。
 肉が溶けるのがわかる。血が溶けるのがわかる。体内に”あってはならないモノ”が流れるのがよくわかる。

「ぐぅううううううううう!!!!!!!!!」

 叫ぶ訳にはいかない。だが、堪え切れない痛みは食いしばった歯を貫いて声として溢れだす。腕に歯に力が入ったため、足の力が抜ける。だが、左足を後方に置くことで何とか踏ん張った。だが、それでは間に合わなかった。
 ――化物が千花を襲う瞬間を、不図、横目で見た。頬を掠めて跳んでいった化物がもう一つ。手を伸ばしたが、届かない。化物が牙を剥いた。間に合わない。――悔やしい。これならいっそ……。
 
 しかし、化物が噛み付くその瞬間、腕に食らいついていた化物が爆ぜ、背中を押されて前に吹き飛ばされた。

(――だ、誰――?)

 が、正体よりも千花を救いたかったわたしは立ち上がろうとしたが、立ち上がるには血を失い過ぎていた。





 ああ、死ぬんだ。とそう思って、死にたくないって思ったのに。なにもしなくって。できなくって。震えたまま縮こまっていた。したら、目の前でなにかが爆発しました。
 死んだと思ったのに、手も動きます。足も、目も見えます。そして、その目で見えたのは土煙と深く落ち込んだ地面。――その中の中心に佇む”黒いオオカミ”でした。

「■■■■■■■■■■!!!!!!!!」

 オオカミの前足は鋭い剣のような爪があって、その爪に串刺しになったひまわりの化物がいました。オオカミは爆発音のような声を上げて、泰然と構えていました。
 するといきなり、オオカミはクレーターをのぞき込んでいたわたしに目を合わせ、思わずわたしは小さく悲鳴を上げてしまいました。食べられちゃうかも――。確か、ゆっくりと後ろに後退する――。
 などと、野生動物と相対したときの緊急マニュアルを思い出しつつ行動していると、オオカミはいきなり飛びかかって来ました。わたしは今度こそびっくりして尻もちをついてしまいました。ですが、オオカミは穴より遥か高く跳躍して、空を切る電柱を噛み砕きました。
 空からコンクリートの細かい破片が舞い、わたしを避けるように大きな固まりは落ちます。続いてオオカミは空中でもう一つの電柱を尾で払い、方向を変え、落ちる勢いをそのままに飛びかかってきたひまわりの化物を爪で引き裂きます。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!!!!!」

 二度目の咆哮はわたしにクレーターを挟んで前方に跳躍して放ちます。ですが、先ほどとは違い、形ばかりのものではなく、その衝撃は地面を抉り、ひまわり畑を掘り返します。すると、空もだんだん――落ちてきて、壁も、夕日も、パズルのピースが剥がれていくかのようにボロボロと、そして、サラサラと世界の欠片は砂のように消えていきます。

「え……? こ、これは、どういう……?」

 ボロボロと、サラサラと崩れていった世界の先には――星が煌めいていて……。少し入り組んだ道に入ってしまったようですが、そこは確実に風見野です――。
 遠吠えの奥から微かに女性の悲鳴のようなものが聞こえたかと思うと、最後に残ったボロボロの夕日が激しく燃えて、なにかを落とすと、その世界は完全に消え去りました。
 
 いつのまにか吠えるのを止めたオオカミはそのまま呆然と前を向いて、立ち尽くしていました。ですが、ややおいてしばらくすると、オオカミは拠り所を探すようにふらふらすると、いきなりロボットのようにこちらを見据えます。わたしは竦んでしまって立てません。

 オオカミはその黒い身体をこちらに向けて、”構え”ます。
 ――え? ど、どうして? 多分、そうでしょう。頭を低く保ち、足に力を込め、腰を高く上げています。今にも跳びかかってきそうな姿勢。そのまま鋭い牙をギリリと鳴らしてこちらに――。

「ルパッキオト。戻って」

 襲いかかった瞬間。黒のオオカミは夜の闇に吸い込まれて、吸い込まれて消えました。――その前に聞こえた声。多分その人が夜の闇の向こうからやって来ました。
 闇の向こうからやってきたのは、女の子でした。わたしとそう違わない――。でも、少し大人びたような。それでいで壊れたような。人間らしい”生きた”、”古びた”感覚はあるのですが、それ以上は”死んで”いるような。健全的なはずなのに不健全な不思議な印象を持つ女の子。