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ぼんくらー効果
ぼんくらー効果
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巴マミが魔法少女になる前の話

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 服装は黒と白を基調としたチカチカとした服装。ごしっくろりーたって言うのでしたっけ? 腕にはふりふりとしたレースが付いていて、またもふりふりのスカートはひざ丈程度の長さ。言うなればコスプレ。とてもではありませんが、こんな服を大衆の面前で着る勇気はわたしにはありません。

「大丈夫? ごめんね。怖かったでしょ?」

 ――なんて失礼なことを考えていたら、その女の子は目の前です。手には黒い――卵? と黒の指揮棒のようなものがありました。それを手で弄びながら女の子は言います。

「危なかったね。多少”このこと”知ってたのかもしれないけど、生兵法は怪我の元。ああいう時はゆっくりと刺激せずに、わたし達が助けに来る奇跡を待つ。それが一番。――認めたくないけどね」
「こ、”このこと”ってなんですか……?」

 ”このこと”? この女の子はあの世界を知っているのでしょうか? そうおもったら、自然と声が出ていました。なんて言ったか思い出していると、女の子は考えあぐねているようでしたが、一息。

「――それよりあの子はいいの?」

 そう言って女の子は道を開けると、夜の闇にぼんやりと浮かぶ姿。赤いタイルの上に載せられた鯉のようなそれは――

「ルミ……ちゃん?」

 ルミちゃんの横たわる姿がそこにはありました。

「ルミちゃん!!」

 ですが、叫べども、駆け寄ろうとしても、足に力がこもりません。ゴスロリの女の子が手を差し伸べてくれましたが、わたしはそれすら払い除けて四つん這いで駆け寄りました。
 なにも考えずに思わず抱きかかえたルミちゃんの身体は冷たくて、閉じた目がまるでもう死んでしまったかのように見えて。揺さぶっても、声をかけても、うんともすんとも言わなくて、泣き出しそうなわたしの手を――ぎゅっと握り締めて

「千……花?」

 か細い声でわたしの名前を読ぶのは――ルミちゃんです。血の気の引いた青白い顔でうっすらと目を開いて、赤子のような力でわたしの手を握って言います。

「怪我……ない? 痛いところ……ない?」
「……ううん。大丈夫だよ。さっきだれかわからないけど助けてくれたの。だから、痛いとこどこもないよ? それより――」
「そう――。よ……かった……」

 そう言って――ルミちゃんは目を閉ざしてしまいました――。

「ルミちゃん!! そ、そんな……ルミちゃん……」

 どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? どうしよう? ―――― なにかできること――――考えても考えても、沸騰した脳内では冷静に判断できません。

「きゅ、救急車!!」

 ――救急車!! まず助けを呼ばなきゃ。そう思ってカバンの中を探したけれど、見つからない。
 カバンを逆さまにしてすべてを出してようやく見つけたけれど、震えて、血で――ルミちゃんの血で滑ってうまく打てません。

「ま、待っててね!! 今救急車呼ぶから!! ぜ、絶対に助けるから!!」

 ルミちゃんを――自分を励ますためにルミちゃんに声をかけます。ですが、後ろから近づいてきたあの女の子がわたしのケータイを取って言うのです。

「――無理よ」

 そのあとに何か言っていたような――でも、わたしにとってその言葉がわたしの心を打ち砕いて、ケータイを奪われた怒りより、無理と言われた怒りより。――なにより無理だと思っていたが故に無理であると言われて、その事実にわたしは心を砕かれたのです。
 こらえていた涙が溢れて、どうしようもなくなって、わたしは、

「うぅ……ああ……だ、だれか……」

 ――でも、そんなの、”無理”。だれも叶えっこないのです。でも、そのはずなのに――。

『助けて――助けて。そう言ったのかい?』

 わたしの声に答える何かがそこにはいた。




「あの……?」

 闇の中。先ほどとは違う、そう、わたし達と同じ”風見野中学校”の制服の着た女の子がその闇を進んでいきます。そんなわたしの肩には――気息奄々のルミちゃんがいます。

「ま、まだですか?」

 出血は酷いものでしたが、負傷は右腕のみで、あの――今、わたし達を導いてくれている女の子が不思議な宝石――? を翳して、傷を塞いでくれました。そして、あの女の子は――ついて来いと。
 助けてくれる――と、言ったのです。

「――そうね。もうすぐ。もうすぐね。ごめんなさいね。持ってあげられなくて」

 と言いつつ、この言葉も何回目でしょうか? と自問します。
 場所は来た道から察するにおそらく、集合住宅団地でしょう。あまり来たことがないので名前は覚えていませんが、確か構造に欠陥があるとかいう根も葉もない噂が広がって、すっかり寂れたという話を菜々ちゃん聞いたのは、ここだったのでしょうか?
 ――そうとしか思えません。うっすらと見える住宅アパートの影が見えるのに、まったく明かりがない。そんなの、おかしいです。そんな異様な雰囲気が余計にわたしを不安にさせます。
 本当にルミちゃんを助けてくれるの――? 確か、あの時――さっきからついて来る謎の生き物。確か、この生き物も――。

「ダメよ」
「な、なんですかっ!?」
「あなた。わたしのこと疑っているよね?」

 ――どういうことでしょう? わたしは虚ろに進んでいた歩みを止めて、前の女の子を見つめます。
 怪しい。怪しすぎます。確かに、わたしの言動には揺らぎがあって、そこからわたしの考えを推理することもできるでしょう。が、”わたしがこの生き物の言うことを聞いてみよう”。と思った瞬間にダメ。と指摘する――。これが一度や二度ならいいのですが、似たようなことを既に七回も繰り返しています。
 ――それに、わたしがルミちゃんを担いでいる理由も、”ルミちゃんを運ぼうとしたあの女の子をルミちゃんが嫌がった”からなのです。
(一体――。何者なの――?)

「何者かって?」
「……わたしの心が読めるんですか?」

 またも、わたしの思考を読み当てた彼女に、とうとう耐え切れずに質問を投げかけました。それに対し、わたしが進んでも構わず進んでいた女の子は、制服の短いスカートを翻して、踵を返すと、闇にぼんやりと浮かぶように艶然とほほ笑み、

「”魔女”。それがわたしの名前」

 ――確かに、そうも見えなくはありません。ゴスロリの衣装は中世のものをモチーフにしているといいますし、魔女もなんだか中世のものっぽい気がします。

「ま、魔女……?」

 わたしはそう言って、固唾を飲んでいると、女の子は、ふふっ。とほほ笑んで、

「冗談よ。――いや、そう違わないか。それもみんなわたしの家に着いたら説明するから。別にとって食ったりしないから、安心して」

 本当に――。本当に信じてもいいのでしょうか? あまりにも不明なことが多すぎて、判断がつきません。しかし――耳元に吹きかかる吐息を聞いていると、迷ってはいられません。

「――いいよ」

 ルミちゃんは苦しそうに目を瞑りながら、戯言のように言います。

「――大丈夫。わたしは、一人で、も、大丈夫だから。だから、あの人に、あの人に近寄らないで……」

 わたしは、ルミちゃんを放ってなんていけない。ルミちゃんを助けてくれるなら、