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ぼんくらー効果
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巴マミが魔法少女になる前の話

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 そういって簡素なお味噌汁用の器にの中に不恰好に盛られたご飯の山に朝の優しい日光が塩を光らせ、その申し訳程度のお湯がご飯を微かに解しています。
 わたしはこの衝撃的な現状をここまで描写したものの、それ以降機能は停止状態です。どんな顔をしているでしょうか。もちろんわたしの顔は。
 
「……もちろん冗談だよ!! これはわたしの。千花のはこれだよ」

 そういって台所の奥から大きなどんぶりを持ってきて、わたしの目の前に置きました。
 白いご飯の上にはとろろ。とろろの下にはお野菜たっぷりのかき揚げ。上に醤油だかめんつゆだか見ただけではわからない黒いソースがふりかけられ、さらに、海苔がまぶしてあります。
 うん。これはおいしそうです。なかなかやるな。といいたいところですが、

「あ、あの……わたし朝はパン派……?」
「いいや。たまにはご飯がいいとおもってね」
「え、いや、朝は食欲湧かないし……。というか、昔に言ったよね……?」
「わたしは朝はしっかり食べといたほうがいいとおもうんだよねえ」
「そんな……そんなこと言われても……食べれないものは食べれないし。というかなんで朝からかき揚げ……?」
「え? だってかき揚げおいしいし、すきでしょ?」
「そ、そりゃあ好きだけど……でも、朝からじゃ脂っこくない? まあ頑張って全部食べるけどね……」
「いや、余ったらわたし食べるし」
「べ、別にいいけど――ルミちゃんってそんなに食べてもいいの?」

 ――結構重要なことなので、少し躊躇いましたが、むしろ重要だからこそしっかり訊くべきだと思ってはっきり言いました。ですが、ルミちゃんは目を細めて、いいのいいのー。と箸を掴んだ手を左右に振ってから小さな茶碗のお茶漬けを掻っ込みます。
 ほんとにいいのかわたしにはくわしいことはわからないんですが、心配ないでしょう。
 
 所詮、わたしごときが心配しても、なにも変わらなかったのだし――。
 
 はやく食べないと時間ヤバいよー。と、ルミちゃんに言われて、ようやく山のようなどんぶりに箸をつけ始めました。意外なことにかき揚げの油はまったくくどくなく、さっぱりしていて、そんなかき揚げは絶妙にとろろとマッチしています。黒いソースはこいくち醤油とめんつゆのブレンドらしく、少し濃いめなのがよく合っています。
 ――かきあげの揚げ方になにか秘訣があるのかな……?
 これなら確かに朝ごはんでも問題ありません。
 少し悔しかったのは秘密です。




 
 いつも通り中学校の制服に着替え、重いカバンを提げて、いつもとは異なる二人の姿で元気よく、出発の挨拶をして、しっかり施錠をし、ばっちり指さし確認してから通学路への道を踏み歩きます。
 ふたりで並ぶと、すこし低い位置で肩が擦れ合ってくすぐったいです。
 少し恥ずかしくなって距離を離しても、ルミちゃんはすぐに詰めるので、わたしはこれで我慢します。
 ――別に嫌じゃないんだから我慢は違うかな?
 なら、なんて言葉が今のわたしの気持ちにぴったり当てはまるのでしょう?
 すこし真剣に考えてみましたが、考えることでルミちゃんに訊きたかったことを思い出します。

「そういえば、ルミちゃん昨日放課後なにしてたの?」

 昨日は一緒に帰りたかったのですが、帰りのホームルーム終了後、菜々ちゃんと追いかけっこしているうちにいつのまにかいなくなっていました。わたしはあの後どうなったのか少し気になっていました。

「ああ、ええっとねえ……。ちょっと泉ヶ岳先生に教材運ぶの手伝わされちゃってね……」
「そ、そうだったんだ……。泉ヶ岳先生ってそういうとこあるよね」
「まあね……。あ、そういえば昨日なんか話したいって言ってたね。もしかしてそのこと?」

 わたしは静かにうなずきます。そして、わたしはどこから言えばいいのか……この前の続きでいいのか、最初からでいいのか。迷ってしまいます。わたしはあたりの静けさに耐え切れず適当に、

「今日って、どう?」
 と、まったくなんのことを言っているのかわからないようなことを口走ってしましたが、ルミちゃんは少し思い出す仕草をすると、勘ぐるように言いました。 
「どうって……昨日の朝に話したやつ?」
 わたしは静かに頷いて、
「できたら……今日もルミちゃんと行きたいなって……ダメ?」
 と、尋ねます。ルミちゃんはわたしを軽く見上げて、うん。と首を縦に振ってくれました。
 わたしはその返事に、とても幸せになります。

「うれしいっ……。ねえねえ。今日も帰りどっか寄ってく?」
「う〜ん。見滝原のまわりはだいたい廻ったしなあ……」
 確かに……とわたしも思います。最近はわたしだけでも毎週何回も行っているので、回りたいお店も無くなって来ました。いや、わたしだけなら園芸店とかに行きたいのですが、流石にルミちゃんに付き合ってもらうなんてできません。行きたがるわたしが言うのもなんですが、あんまり面白い場所ではありませんし。
 わたしとルミちゃんは遠くを見ながらしばらく唸っていました。議論する対象がないので、会話も無く、少しばかりの低い声が聞こえるのみです。

「ならいいところを知ってるわよ?」

 すると、突然黄色い髪の少女が現れ、そういって微笑みます。よく知ったその姿に、わたしは彼女の名前と一緒に朝の挨拶を送ります。
「あ、まーちゃんおはよ」
 まーちゃんも同様に微笑みながら朝の挨拶を返してくれます。わたしは微笑みながら、続けて、
「今日は珍しいね。まーちゃんと一緒に登校するなんて、初めてじゃない?」
 まーちゃんは家が学校と近いのでいつもギリギリのわたし達と違い、いつも登校の時間ははやいのです。ですが、今わたしと一緒に登校しています。わたしはそのことが気になりました。

 まーちゃんは巴マミちゃん。”マミ”の”マ”からわたしはこう呼んでいます。おっとりとしていて、年長さんのような雰囲気を醸し出すお姉ちゃんみたいな人です。
 お菓子など甘いものが大好きなのですが、少し体重を気にする節があるのでわたしは本当に食べたいだけ食べているまーちゃんは見たことがありません。
 黄色い髪にツインのくるくると、不思議な髪形ですが、未だにその名前がわかりません。

「ええっと……ちょっと気になることが合って……」
「へえ。自己管理の好きなまーちゃんが気になるってだけで行くようなことってなによ?」
「好きって……なによそれ?」
「うーん。わかる気がする。よく体重とか気にしてるもんね」
「ちょ、ちょっと! 女の子なんだから普通でしょ?」

 そう言われてわたしはルミちゃんのことを見ますが、帰ってきたのはきょとんとした顔で、わたし達はそれだけで意思が疎通できました。ルミちゃんが代表として一言。

「別にわたし男興味ないし」
「ええ!!?? わ、わたしは違う!! 違うから!!」

 そ、それは衝撃的な告白です。さっきまでの描写は撤回です。わたしは違います。男の子が好きです。 その後、ルミちゃんは続けて言います。

「それに、そこまで痩せてて欲しいなんて誰も思ってないし。むしろ触って柔らかいほうがいいよ。まあわたしの意見だけどね」