とある転生者の話(第二部)
「どうしてこうなった」
「なにごちゃごちゃ言ってる、さっさとポケモン出せ」
目つきの悪い赤毛の少年に絶賛バトルを仕掛けられ中というね。
「いや、だってあんたシルバーだろ?てことはポケモン一匹しかいないじゃん。
しかもここからポケモンセンターって遠いから、次の町まで待ってよ」
「お前なぜそれを…まさか研究所からの!?」
いや、盛大に勘違いしてるけど違うからね?
「研究所は寄ったけど関係ないよ。
だから盗んだポケモン返せとかは言わない。」
「…なら見逃せとでも言うのか?」
むしろあんたが言わないか?
「ボク、手持ち二匹なんだけど」
「だからなんだ、雑魚が二匹固まったとしても雑魚だろ」
「いや、片方あんたじゃ倒せないよ?レベル的に考えて」
「な!?オレを馬鹿にするのか!!」
違うっつーの
「ボクの相棒、手加減とか苦手だし嫌いだから即終わるけどいいの?」
「お前、そこまでオレを馬鹿にするか!」
あー、なんて言えば良かったんだよ!
「出せっ!そのお前の相棒からぶちのめしてやる!」
「えー、だからこっからポケセン遠いから嫌だってば」
そう言い合っていると、ハッサムがボクを止めた。
「ハッサム?」
『……体力が瀕死にならないギリギリまでになったら止めると言うなら相手する』
「えー、まぁ、それなら傷薬使えるけど…」
『手加減…してやる』
「超不満そうじゃんか」
「さっきから何をごちゃごちゃ言ってるんだ!」
シルバーがしびれを切らした。
「ハッサムが瀕死ギリギリになったら敗けを認めるってなら相手してやるって言ってるけど」
「はぁ!?」
あぁ、やっぱそういう反応なのか。
と思ったら予想外な発言が飛んできた。
「お前、トキワ出身なのか?」
「え?…ホウエン出身だけど?」
「じゃあ親戚に、特に両親や祖父母にはいないか?」
え、やべぇ、母さんの実家知らねーんだよな…
「父さんはヒワダ出身らしいけど、母さんはカントーとしか聞いてないし、両親は親戚と縁がないからそれ以上わからない。
それが、何か?」
「何かって…お前、何も知らないのか?」
「知らないし何を言ってるかわからない」
呆れたようにシルバーは語りだした。
トキワ出身の者には稀にポケモンと会話出来るだけでなく、生き物を治癒する能力を持つ者が生まれるらしい。
基本的に遺伝するその能力は妬まれ、蔑まれた。
その力に溺れる者も、力を使いこなす者も、皆怖れられた。
「あんた詳しいな」
「じ、常識だっ!この地方で暮らしてる人間なら、だ、誰でも知ってる!!」
「の割には詳しすぎ。あんた、兄弟にいるだろ」
「い、いないっ!親にもいないっ!」
墓穴掘ったぞこいつ。
「親にいるかなんて聞いてないけど?」
「っ!?」
それきり、黙った。
作品名:とある転生者の話(第二部) 作家名:紗雅羅