とある死神の平行世界
「天鎖斬月!」
一護が卍解する。
だが、自動書記はまったく動じない。
新たに一護の分析、迎撃のパターンの変更。
「最優先の相手黒崎一護を確認。これより迎撃を開始する。」
「やれるもんならやってみやがれ!」
一護が刀を構えて向かおうとすると、自動書記は魔法陣を再び身体の前に展開し光線を放ってくる。
それをかわすが、それにあわせて光線を追尾させる。
加えてステイル、神崎にもその光線を向ける。
「いけ!イノケンティウス!」
「唯閃!」
二人も防ぎに掛かるが、自動書記の解析能力に逆算、打ち消しなどの裏を取られ喰らっていく。
一護も先ほどから躱してはいるが、だんだんと苦しくなっていく。
動きが読まれている。このままじゃジリ貧もいいとこである。
「おい!あんたらなんか手はねぇのかよ?!」
「うるさい!自分の身を守るだけで精一杯なのだよ!」
「ですが、確かにこのままじゃ持ちませんね。」
一護も必死に月牙で打ち消しながら躱すが、さすがに限界だ。
あと、3分も経てば処理しきれずに攻撃の嵐を喰らうだろう。
なにかないのかよ?!
月牙を打ち込むにもこれじゃ力を溜め込む時間もありゃしねぇ!
「黒崎一護!」
俺が諦めかけた時、神崎が俺に言う。
この状況を打破する言葉を。
「私とステイルで一瞬だけスキを作ります!その一瞬でことが足りますか?」
それは、俺にとって最後の希望でありチャンスだ。
たとえできないとして俺はこう答えただろう。
「十分だ!頼む!」
神崎とステイルは一斉に彼女に向かって魔術を放つ。
今までにない強力な力を感じた。
だが、自動書記はそんな力をものともせず相殺する。
その一瞬を一護は見逃さない。
確かにこの時間はほんの数秒にも満たないだろう。
けど、一護にはそれで十分だった。
理由はわからない。今までにない力を感じた。
一護は一気に懐に入る。
刀を構え月牙を刀に纏わせて、溜めていく。
彼女の首輪を…自由を取り戻すために。
「月牙……天衝ぉぉぉぉぉぉ!!!」
刀を魔法陣にぶつける。
凄まじい衝撃だった。思わず後ろに吹っ飛びそうだった。
しかし、一護は踏みとどまりその幻想を打ち殺し続ける。
この世界の別にいるはずのあの少年の代わりに。
まるで、ガラスが割れるような音を立てその魔法陣は消えていく。
自動書記のモードが切れたのかインデックスはその場に倒れ込む。
一護も立つことがきつくなり、その場にしゃがみ込む。
すると、突然白い羽が落ちてきた。
神崎は一護に向かってなにか叫んでいた。
しかし、一護には聞こえていない。先ほどの衝撃で耳がやられていたからだ。
何もわからず一護は最後の力を振り絞って、その落ちてくる羽に向かって月牙を放つ。
意識があったのはそこまでだった。
作品名:とある死神の平行世界 作家名:スバル