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とある死神の平行世界

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「ふむ。その顔を見る限り、私の目的には気づいているようだが、ならばなぜ止めようとするのだ?かつてお前がルーンを刻んだように私の願いもまた禁書目録を救うことであるのに。」


アウレオルスはそう言って、一護達の方をゆっくりと振り返る。
一護はすぐにでもインデックスを連れ戻そうと身体を動かそうとしたが、ステイルがそれを腕を出して止めた。


「簡単だよ。その方法では彼女を救えない。失敗するとわかってて差し出すほどその子は安くないんだけどね。」


「否。貴様のそれは嫉妬だろう。それは至極当たり前だ。今まではともに夢を失い絶望した『同志』だったが、それを私が出し抜くとあっては納得がいかない。それに関してはなにも追求しない。私の妄執も原理は同じだ。」


彼は皮肉とは考えず、自然に言っている。
しかし、その今の行動すら妄執であることに彼は気づいていない。
ステイルはため息をついて、一護の方を見る。


「言ってやれ、今のパートナー。目の前の奴が抱えている致命的な欠陥について。」


「なに?」


そこで、やっと一護の方に反応を示した。
そして一護は告げる。真実を。


「お前…一体いつの話してんだよ。インデックスの記憶はもう消えない。俺が彼女の鎖を壊したからな。」


「馬鹿な…。」


アウレオルスは未だに信じられないというような顔だ。
だがしかし、知らないのも当たり前のことである。
なぜなら、一護がインデックスを救ったのはつい一週間程前のことだ。
ずっとインデックスを救うために研究をしていたアウレオルスが知る機会などあるはずがないのだから。


「馬鹿な、ありえん!いかなる方法にて禁書目録がある!?人の身で、それも魔術師でもなければ錬金術師でもない人間に何ができるというのだ!」


「それについてはまったく僕にも皆目検討もつかない意味不明な能力だけど…。彼の黒い気には特別な力が宿っていて、人のてには余る能力の持ち主ってことだ。」


愕然。
今までの冷静な態度は、もはや彼のどこにも面影がない。
彼は一護を見る。そして、


「……、待て。それでは。」


「ああ、ご苦労様。君がローマ正教を裏切って三年間も地下に潜っていたらしいけど、全くの無駄骨だよ。努力が報われなかった痛みはわかるが気にするな。今のあの子は君が望んだ通り、パートナーと一緒にいてとても幸せそうだよ。」


ステイルのその一言は決定的だった。
アウレオルスは、自分を支えていた全てを破壊されたように狂笑する。


「ははははははははははははははははははははははははっははははははっははははははははははははははっはははははははははははははっははは!!」


…もうこいつは元には戻れない。
一護は漠然と、だがよくわからない確信を持ってそう思った。だが違う。
彼は壊れた時計のような瞳に再び生気が戻る。
アウレオルスの大きな狂笑によって机に横たわっていたインデックスが目を覚ましたのだ。
彼女はうっすらと開いた目で辺りを見渡し、ある一人を見つける。


「……、いちご?」


その目はすぐ近くにいるアウレオルスなどみていない。
彼女は自分が何かされていたかもしれないことなど無視して、一護を見た瞬間にとても幸せそうに笑っていた。


「インデックス!」


「いちご?わたしとってもお腹空いたかも…。」


「わかった。帰ったら腹一杯食わせてやる。」


その言葉を聞いたインデックスは笑いながら再び意識を失う。
一護も覚悟する。
ここで終わらせる。こんな悲しい幻想はここで終わらせなければならない。
アウレオルスはやり場のない怒りを一護にぶつけてくるだろう。
その怒りを自分が受け止めなければならない。
そう感じた。


「倒れ伏せ!侵入者ども!」


その言葉を唱えた瞬間一護とステイルはなにかとてつもない重力によって地面に叩き付けられる。
身体がうまく動かせない。
まるで無数の鉛を身体に仕込まれたようだ。


「あははははは!簡単には殺しはしない!もっと私をじっくり楽しませろ!禁書目録に手を出すつもりはないが、ここらで発散をしないと自我が持たないからな!」


錬金術師は髪の毛のような針を取り出す。
震えた手で首筋にそれをあて、体内のスイッチを押すようにそれを突き刺した。
そして、突き刺したその針をすぐに横に投げ捨てる。
まるでそれが攻撃の起点を表しているようだ。


「待って。」


そこへ、姫神秋沙が立ちふさがる。
しかし、かつて必要としていた『吸血殺し』の能力を目的としていた錬金術師は今となってはどうでもいいもの。
その状況のなかで彼女が割り込んでくれば、なにもためらいもなくあいつは彼女を殺しにかかるだろう。


「やめ……に、げ…ろ……」


一護は声をだそうと力を絞るがうまく出せない。
なんとか代行証を取り出すため必死に手を動かす。
なんとか腰まで手を伸ばしてきたが、


「死ね」


その瞬間彼女に何がおきたのか?
知識としてある死因の中でなにも当てはまらない。
まるで電池の切れた人形のようにその場に倒れ込む。
一護は代行証を取り出し、死神になる。
彼女を地面に倒れる寸前で受け止める。
黒い気を彼女に纏わせながら一護は叫ぶ。


「ふっざけんじゃねぇぞ、てめぇ!!!」


抱きしめた彼女は驚く程軽かった。
まるで中身が抜け落ちたような感覚だ。
だが、少しずつだが鼓動を感じ始める。


「ばかな!姫神秋沙の死は確かに確定したはずだ。その黒い気は神の聖域の秘術を打ち消せるとでも言うのか?!」


もうそんなことは一護にとってなにも問題ではない。
確かにあいつに同情をしたし、共感すらもした。
だが、自分のもつ憤りを抑えるために誰かを傷つけ満足しようとするその考え方を認めるわけにはいかない。
いや、認められちゃいけない。
錬金術師を睨み、背中の刀をつかみながら一護は叫ぶ。


「いいぜ、アウレオルス=イザード。てめぇが、自分の思い通りにできるってなら…」


「まずはその幻想をぶち殺す!」

作品名:とある死神の平行世界 作家名:スバル