とある死神の平行世界
俺は地面を力で反発させて高速移動して相手の懐に入ろうとする。
だが、神崎はまったく動じない。
彼女もまた聖人と呼ばれるほどの魔術師だ。
一護のその程度の動きなど目で十分追える。
「その程度ですか?七閃。」
またもや、刀を抜かずに衝撃波のようなものが飛んでくる。
当然一護もかわそうとするが、かわしきれずにあたってしまう。
本来の威力なら一護の身体は致命傷だろう。
だが、一護は数メートル吹っ飛ばされたがまだ生きている。
手加減されているのだ。
「わかりましたか?あなたとの力の差は歴然です。おとなしく彼女を引き渡してください。」
「なんでだよ…。俺を殺さずにそうやって話し合いで解決しようとするやつが、やってることの善悪が見分けつかないわけねぇだろ!なのにどうしてこうなんだよ!?」
「私たちだってこんなの好き好んでやってるわけないじゃないですか!ですが、こうしないと彼女は死んでしまうんですよ!彼女は…私の同僚にして、大切な親友なんですよ。」
インデックスが死ぬ?
一体どういうことだ?
彼女はいたって健康体だそれが突然死ぬなんてことは考えられない。
「信じられないって顔ですね。いいですよ、教えてあげます。彼女は完全記憶能力のせいで…中にある10万3000冊の容量の分で一年しか生きられないのです。」
記憶のせいで一年しか生きられない?
そんなはずはない。それなら普通の人間でも10年そこら生きたら死ぬことになる。
「ウソつくなこら。人間が一年かそこらの記憶で死ぬわけねぇだろ。」
「普通の人はいらない記憶を忘れることで、脳は保たれているのです。」
人間の脳はそういう構造になっているのか?
いや、違う。俺はこの間たまたま小萌先生の授業の合間のまめ知識で話してた話を思い出した。
人間の脳は…
「人間の脳は元々140年分の記憶可能なものだ。『記憶』というものはそもそも一種類じゃねぇ。言葉や知識の『意味記憶』、運動の慣れなんかの『手続記憶』、そして…思い出の部分である『エピソード記憶』がある。それぞれの記憶は脳のなかでも別々に記憶されることで記憶によって死ぬなんてことはありえない。」
俺がスラスラ言ったことに神崎はかなり驚いた顔だ。
それもそうだ。言った俺が一番びっくりしてるんだからな。
人間追い込まれるとスゴいことになるな。
「だとしても…現に彼女は記憶のせいで苦しんでる姿を私たちは目にしています!それをどういう風に…「それはおそらく、幹部の奴らがなにか特別な魔術でもしかけたんじゃないか?」
確証はない。
だけど、それしか可能性は考えられない。
「どうだ?俺たちが今争っても意味がネェンだよ。」
「あなたの話は正論なのかもしれない。ですが、私たちは今までこうやって彼女の命を繋いできました。ですので、より安全な方法を私たちは取らせていただきます。」
「チッ!頭かてぇな。だったら力づくでも止めさせてもらうぜ!」
俺は再び高速移動で縦横無尽に移動する。
これで狙いを定めずらくなっただろう。
そこからの月牙で勝負にでる。
「まだわかりませんか?七閃!」
しかし、俺の考えはどうやら甘かったようだ。
戦況は正直言って最悪だ。
これから俺は、諦めるまで神崎の攻撃を食らい続けることとなった。
作品名:とある死神の平行世界 作家名:スバル