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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (13)

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ほんとに、人と関わったことがあるポケモンばかりなんだ。

こんなにたくさんのポケモンが、人に捨てられたなんて…。

こんな場所、離れればいいのに…。

『ねぇ、なんでこんな場所に…? みんなで街を出ればいいじゃないか』

タッくんの言葉に、チョロネコはくるりと振り返った。

『そうかもね、ボスも同じ事を言っていたわ。でも誰も動かなかったわ』
『どうして…』

『見た目は悪いけど、ここは意外と住みやすいのよ。食べ物には困らないし、温かいし、雨も防げる。それに、どうしてかな……みんなここを離れたがらないの。人の声が聞こえるせいかもしれないわ。まだ、迎えにきてくれるかもしれないってどこかで信じているのかも…』

『…君も?』

『どうだろう?私は、違う気がするな。もう随分前に、そういうことは考えないことにしたの』

『…………』

『そんな辛気くさい顔しないでよ。今は私、ここ気に入ってるの』

そう言って、再び歩き始めたチョロネコの後を、タッくんは黙ってついていった。

細かい瓦礫の山の急斜面を、すべりそうになりながらよじ登ると、その上にこのガラクタ山の頂上があった。

辺りはでこぼこしているガラクタばかりで、頂上も同じように歩きにくい場所だろうと思っていたが、みんなで整えたのだろうか。地面はほぼ平坦にならされていて、足に刺さりそうなガラス片などの危険なものも見当たらなかった。

ならされた平坦な地面の上には、古くなった机や本棚なんかが倒れ込みながら、囲いのようにいくつも積み重なっていて、それがちょうど、小さな洞穴のようなものを作り上げていた。

ボスの住みかとしては、立派なものだ。

ガラクタでつくられた洞窟の中では、2つの目が光っており、きっとあれがこの街のボスだろうことは明らかだった。

『ほら、ボスに挨拶するんでしょ?』

チョロネコが言った。

『ああ、うん。案内ありがとう、えーと……』

『ミーナよ。早く、あなたのトレーナーに会えるといいわね』

『うん。ありがとうミーナ』

『どうしたしまして、じゃあね!』

ミーナはそう言ってひらりと身を翻すと、こちらも振り返らずに来た道を戻っていった。

ひっそりと後ろからついてきていた、他のポケモン達もミーナに促されて帰って行く。

静かになった山の頂上で、この街のボスは、体を起こしてこちらへ向かってくるわけでもなく、歩いてやってきたタッくんを、ただ黙ってじっと見ていた。

暗がりから光って見える青い眼光。

敵意は感じない。

ただ、なぜだか、笑っているようにみえて、馬鹿にされている気がした。

そんなこと、気にしている場合でもないのだけれど。

今は何時だろう。ここに辿り着くまでどれくらい時間がたったのか考えると恐くなる。

早く挨拶とやらをすませて、トウコを探さないと!

『どうも、こんにちは。ここのボスと聞いてきた。よそ者で申し訳ないが、この街の公園までの道が知りたいんだ。面倒だとは思うけれど、教えてほしい』

暗がりから姿を見せないボスに向かって、タッくんは淡々と話した。

のそりと音がして、暗がりが動く。

青い眼が弓なりに歪んだ。

やっぱり笑っている。

いったい何だって言うんだ。

起きあがったボスがゆっくりとこちらに向かってきた。

ゆっくりと巣穴から姿を現したのは、大きなレパルダスだった。

『道を教えてほしいだって?』

クツクツと笑うレパルダス。

なんだか、いけ好かない奴だ。こんなのがこの街のボスなのか?

『ああ、教えてほしい』

『ふ~ん』

レパルダスは、じろりとタッくんをみると、舌なめずりした。

『なら、オレとバトルして勝てたら教えてやるよ!』

『バトルだって? 僕はただ道が知りたいだけだ。そんなことする必要ないだろう』

そんなのに時間をかけていたくない。

『僕はここを荒らしにきたわけじゃない』

どうにか話し合いに持っていきたいのに、相手のレパルダスはやる気十分といった様子だった。

するどい鉤爪をちらつかせる。

『なんだよ、自信がないのか?』

『そういうわけじゃない』

『なら、勝って見せろよ!』

鋭い鉤爪を光らせて、レパルダスが飛びついてきた!

避けたタッくんの元いた場所の地面が、爪痕で大きくえぐれた。

辺りはやけに静かだ。

まるでボスとの戦いを邪魔しないようにしているようだ。

―― まさか挨拶って、バトルなのか?!

なんて面倒くさい!

こんなのさっさと終わらせてやる!

レパルダスのくりだす、みだれひっかきを避けながら、タッくんは辺りを観察した。

周囲にツルを絡ませられる場所っていったら、目の前のこのボスのねぐらくらいだ。

でも、あれを引っぱったら、いろんなものが崩れるんじゃないか?

あれが、山の上から崩れたら、他のポケモン達までいらない被害を受けるかもしれない。

それはマズイだろう。

ガラクタだらけのこの場所じゃ、周囲の植物を上手く利用して使うこともできない。

どうする!?

『余所見してるなよ!』

ふっとレパルダスの姿が突然目の前から消えて、背中に衝撃を感じた!

だましうち!

地面に頭からぶつかりそうになって、急いで体勢を整える。

そこにつかさず入ってきたレパルダスの攻撃を、つるではじいた!

目の前から、鋭い爪を活かした、みだれひっかきの猛攻撃が来る!

よけきれずにいくつか受けながら、後退するが、レパルダスはしつこく追い回してきた。

これじゃあきりがない。

距離が近すぎるんだ、一回離れないと!

『グラスミキサー!』

大きく湧き上がる木の葉。

『ぐぅっ!』

緑の突風を避けようと、レパルダスは後退したが、すべては避けきれずにいくつかの切り傷を体に受けた。

体に受けた傷を舐めながら、レパルダスは再びこちらに睨みをきかせた。

―― あれ? 意外に動きが遅い? 気のせいか?

技の判断が間違っていたわけではないのに、違和感を感じた。

妙だった。

レパルダスはチョロネコの進化形だ。

すばやさだけなら、チョロネコでさえも毎回、手を焼くというのに、その進化形にしては遅すぎないか?

せいぜい、時間稼ぎのつもりで起こしたグラスミキサーだ。

さっきの攻撃くらいなら、よけられてもおかしくなかったはずなのに、目の前の奴はよけきれていなかった。

恐らく、すばやさだけなら、僕では絶対に勝てないはずなのにだ。

なのに、せいぜいチョロネコと同等くらいの動きにしか感じられない。

今までの攻撃だって、特別早いとは思わなかった。

手を抜いているにしても、元々すばやいポケモンがこの程度?

―― どういうことだ?

自然と、顔をしかめていたらしい。

『なんだ? 何か納得がいかない顔をしているな』

レパルダスが言った。

『納得なんかできるか。こんなことで時間をつぶしているのもバカらしいんだ。決着つけるなら、さっさとつけてやる!』

『やれるものなら、やってみればいい!』

すばやさが遅いレパルダスなのか? まぁいい、ならできることがある!

走り込んできたレパルダスに向かって、タッくんも前へと走り出した!

素早く相手に標準を合わせる。