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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (13)

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鉤爪をむき出しにしながら、飛びついてきたレパルダスの攻撃を、わざとかすらせて腕に受ける!

代わりに入り込めた懐に、尾の先を突き刺した!

そのまま、体をねじらせてレパルダスの後方へ離脱する。

背後では、レパルダスに刺しこまれたやどりぎのタネが、急激に成長を始めていた。

レパルダスの体から、養分を吸い出したやどりぎのタネが、勢いよく緑の細いツルをのばす!

そのツルがレパルダスの体にしゅるしゅるとまきついた!

『くそ!こざかしい手を使いやがって!』

首に巻き付いてきた細いツルを断ち切ろうと、レパルダスは自らの首に爪を立ててもがいた。

『小賢しくて結構だ。さっさと道を教えてくれるなら、そのツルとってやるよ』

『ふざけるな! おまえなんかに降参するものか!』

鋭い牙をむき出しにして、レパルダスはいきり立っていた。

首に巻き付いた、やどりぎのツルに爪をたて、自らの肉がえぐられるのも気にせずに断ち切ると、タッくんに向かって大きく飛びかかった!

姿がぶれる!

―― だましうちか!

ハッと背後に意識を向けたときには、目の前には、すでにレパルダスの爪があった。

ダンッ!!と激しい衝撃と共に地面に叩きつけられた!

ぎりぎりと、体を押さえつけられる。

重い身体に息が詰まった。

『やっぱり弱いな。そんなんだから、誰も守れないんだ!』

嫌みな青い眼光。

腹のたつ声。

コイツ!?

『降参するか?』

クツクツとレパルダスが笑う。

『誰が、降参するか!』

体に食い込んでくる、鉤爪を押し戻そうとタッくんは力を入れた。

余裕こいているけれど、コイツだってふらふらじゃないか!

体にまきついたやどりぎのタネは、じわじわとコイツの力を吸い上げている。

首筋の傷からは、ポタポタと血が垂れてきていた。

『そうか、ならこのまま締め上げてやる!』

『うっ!』

長期戦となれば有利だが、このままだと、かなりまずい。

重さで先に意識が飛びそうだ。

さっさとコイツの体力を削り取らないと!

この体勢のままだと、グラスミキサーはつくれない。どうする!?

何か大幅に体力を削り取れるような方法を考えないと!

『どうした? 結局勢いがあるのは口だけか?』

ぐぐぐっと、重みが首にかかってくる。

苦しさで目の前が揺らいできた。

こんなところで負けるわけにいかない。

こんなムカツク奴になんて負けたくない!

トウコに会うんだ。勝ってトウコに会うんだから!

意識が混沌としてくる中、小さな力を感じた。

ほんとに小さな、でも温かみのある力。

尽きようとしている体力を、じわじわとほんの少しだけ暖めてくれている。

やどりぎの力。

そうか、あのタネは僕と連動しているんだった。

だとしたら、僕の意思にも反応してくれるんじゃないか?

僕の分身のようなものだもの。

あのタネだってきっと僕に似て、負けず嫌いのはずだ。

最後まで諦めないだろう?

何も言わなくなった僕に、勝機でも感じたのか、目の前のコイツはすっかり余裕の表情だ。

馬鹿な奴。

コイツは気づいちゃいない。

くさポケモンの意地って奴を、おまえに見せてやる!

そうだ、あの技をやってやろう。

やどりぎの意識を感じる。

絶対できる!

タッくんはにやりと笑みを浮かべた。

『どうした?諦めたか?』

『…生憎、諦めが悪いんでね!』

やどりぎに意識を送る!

―― スイアゲロ!

ぐんっと、タネが大きく脈を打ったかのように、揺れたのを感じた。

『!?』

レパルダスの表情がひきつった!

勢いの消えていたやどりぎのツルが、急激に成長し始める!

伸びたツルは、四肢にからまり、首に巻き付いて締め上げた!

『うぐっ!』

とたんに、のしかかっていた重い腕の力が弱まる。

体に満ちてくる力を感じながら、タッくんは勢いよく体を抜け出した!

『くっそ!』

逃げ出すタッくんを切り裂こうとしたが、ツルに絡まり自由に動かない。

交互に絡まったツルは、勢いが絶えず、レパルダスの体をぐるぐる巻きにして、横に倒してしまった。

なんとか動こうともがいているが、もう遅い。

タネは急激に養分を吸い取り、相手の体力をじわじわとタッくんへと送り続ける。

メガドレイン。

こんな使い方をしたことはなかったけれど、上手くいったみたいだった。

ツルが絡んだ相手は、くやしそうにグルグルと喉を鳴らして威嚇しながら横たわっている。

その間にも、力はどんどんタネを伝って奪われていく。

どうやら、体力が落ちたせいか、姿を保持できなくなったらしい。

レパルダスの姿はぐにゃぐにゃとかすみ、鋭い青い眼光はそのままに、真っ黒い毛並みの小さなポケモンが姿を現していた。

やっぱり見たことがある奴だった。

あのムカツク口調から、途中で気づいた。

Nとかいう、あの変な男のゾロア。

なんでこんなところで、ボス気取りをしていたのかは知らないが、どうでもいい。

さっさと終わらせて、トウコを探す。

『形勢逆転だな。降参って言えば、最後のとどめはやめてやるよ』

『誰がするか!』

『じゃあ、仕方ないな。おまえを倒して、他の奴に道を聞くことにする!』

タッくんは力を込めた。

一気にたたみかけてやる!

ぶわっと尾から抜け落ちた葉が、風に乗ってくるくると回り出した。

『グラス…!』

「ちょっと待った!!」

『!?』

人の声!?

驚いて、勢いに乗っていた風が止んでしまった。

ぱらぱらと落ち始めた緑の葉に、真っ赤な炎が吹きかけられたのは、一瞬のことだった!

反射的に避けたおかげで、どうにか当たらずにすんだが、ほとんどぎりぎり!

燃えた葉の焦げ臭いにおいが、辺りを包み込んだ。

『誰だ?横からこんな物騒な攻撃してくるのは!』

炎が立ち上った方を睨み付けると、小さなダルマッカがひきつった表情で、人影に隠れた。

ポケモン以外、いないと思っていたのに、いつの間にかそいつは僕の前に立っていた。

人の気配なんてなかったはずなのに。

若草色の髪をした、いけ好かない青年は、タッくんがいるのも無視して、ゾロア駆け寄るなり、話しかけた。

「探したよ。こんなところで何、無茶をしているんだい?」

『別にどうだっていいだろう。ここのボスがいなくなったらしいから、代わりをやっていたんだ。そしたらあんなのが来たから、追っ払ってやろうと思ったのさ』

「だからって、こんなになるまで戦わなくてもいいだろう?」

『だって…俺、あいつ、嫌いだし…』

そうか、僕も大嫌いだ。

そう言ってやりたかったけれど、さすがに大人げないと思ったから、直接口に出すのはやめておいた。

Nは、小さくため息をついて、ゾロアに巻き付いたやどりぎのツルを、ブチブチと指でちぎった。

それでもしつこく生えてくるやどりぎに困ったのか、タッくんを見る。

「これ、解いてやってくれないか?」

相変わらず、まっすぐなくせに影のある目をしていた。

変な奴。

どうみてもトウコより年上。頭も良さそうだし、何考えているかわかんない。