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アズール湊
アズール湊
novelistID. 39418
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黒と白の狭間でみつけたもの (13)

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小ずるいことでも容易に考えていそうなのに、それがないというか…。

この男は、妙に素直でやりにくい。

『ああいいよ。でも、もういきなり炎で攻撃とかはやめてくれよな』

タッくんはそう言って、やどりぎのタネに意識を移した。

ゾロアにまきついていた、ツルの勢いが消える。

力が弱まり、タッくんの意思通り、やどりぎの活動は停止して、緑のツルたちは、茶色く変色して枯れていった。

Nは、枯れて弱くなったやどりぎのツルをちぎり、その中からゾロアを掻き出すようにして、救い上げると、傷ついた体を労るように腕に抱いた。

ゾロアは傷つきながらも、負けたことが気にくらないのか、タッくんのことを睨み付けるようにじっとみている。

「ありがとう。ボクのゾロアが悪かったね」

Nはにっこりと微笑んだ。

『もういいよ』

なんだかこっちが照れくさくなって、タッくんはそっぽを向いた。

こういうところが、ほんとにやりにくい…。

「君は、確かトウコのポケモンだったね。近くにいないようだけれど、この辺りに彼女も来ているのかい?」

『違うよ。きっとこいつ、はぐれたんだ。しつこく道を聞いてきたからな』

ゾロアがわざとらしく、口調を強めて言った。

やっぱり、こいつのこと、助けなきゃ良かったかな。

「はぐれたのか?」

『おおかた人混みの中で、むやみに外に出ていたんだろうさ。こんな大都会。慣れていなかったらはぐれることくらいわかるのにさ』

『ああ、その通りだよ!』

イライラとタッくんは言った。

得意顔のゾロアに腹が立つ。負けた腹いせにからかうつもりらしい。ほんとに嫌な奴だ!

ぎりぎりと睨み合う2匹を見て、Nは大きなため息をついた。

「もうバトルは終わったんだ。やめてくれ! 君も、喧嘩してる場合じゃないんだろう?トウコだって探しているはずだ。これからどこへ向かうつもりだい?」

『公園だよ。メインストリートはすべて公園に繋がっているって、トウコが言ってた。そこで待っていれば、むやみにトウコを探すより、出会う率が高いと思ったんだ』

「なるほどね、確かに効率はよさそうだ。あそこの公園なら噴水もあるし、待ち合わせるのにもちょうどいい。ここから程近いし、送ってあげよう」

そう言って、Nはガラクタの山を器用に降り始めた。

タッくんもそれを追いかける。

なんだよ、ゾロアよりもずっと、コッチの方が話がわかるじゃないか。

それにしても、こんな不安定な場所、よく人が降りられるな。

軟弱に見えたけれど、意外と運動神経もいいし、さっきの攻撃といい、トレーナーとしての素質もありそうだ。

変なやつだと思っていたけれど、意外とまともなのか?

ガラクタ山のふもとまで降りると、Nのまわりには不思議なことに、先程まで隠れていたここに住むポケモン達が駆け寄ってきた。

『N、また遊びに来たの?』

『ボスは大丈夫?』

『ねぇ、一緒に遊ぼうよ』

わっと賑やかな声が上がった。

あっという間に、Nのまわりはポケモンだらけだ。

なんだか知らないが、Nはここでポケモン達に好かれているようだ。

あまりに自然すぎて、うっかり忘れそうになるが、コイツは僕らの声がわかる珍しい質をもった人間だったっけ。

こうやって囲まれると、よけいに異質にみえるものだな。

「ごめん、今日は遊べないんだ」

『どうして?』

『あいつがボスを倒したから?』

『でも、あのポケモン、別に悪い奴じゃないと思うよ』

「そうだね。あのこは、ボクの大切なトモダチのポケモン。迷子のようだから、助けてあげたいんだ」

Nがそう言うと、周囲のポケモン達が一斉にタッくんのことをじっと見つめた。

一瞬、いきなり襲ってくるんじゃないかとひやひやしたが、どうもそういうつもりじゃあないらしい。

『なんだ、新入りじゃないんだ。つまらない』

『そういうなよ、助けてやろうぜ』

『そうね、Nの友達なら。N、私たちに手伝えることはない?』

そう言ったのは、よくみると先程、ゾロアのところまで案内してくれたミーナだった。

タッくんの視線気づいたのか、クスリと笑っていた。

「ありがとう。なら、手伝ってくれるかい? トウコという女の子を捜したいんだ」

Nがトウコの特徴を、口頭で説明する。

結構、細かい説明なのに意外とわかりやすくて驚いた。

話し終えると、ポケモン達は言った。

『わかった。見つけたら、公園に連れて行けばいいんだな』

『それで、トウコって子を見つけたらどうすればいい? その子はNみたいに話せないんでしょ?』

「ああ、トウコはボクみたいにしゃべれないよ。でも、大丈夫さ」

ん? 大丈夫だって?

タッくんが違和感を感じたまま、Nは早口にしゃべりだす。

「トウコはしゃべれないけれど、確か直に体に触れることが出来れば、少しは心が伝わるはずだから……」

『ちょ、ちょっと待った!』

Nの言葉を止めたのは、タッくんだ。

こいつめ、放っておけばべらべらと…。

『おまえ、トウコがそのことにあまり触れられたくないことは、知っているだろ? まさか、ポケモン達に探させる方法って、トウコらしい人物に抱きつきでもして、感情なり言葉なりを伝えるつもりなのか?』

「それが一番、効率がいいじゃないか」

Nは何を、そんなに気にしてるんだとばかりの表情で、そう言い切った。

やっぱり、こいつは油断ならない……。

『たのむから、それはよしてくれ。 言葉の説明だけじゃ、絶対イメージがみんな違うから、何人もトウコじゃないやつにも飛びかかるぞ!その場合の、街の混乱も考えてくれよ!』

そんなことしたら、下手をするとトウコの力まで、街の連中にばれるかも知れない。

好奇の目にさらされて悲しむのはトウコだ。

この男は、自分もそういう目で見られてるっていうのに、そのことに全くもって鈍感だ。

「……確かにそれは面倒だね」

難しそうな顔をして考え始めたNをみて、腕の中のゾロアがもぞもぞと動いた。

『N、アレを使えばいい。トウコにもらったアレ、みんなに分けてやればいい』

Nの腕の中にいるゾロアが声を上げた。

「いいのかい?」

『いいよ。トウコを捜すためだろう。無くなっても仕方ないさ。アレにはまだトウコの香りが少し残ってた。匂いを覚えればトウコを捜すのだって楽になる』

ゾロアはそう言った。

アレが何かはわからないが、トウコの匂いがついたものがあるなら、捜索も確実だ。

ポケモンは人間よりずっと嗅覚がいい。

匂いがわかっていれば、確かめられる。

さっきNが言った情報と共に捜せば見つかるだろう。あいつもたまにはいいことを思いつくじゃないか。

タッくんが感心しながら、ゾロアを見たときだった。ゾロアは目があうなり、睨みをきかせてきた。

『おまえの為じゃないからな。トウコのためだぞ!』

ふんっと、不機嫌そうにそっぽを向くゾロア。

ああ、そうかい、そうかい…。何もそんなに恨みがましく見てくることはないだろうに、何をあんなに怒っているんだ、あいつは。

呆れながら、タッくんは思った。

だいたい、アレってなんだ?

トウコがあいつにあげたものなんてあっただろうか。