遊戯王異聞録-DUEL SURVIVOR-
序章-かくして、運命は牙を剝く・2
「そういえば、もうすぐお前の誕生日だな」
昌樹の部屋の真ん中に置き去りにされている万年コタツの対面に座る昌樹は、唐突にそう切り出した。
「そうだけど…?」
何を今更、という様子で晶は兄に言う。
「良き兄としては、可愛い弟のためにプレゼントのひとつでもあげよう、と思ってな」
「…明日はきっと雨だな」
晶は座ったまま、窓の外に視線を移して言う。確かに少し雲行きが怪しい。
「おいおい、それでは俺がまるでけちんぼの様ではないか」
昌樹は苦笑して言う。
別に晶は彼をケチだとは思っていないが、積極的にプレゼントをくれる程気前がいいとも思っていない。
「新型のデュエルディスクがそろそろ完成するので、試作品を1つ貰って来てやろうと思っていたのだが?」
「あれの開発に携わっていたのか、兄貴?」
晶は少し驚いた表情で言う。
昌樹が電子工学の分野で博士号を習得している事は知っていたが、ディスクの開発までやっているとは知らなかった。
「欲しいだろう?」
「もちろん!欲しい欲しい!!」
ニマニマしながら問う昌樹に、晶は顔を突き出して言う。
「だが、そう物欲しそうにされると意地悪をしたくなるな」
「おい、良き兄じゃないのかよ!?」
「たまには悪い兄がしたくなるのだ」
というわけで、と昌樹はコタツの傍らに置いていた自身のデッキケースからデッキを取りだし、シャッフルを始めた。
「お前が決闘で勝てたら、素直にディスクはくれてやろう」
「…面白いじゃないか」
晶は軽く口元に笑みを浮かべる。
そして、彼もまたデッキケースからデッキを取り出し、シャッフルを始める。
「いいだろう、勝負だ」
「ふふ、そうこなくては晶ではないな」
そして、その十数分後…
「グラファ2体でダイレクトアタック。リアクションは?」
「…ない」
「なら、俺の勝ちだな」
結果は昌樹の勝利。
途中まで晶が優勢だったが、読みを外して流れを掴まれ、その後、一気にゲームエンドまで持っていかれてしまったのだ。
「しかし、なかなかいいデッキだな。楽しませてもらったぞ」
「…それはよかったな」
くくく、と笑う昌樹に対し、晶の表情は実に苦々しいものであった。
「まあ、楽しかったし、ディスクはくれてやろう」
「本当か!?」
表情を驚きと喜びの混じったものへと一変させ、晶は昌樹の方へ身を乗り出す。
「ああ、もちろんだとも」
昌樹はそう言って頷き、
「ただ、素直にというわけではないがな」
そう付け加えた。
作品名:遊戯王異聞録-DUEL SURVIVOR- 作家名:六堂 修羅