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六堂 修羅
六堂 修羅
novelistID. 40974
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遊戯王異聞録-DUEL SURVIVOR-

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序章-かくして、運命は牙を剝く・4


「ねぇねぇ、晶は私の制服姿を見てどう思う?」

 人気のない列車の中、隣に座る神奈が両手を軽く広げ、その身体を見せるようにしながら晶に言う。

「似合うと思うけど…なんだよ、急に」

 神奈は晶の目から見ても美人な方であり、制服に限らず大抵の服は似合う。
 だが、急にそんな事を聞いてくる意図が分からない。

「昌樹さん、セーラー服とか好きかな、って思ってさ」
 
「興味ないんじゃないか?」
 
 昌樹は学生時代には女子からそこそこモテていたらしいが、女の子に興味なかったらしく誰かと付き合っていたという話は聞かない。
 そんな昌樹が服装について気にするとは思えない。
 
「兄貴が興味あるのはこっちだろうな」
 
 晶はそう言ってリュックの中からデュエルディスクを取り出す。

「それって、昌樹さんから貰ったカードゲーム用のゲーム機?」
 
 神奈が晶の手の中にある細長いノートPCのような機械に目を向ける。
 
「ああ、デュエルディスクって言うんだ」
 
 そう言って、晶もまたディスクに目を落とす。
 デュエルディスクはDM用に作られた次世代型ゲーム機である。
 アニメや漫画に描かれていたフォルムを再現したそれは、自動でカードの処理をこなすほか無線LANによる対戦や通信、またインターネットを通じたカードのトレードや通信対戦にも対応している。
 
「じゃあ、これにカード挿したら漫画みたいにモンスターとかがぽーんって現れたりするの?」
 
「そういう機能はあるんだけどな…」
 
 普通ディスクには原作のカードエフェクトを再現するために専用のバイザー型ディスプレイがついており、それを介することでモンスターや魔法カード等のエフェクトを見ることができるようになる。
 
 だが…
 
「バイザーがないんだよな、これ」
 
 晶のディスクにはバイザーがついていない。
 恐らく、ディスクを使わせないよう昌樹が手元に留めているのであろう。
 プロテクトをかけるだけで充分だろうに、念の入った事をする、と晶は心の中でぼやく。
 
「そう言えば、ツヴァイ君もやってたんだよね、そのカードゲーム」
 
「ああ、そうだな」
 
 晶の言葉に、神奈はもう一人の幼馴染の事を思い出す。

 ツヴァイは日本生まれのドイツ人だ。
 神奈と同じく、晶とは兄弟のように育った仲だった。

「…ツヴァイ君、どうしてるかな?」

 背後にある窓の奥にある、蒼い空を眺めながら神奈は呟く様に言う。
 恐らく、ツヴァイと別れた日の事を思い出しているのだろう。

 小学校を卒業し、中学校への入学を控えた春の事だった。
 ツヴァイの両親が突然亡くなったのだ。
 原因は爆弾テロだった。
 当時は相当世の中を騒がせたニュースだったが、詳しい内容は晶も神奈もほとんど覚えていない。
 覚えているのは、悲しみのあまり涙すら流せなかったツヴァイの横顔だけだった。

 晶はデッキケースの中から一枚のカードを取り出す。
 カードの名はE-HERO ダークガイア。
 岩石の鎧に身を固めた悪魔の姿が描かれたそれは、晶が初めて手にしたDMのカードで、ツヴァイとの再会の約束の証だった。

『またいつか会う日まで、そのカードをお前に貸してやる』
 
 ドイツの親戚の家に引き取られていくツヴァイは、晶にそう言ってカードを手渡した。
 以来、このカードは晶の相棒となり幾多の決闘で勝利と敗北を分かち合ってきた。

「それ、ツヴァイ君がくれたカード?」

 神奈が晶の手の中のカードを覗き込んでくる。
 
「ああ」
 
 そんな神奈に、晶はカードを手渡してやる。
 
「へぇ…」
 
 神奈はそれを目の高さにまで持ち上げ、たまに角度を変えながらしばらく眺めていた。
 
「結構かっこいいかも」
 
 そして、実は特撮ヒーローなどが好きな神奈らしい感想と共に、カードを晶に手渡してきた。
 
「…私もやろうかな、それ」
 
 呟く様に神奈が言う。
 
「ツヴァイ君が帰って来た時に、私だけ仲間外れっていうのは寂しいしね」
 
「じゃあ、今度あまりのカードで何かデッキ作ってやるよ」
 
 晶がかすかに弾んだ声で言う。
 神奈は晶にとって最も近しい存在だ。それが趣味を共有してくれるのはやはり嬉しい。
 
「うん。カードの使い方とかも教えてね、晶先生」
 
 微笑みながら神奈がおどけた調子で言う。
 
 くりかえされる日常。
 何気ない幼馴染みとの会話。
 それらは、晶も神奈もただ続いていくものだと信じていた。いや、意識すらしていなかった。

 だが、運命という名の猛獣は、すぐそこに迫っていた。