世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Bパート 2/2】 ---------------------------
マンションの前で小野寺を見つけた
丁度エントランスへ入るところだった
俺は走って追いつき、閉まりかけのエレベータを無理やり開かせた
「お・・お疲れ様です・・今帰りですか?」
「おう。お疲れ」
久しぶりに聞いた小野寺の声
以前より疲れが取れているように伺える
仕事は順調なのか?体調はどうだ?今日もコンビニ弁当なのか?
色々聞きたいことがあったが、口に出せなかった
だってそうだろ?お前、何隠してるんだ?
俺に気付かれないとでも思ってるのか?
今すぐ抱きしめたい、そのぬくもりを確かめたい・・・でも・・
お前は俺のことをどう思ってるんだ?
12階に着き、小野寺は「失礼します」と言って一目散に部屋に入ろうとした
正直、イライラした・・・もう限界
気付いたときには、アイツの部屋のドアを叩いて、口に出していた
「お前さ。俺に何か言う事ないの?」
冷静に、怒りで震える声を押さえて、静かに告げる
小野寺は突然の大きな音に驚いたのかビクッとして何も話さない
「話しがある」
もう辞めた。待たない。俺から聞き出す
小野寺の腕を引っ張って自分の部屋の中に引き込んだ
*
「そんなところで突っ立ってないで入れば?」
玄関から動こうとはしない小野寺に、顎で「入れ」と促す
小野寺をソファーに座らせ、コーヒーを渡す
アイツはカップを見つめたまま、何も話さない
まぁー俺が「話しがある」と云って引き込んだ手前、”俺待ち”ってところだろう
「あのさ、お前何やってんの?」
「え?」
「だから、何コソコソやってんだって言ってんの」
「べっ別に・・何もしてませんよ」
バレバレなんだよ!何で話さないんだよ!
俺はお前の全てを受け入れたいと思っているのに、お前は違うのか?
なんで隠すんだ?
俺は吸っていた煙草を消した後、思いっきり床を足で叩いた
小野寺は驚き、ゆっくりと俺の顔を見た
「隠してるつもりなのか?」
「・・・・・」
「俺に話せないことなのか?」
「ぷ・・プライベートなことですので・・・上司に話すことではありません」
「俺は上司ってだけ?」
お願いだ・・律・・俺をこれ以上不安にさせないでくれ!
だけど、アイツは顔を下に向け何も答えない
「お前さ、10年前本当に俺の事好きだったの?」
あの時、お前俺に云ったよな?
『何でも俺話し聞きますから、話して下さい』
『話して解決すると思ってんの?』
『解決はしないかもしれませんが、吐き出した分だけ体からモヤモヤが出ると思うんです!』
『は?』
『それで少しでも先輩の気持ちが軽くなればとか思って・・・』
俺だって、お前が少しでも気持が軽くなるなら、いくらでも聞いてやる
だからお前から話してほしいと思った
「今更・・何を・・・」
『先輩が・・・好きなんです・・・』
頭の中で繰り返し囁かれる言葉
織田律だったころのアイツの台詞
お前は昔の俺--嵯峨政宗が好きで、高野政宗のことをどう思ってるんだ?
俺は、織田律も好きだったが、今の小野寺律が好きなんだ
でも・・・お前は違うのか?
「お前の事、分かんなくなった」
「・・・どういう・・意味ですか?」
「自分で考えて」
答えを俺に求めるんじゃなくて、お前自身で考えて。
簡単なことだろ?素直になればいいんだよ
俺を受け入れて、お前の全てを俺に預けて欲しい
例え、俺とお前以外が全員敵でも構わない
絶対、俺が守ってやる
だから・・・隠さず話してくれ。些細なことでも、お前のことならなんでも知りたいんだ
答えを待っていると、小野寺はソファーから立ちあがり、「お邪魔しました」と
言って、部屋を出て行ってしまった
掴み損ねた腕は空振りに終わり、俺は茫然とリビングの扉を見つめていた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico