世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Cパート 1/5】 -------------------------
部屋に戻り、リビングの明かりを付ければテーブルの上に夕食が置かれていた
「安岡さん、今日も来てたんだ」
洗濯物は畳まれ、夕飯はラップがされており、そのまま温めれば食べれる状態になっている
部屋に戻るまで平気だった涙腺は崩壊し、意識せずともポロポロと涙が流れる
止めようと思っても止まらない・・
「俺・・何してんのかな・・・」
高野さんの傍に居たくて、それでも後一歩踏み出せなかったのは、全部周りのせいにしてきたけど
本当はたった一言「好き」って言葉を、勇気を持って伝えれば良いだけのことなのに・・
掴み取ろうとした俺の未来は、呆気なく零れ落ちてしまった
「・・高野さん、すごく哀しい顔をしてたな・・・」
結局俺は、昔も今も変わらず、高野さんを傷つけ悲しませている
横澤さんの云った通りだ・・・・
『政宗の目の前をウロチョロするなと言ったはずだ』
『これ以上、あいつを振りまわすな迷惑だ』
このまま近くにいたら、もっと高野さんを傷つけるかもしれない
俺が曖昧な態度だから・・・・
「距離・・・を・・置こう・・・」
この状況を打破する為には・・・隣人という関係を清算した方が手っ取り早いかな
俺は携帯で夕飯のお礼と共に、「お願い」を聞いてもらうよう、安岡さんに連絡した
*
電話して1時間も経たない内に、安岡さんは俺の部屋に来ていた
電話した際の俺の声に心配し、駆け付けたとのことだ
みっともない・・・25歳過ぎの男が泣きながら電話してきたら、普通は引くだろう・・
嗚咽の止まらない俺の背中を、ゆっくりと擦りながら何も言わずただ傍に居てくれた
たったそれだけのことなのに、今はとても嬉しい
少し落ち着いてきた頃、安岡さんは「新居の件ですが」と話しかけてきた
「よろしいのですか?」
俺はコクリと頷き、まだ顔を上げることが出来ない
「それでは早急に手配致します。場所等の希望はございますか?」
「・・どこでも・・いい」
かしこまりました。スクッと立ちあがり、コーヒーの準備をし始めた
香りの良いコーヒーにミルクを入れて、「落ち着きますよ」と優しく声を掛けてきた
俺はマグカップを受け取り、少しずつ口に含む
ミルクの甘さが広がり、ほっと一息いれることが出来た
俺は安岡さんにお礼を言って、また一口飲む
安岡さんは何も聞いてこない
多分、気付いてるから聞いてこない
ぼぉーとしてると、「律様」と安岡さんが声を掛けてきた
「何?」
「これからどうしますか?」
「どう・・って・・何が?」
「・・・小野寺へお戻りになりますか?」
「ううん。俺はまだ父さんとの約束があるから戻らない」
安岡さんの目を見て俺はハッキリとした口調で答えた
「意思は強いのですね。」
「うん。迷惑かけてごめんね」
安岡さんは頭を左右に振り「気になさらないで下さい」と答え、結局俺が寝付くまでずっと傍にいてくれた
*
寝ている間に安岡さんがタオルで目を冷やしてくれたおかげで、
瞼は腫れておらず、これなら出社しても問題ない!という状態だった
昨日食べなかった夕食を温め直して朝食代わりにし、
安岡さんは「お気をつけて行ってらっしゃいませ」と玄関まで見送ってくれた
一晩泣いたら以外とスッキリした
安岡さんが居てくれたからかな?
やっぱり兄貴がいれば、こんな感じなのかもしれない
俺はダメな弟だけど・・・
今日も一日頑張ろう!と気合を入れて職場に向かう
大丈夫、普段通りにしていれば問題ない
ところで俺のコンビニ弁当は何処?
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico