世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Cパート 5/5】 ---------------------------
いつの間にか寝ていたようだ
と言うより、突然の出来事?で気を失ったのかもしれない
「何か御飲み物でもお持ち致しましょうか?」
俺はミネラルウォーターを頼み、ベットから起き上がった
鞄から携帯を取り出すと、チカチカとランプが点灯していた
開くとメールが一通。高野さんからだった
『どこにいる?』
受信時間を確認すると、深夜2時のメールで、今はお昼前
今日、明日は休みで、正直昨日の件もあるから今は接触したくない
でも・・確か昨日帰る時、高野さんが何か言いかけた様な気がしたんだけど・・・
急な用件なら留守番なりにメッセージを残すだろう
俺は携帯をベットサイドに置き、リビングへと向かった
*
昨日聞いた内容が頭の中でグルグルと廻っていた
俺は何のために頑張ってきたんだろう・・・
どうして今俺は独りなんだっけ?
なんで隣に高野さんが居ないんだろう・・・
あー全部俺のせいだ
父の話しを鵜のみにした時点で、俺は既に・・・失ってたんだ
時計を確認すると、既に18時を過ぎていた
安岡さんは丁寧に明日までの食事を用意して、昼過ぎに帰った
窓を開け、ベランダに出ると既に外は暗く、若干肌寒い
空を見上げ、ほぉーとひと息つく
固まっていた身体を解す様に延びをした後、両頬をパンッと叩く
ウダウダ考えても仕方が無い
手っ取り早く父に問い正せばいい
文句なら沢山ある。約束を反故するなんて許せない
大体・・・俺自身が許せないんだから
明日は一日ご近所散策するかな
天気だといいなぁーと呑気に考えながら、ベランダを後にした
*
ここ数カ月。自分を叱咤激励しながら二足の草鞋を必死に遂行し
余裕のある時間なんて限りなく少なくて
それでも俺は”やる”と言ったことは何としてでも遣り遂げたくて
終わりの見えないトンネルの中で、ひとつの希望の光も見失って
出口が見えなくて、不安で、足が竦む思いもしたけど、それでも俺は諦められなくて
この青い空を自由に飛べる鳥達が羨ましく思う
俺も飛べたらいいのに・・・自由になる為にはどうすればいい?
乙女思考MAXで歩いていると、公園に着いた
子供達が追いかけっこをしている
元気だなぁーなんて見ていると、見知った人物を捕らえた
高野さんだ・・・でも一人じゃない
この間、車の中で見かけた女性と一緒に、腕を組んで歩いている
俺は思わず気付かれないように物陰に隠れ、二人の様子を伺う
何から女性がハニカミながら高野さんに手渡した
小さな箱
高野さんは嬉しそうに受け取り、優しい顔で何かを言っている
女性も喜んだみたいだ
俺・・・何してんだろう?
高野さんの家庭事情は知っている
きっと暖かい家庭を築きたいと思っているに違いない
結婚して、子供を授かって、家族を作って・・・
俺が高野さんに逢わなければ、10年前に高野さんに告白しなければ・・・
元々高野さんはノーマルな人だ。
同性愛者ではない
俺のせい?俺が高野さんを狂わせた?
昔横澤さんに言われた言葉が胸を刺す
『お前のせいで政宗がおかしくなった事知ってるのか!』
あぁ・・そうだよ
俺のせいかも
今になってそう思っても遅いのかな・・・
見上げた空は少しオレンジがかっていて、俺の心に沁み込んでくる
もう・・潮時かな・・なんか急に疲れちゃったかも・・
静かに振り返ると、もう高野さん達はいない
俺もそっと公園を後にして、新しい家に向かって歩いた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico