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世界一初恋 高x律 葛藤

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【SIDE 高野 Cパート 1/2】 ---------------------------

小野寺が俺の制止を無視して部屋から出て行った次の日
社内の廊下でアイツを見かけた

いつもなら良い争いをした次の日には、アイツは目を赤くし腫れているハズなのに
昨日と変わらず・・いや寧ろ昨日よりスッキリしている表情だった

その表情を見た時に感じたんだ・・・
高校生の頃、織田律が俺の前から消えた時と同じ感覚を思い出した

実際は”今ここに居る”が近くて遠い俺の手が届かないところに小野寺がいる気がした

こんなにも好きなのに、愛しているのに、どうしてお前は俺を見てくれないんだ?



それからというもの、焦燥感を埋めるために、仕事帰りは深夜まで呑み歩いた
大学生の頃のように荒れるような呑み方はしないし、女を抱く気も無い

ただ、小野寺と逢うのが怖かっただけかもしれない
アイツの口から拒絶の台詞を聞きたくなかったから、俺は逃げるように距離をとった

そんな俺を気遣い、横澤が「久しぶりに呑みに行こう」と誘ってくれた
大学時代に荒れていた俺を立ち直らせてくれたのは横澤だった

小野寺とのことも知っている横澤は、初めこそは小野寺に食って掛っていたが
いまでは棘が無くなり、丸くなったと思う
きっと横澤には気を許せる人が出来たのだろう

だからついつい甘えてしまう
ポツリポツリと酔った勢いで今までの経緯を話すと、横澤は「ハァーー政宗」と俺の肩を叩いた

「俺は小野寺じゃないからわらないが、
 アイツがお前に黙ってるということは、
 野っぴきならぬ事情ってやつなんじゃないのか?」

「そんなことは気付いてる。でも俺はアイツの全てを知りたいんだ」

「・・・政宗、何を焦ってるんだ?」

「別に・・・俺は焦ってなんていない」

「このままだと、また・・・失うぞ」

横澤の一言が胸に刺さる
『失う』・・・この言葉は俺の全神経を逆流させる
手が震える、鼓動が速くなる、頭がクラクラする・・・気を失いそうだ

「不安なら、直接本人に聞いてみろ」

俺は・・・小野寺が「好き」と云うまで待つつもりはある
でも、お互いを繋げる確たる証が欲しかった
俺が一歩近づけば、小野寺は一歩引く
この微妙な距離感を埋めるにはどうしたらいい?



俺の担当作家、一之瀬エリカは優良作家だ
締め切りは守るし、人気も高い
そんな彼女は、マンガだけでなく以外なところにも人脈があった

紹介されたのは、アクセサリーデザイナーの卵--林由紀子
現在アトリエを持っていて、主に彼女のパーティーで身につけるアクセサリを担当している

自惚れではないが、俺はエリカ様に気に入られている為、このチャンスを見逃すことはない
是非、ペアリングの制作をお願いしたいと掛け合った

林さんは条件として、俺と二人でデートがしたいと言いだした
別にイヤらしい意味でのデートではなく、普段から引きこもりがちな為、一度彼氏と彼女が行くような
デートをしてみたいと頼んできた

俺は「そういうことなら良いですよ。」と答え、仕事帰りにホテルのラウンジやバーで待ち合わせをした
彼女はペアリングを送る相手の特徴や性格、俺がどのぐらい大切にしているのかを聞いてきた
リングのイメージを創りたい為、情報が欲しいと言われた

小野寺との出会い、別れ、そして再会、今アイツに思うこと、したいこと、してあげたいこと
林さんは俺の話しを聞きながらクスクスと笑い「本当に愛してるんですね」とつぶやいた

あぁ、そうだ。俺は小野寺を愛している
もう離さない、離れないって決めたんだ
アイツが逃げても俺が追いかけてやる
絶対離さない、覚悟しておけよ

作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico