世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Cパート 1/2】 ---------------------------
小野寺が俺の制止を無視して部屋から出て行った次の日
社内の廊下でアイツを見かけた
いつもなら良い争いをした次の日には、アイツは目を赤くし腫れているハズなのに
昨日と変わらず・・いや寧ろ昨日よりスッキリしている表情だった
その表情を見た時に感じたんだ・・・
高校生の頃、織田律が俺の前から消えた時と同じ感覚を思い出した
実際は”今ここに居る”が近くて遠い俺の手が届かないところに小野寺がいる気がした
こんなにも好きなのに、愛しているのに、どうしてお前は俺を見てくれないんだ?
*
それからというもの、焦燥感を埋めるために、仕事帰りは深夜まで呑み歩いた
大学生の頃のように荒れるような呑み方はしないし、女を抱く気も無い
ただ、小野寺と逢うのが怖かっただけかもしれない
アイツの口から拒絶の台詞を聞きたくなかったから、俺は逃げるように距離をとった
そんな俺を気遣い、横澤が「久しぶりに呑みに行こう」と誘ってくれた
大学時代に荒れていた俺を立ち直らせてくれたのは横澤だった
小野寺とのことも知っている横澤は、初めこそは小野寺に食って掛っていたが
いまでは棘が無くなり、丸くなったと思う
きっと横澤には気を許せる人が出来たのだろう
だからついつい甘えてしまう
ポツリポツリと酔った勢いで今までの経緯を話すと、横澤は「ハァーー政宗」と俺の肩を叩いた
「俺は小野寺じゃないからわらないが、
アイツがお前に黙ってるということは、
野っぴきならぬ事情ってやつなんじゃないのか?」
「そんなことは気付いてる。でも俺はアイツの全てを知りたいんだ」
「・・・政宗、何を焦ってるんだ?」
「別に・・・俺は焦ってなんていない」
「このままだと、また・・・失うぞ」
横澤の一言が胸に刺さる
『失う』・・・この言葉は俺の全神経を逆流させる
手が震える、鼓動が速くなる、頭がクラクラする・・・気を失いそうだ
「不安なら、直接本人に聞いてみろ」
俺は・・・小野寺が「好き」と云うまで待つつもりはある
でも、お互いを繋げる確たる証が欲しかった
俺が一歩近づけば、小野寺は一歩引く
この微妙な距離感を埋めるにはどうしたらいい?
*
俺の担当作家、一之瀬エリカは優良作家だ
締め切りは守るし、人気も高い
そんな彼女は、マンガだけでなく以外なところにも人脈があった
紹介されたのは、アクセサリーデザイナーの卵--林由紀子
現在アトリエを持っていて、主に彼女のパーティーで身につけるアクセサリを担当している
自惚れではないが、俺はエリカ様に気に入られている為、このチャンスを見逃すことはない
是非、ペアリングの制作をお願いしたいと掛け合った
林さんは条件として、俺と二人でデートがしたいと言いだした
別にイヤらしい意味でのデートではなく、普段から引きこもりがちな為、一度彼氏と彼女が行くような
デートをしてみたいと頼んできた
俺は「そういうことなら良いですよ。」と答え、仕事帰りにホテルのラウンジやバーで待ち合わせをした
彼女はペアリングを送る相手の特徴や性格、俺がどのぐらい大切にしているのかを聞いてきた
リングのイメージを創りたい為、情報が欲しいと言われた
小野寺との出会い、別れ、そして再会、今アイツに思うこと、したいこと、してあげたいこと
林さんは俺の話しを聞きながらクスクスと笑い「本当に愛してるんですね」とつぶやいた
あぁ、そうだ。俺は小野寺を愛している
もう離さない、離れないって決めたんだ
アイツが逃げても俺が追いかけてやる
絶対離さない、覚悟しておけよ
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico