世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Cパート 2/2】 ---------------------------
小野寺と接触しなくなって一カ月が経とうとしていた
エメ編も修羅場と化していた為、すっかり忘れていたが、
そろそろ小野寺は文芸部から戻ってくるハズじゃなかったか?
昨夜林さんから電話があり、ペアリングが出来たとの連絡を受けた
以前、サンプルを見せてもらったが、とても質が良く普段身につけていても違和感がない素材だった
俺は校了明けに受け取る旨を伝えた
無事、入稿し校了となった当日
印刷所から戻ったついでに、ロビーでたばこを吸っていた
今、俺の頭の中にあるのは「どうやって小野寺に指輪を渡すか」だけだった
ふぅーと煙を吐き出していると、横澤が喫煙室に入ってきた
「よう政宗。今回はデット入稿が無かったんだってな」
「ああ。いつもこの調子なら楽なんだけどな」
他愛も無い話しをしながら、もう一本煙草に火を付ける
「ところで・・政宗。アイツとはどうなったんだ?」
「まだ話してない。
でも、捕まえて無理やりにでも吐かせることにした」
「はっ!なんだそれ?」
「いいんだよ。これが俺のやり方なんだ。
すまんな。迷惑かけて」
「謝るなよ・・気持ち悪い・・・」
ケラケラと笑っていると「お先に失礼します」と控えめな声が聞こえ、声の主を見ると小野寺だった
俺は呼び止め、明後日話しがしたいことを告げようとしたら、「律様」とロビー玄関から声が響き渡り
呆気に囚われているうちに、小野寺は安岡に連れ攫われてしまった・・・・
*
家に帰り、ベランダ越しに隣を伺う
部屋は暗く、人がいる気配がしない
また実家に連れて行かれたのだろうか・・・
食事をとり、風呂に入り、スッキリしたところで時間を確認する
深夜二時。
俺は携帯を開き、メールを送った 『どこにいる?』
翌日になってもメールの返信は来なかった
*
林さんとの約束通り、公園でペアリングの箱を受け取った
俺は中身を確認し、林さんに礼を言うと「私も恋したくなっちゃいました」とハニカミならが答えた
「ええ。この年で云うのもなんですが、相手は 『初恋』 なんですよ」
だから、林さんも良い人に出会えるように、なるべく外出した方がいいですよ。と余計なことまで云ってしまった
意気揚々とマンションへ戻り、小野寺の部屋のチャイムを鳴らす
まだ帰ってないのか?
仕方ない、明日文芸部へ顔を出して連れ出そう
嫌がるアイツの顔を想像しながら、クツクツと笑いが込み上げてきた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico