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世界一初恋 高x律 葛藤

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【SIDE 律 Dパート 2/2】 ---------------------------

実家に着くなり、寝室にいる父の元へ駆けつけた
「どういうこと?」
安岡さんから聞いた話しを父にすると
「もう知ったのか。早いな」と然も平然と答えた

「俺、約束したよね?!復帰するまでの間だけ補佐をするって!」
何で?と問いただすと「海外進出にはお前の力が必要だ」と冷静に返された

「はっ!息子を騙して、会社の駒にするの!」
声を荒げて言うと、「律!」と父も負けじと大きな声で俺を呼ぶ

「いい加減にしなさい!お前は一人息子なんだぞ?」

「そんなこと今更言われなくても知ってるよ!」

「知っているのなら、自分の立場を考えなさい!」
ピシャリと言い切る父の声は、もう病人ではなく、大企業のトップとしての貫録が見え隠れする

「・・・・・・」
自由になりたかった・・
全ての柵(しがらみ)を捨てて、自分の思いのまま自由に・・・
それすらも許されないのか・・・

「正式発表は、来月の会見場の席で行う」
それまでの間に身辺整理をしなさい。と突き離すような口調で告げる
もう決定事項だ!と言わんばかりの強引さだ
俺は放心状態のまま、父の寝室を出た



自室で考えた
結局何も思い通りには進まなくて
だったら最初から何も求めなければ良かったと・・・
欲張って、両方手に入れたかったのに、最終的には両方とも失った

井坂さんの様に強くはなれない
実力もなければ、運もない

いくら虚勢を張っても、弱さは隠せない
本当に疲れた・・・このままあやつり人形のように一生踊ってるのかな

一生・・・ずっと・・・俺は一人で闇の中を彷徨うのかな
出口の見えないトンネルは、気が狂いそうな程真っ暗で何も見えない



翌日、社長室へ直行し、井坂さんに父と話した内容を伝えた
今まで親身になって、色々迷惑を掛けていたんだ
身内事情だが、きちんと最後まで伝えるのは筋だと思ったからだ

本来であれば、辞表は上司である高野さんに提出するのだが、
井坂さんが「俺が預かる」と言って、内ポケットの中にしまった

エメ編への挨拶も、急なことだから井坂さんから伝えると言われ
結局俺は何もしないまま、丸川書店を後にした

呆気ないものだと思う
外に出た俺は、空を見上げた

しがみ付いていた上司と部下という関係すらも、手放してしまった
今の俺の気持ちと裏腹に、青く澄んだ空はどこまでも続いていた

作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico