世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Dパート 1/2】 ---------------------------
週明け、昼過ぎに会議が終わった足で文芸部へ向かった
もちろん小野寺を捕獲するためだ
しかし、部署内を見渡しても小野寺の姿はない
飯でも行ったのか?
文芸部編集長に声を掛け、「小野寺はどこにいる?」と聞くと、「急な用事で今日は帰宅した」と答えた
それなら仕方ないと携帯に連絡を入れるが、繋がらない
手早くメールを打ち送るが、あいつは見るだろうか?
その日の夜、小野寺の携帯にもう一度電話するが、また繋がらない
部屋のチャイムを鳴らしても出てこない
今日も実家に戻ってるのだろうか・・・
一体、今小野寺の周りで何が起こっているのかわからなかった
*
翌日、部決会議用の資料に目を通していると、井坂さんがやってきた
「高野、話しがある」
俺は井坂さんに言われるがまま後を追い、空いている会議室へと向かった
「小野寺のことだが、本日付で休職扱いとなった」
「え?どういうことですか?」
「ちょっとな・・・家庭の事情ってやつだ」
「・・・・・・・」
「お前さ・・・いや・・何でもない」
「何ですか?」
「とりあえず、エメ編メンバーにはお前から伝えておけ
話しはそれだけだ」
井坂さんが部屋から出る瞬間、俺は無意識に腕を掴んだ
「・・・休職って・・いつまでですか?」
「さぁーな」
苦しい・・・心臓が痛い・・・息が出来ない・・・
・・・・気持ち悪い
独り部屋に残された俺は、その場にしゃがみ込み、頭を抱えた
*
何度、電話しても繋がらない
何度、家に行っても出てこない
何度、メールを打っても・・・返事がこない
気が狂いそうだ
また・・・俺の前から消えた
ちゃんと俺がアイツの手を掴んでないから・・・離れてしまった
履歴書から実家の番号を調べ、電話を掛ける
家政婦が応対してくれたが、小野寺は戻って来てないと言う
家に直接行っても、「居ないから帰ってほしい」と言われる
じゃ、アイツはどこにいるんだ?
隣の部屋からは人の気配がしない
今まで一週間以上も家に帰らないなんてことは無かったハズだ
不安の波が押し寄せる
管理人室へ行き、小野寺の部屋番号を伝えると「引っ越した」と告げられた
マジかよ・・・
信じられなかった俺は、管理人に無茶を言って部屋のスペアキーを借りた
鍵を開け、中に入ると、そこはただの空間だった
何もない。綺麗にすべて・・・まるで最初から住んでいなかったように・・・・
俺はその場に崩れ落ちた
目頭を手で覆い、嗚咽を漏らし、只々小野寺の名前を呼んだ
「り・・つ・・・りつ・・・・律っ!」
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico