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世界一初恋 高x律 葛藤

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【SIDE 律 Aパート 2/6】 -------------------------------

俺は小野寺出版の一人息子で、今時珍しく親同士が決めた婚約者--小日向杏--がいて
未だに世襲企業を貫き、両親は早く後取りとして結婚を希望している

杏ちゃんに関しては、婚約破棄を申し出てはいるが、正式には解決していない
後取り息子としては、心苦しいが結婚する気もない
会社だって、俺の代で世襲企業を辞めればいいだけの話しだ
今時上場企業で一族独裁の世襲企業なんて流行らない

だからこそ、考えてしまう
もし俺が高野さんの思いを受け入れ、俺の思いを高野さんに伝えたらどうなる?
社会的地位は失われ、偏見の目で見られ、両親を悲しませる
何不自由なく育ててくれた両親を、俺は裏切ることができるのか?
幼かった頃の俺ではない
俺だけのわがままで、俺の周りの人たちに迷惑をかけ、傷つけてしまう

いつまでたっても、自分の心に正直に向き合えないのは柵が多いからか・・・
それともだた俺が臆病なだけだろうか・・・

隣でスヤスヤと眠っている高野さんの顔を見上げ
「もう少し・・待っててくれますか?」と小声で伝えると、
眠っているハズの高野さんは、無意識に俺をキュッと抱きしめた



周期明けの丸川書店エメラルド編集部--通称乙女部
数日前のゾンビはどこに?と思う程の爽やか集団がピンク色の部屋で和やかに仕事している

俺は担当作家のキャンペーン企画書をせっせと作成していると、
文芸部の長谷川さんが俺に声をかけてきた

「小野寺くん、今日角先生と夕食に出るけど、一緒にどうかな?」

「え?」

「久しぶりに小野寺君と話しをしたいみたいだけど?都合どうかな?」

「そうですね・・・お邪魔でなけ・・・「悪いが、小野寺は今夜俺と約束がある」」

「ハァ?高野さん?」

俺は高野さんを睨みつけると、既に何人も殺してきたかのような鋭く冷たい視線を長谷川さんに向けていた
長谷川さんは「それじゃまた今度ね」と言って、そそくさと退場
俺は長谷川さんに声を掛けようとしたら、いつの間にか高野さんが背後から俺の腕を掴み
「ちょっとこい」と言って引っ張っていく

辿りついた先は小会議室
部屋に入ったとたんにドアの鍵は掛けられ、壁に押し付けられる

「俺、高野さんと約束してませんよね!?」

頭一つ分大きい高野さんの顔を見上げる形で、力強く抵抗してみるが、返事の代わりに口を塞がれた

「んっ・・・ふっ・・」

ぷはっと新鮮な息を求め吸い込むと、高野さんは俺のことを強く抱きしめ耳元で「いくな」と掠れた声で言う
何を!を逃げ出そうとしても、抵抗空しく、只々「どこにもいくな」「お前は俺のものだ」と耳元で囁かれる

嫉妬深い元恋人兼上司兼隣人

俺様な発言だが、悪い気がしないのは、もう高野さんから離れられないと思っているからだろうか?
とりあえずワザとらしく盛大にハァーと息を吐き、「俺はあんたのものじゃない!」と一喝入れた後
グイッと高野さんを引離した

見上げた高野さんの顔は寂しそうで、不安そうに瞳を揺るがし、少し目が赤い気がした
ずるい・・そんな表情されたら、何も言えなくなる

「小野寺、好きだ」

「しつこいですよ」

「好きだ・・好きだ・・」

「だから!しつこいって言ってるでしょ!?」

「お前は?俺の事好き?」

「・・・嫌いじゃないですよ」

「ふーん」

高野さんの表情は先程と違って、すこし満足したような笑みを浮かべていた
それがなんだか悔しくて、「仕事してください!」と言い残して俺は部屋を出た

俺がハッキリとすれば、高野さんを不安にさせることはないのかな
実はとても寂しがり屋で繊細なこの人を、俺は何時まで振り回すのか
その内横澤さんに殴られそう・・・
自嘲気味に苦笑いしながら、俺はエメ編へ戻った

作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico