世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Eパート 5/9】 ---------------------------
「校了日に」
ポツリと高野さんが話しだす
「お前の部屋、明かりが付いてなくてさ。
そう言えば車で迎えが来てたから、てっきり実家に戻ってると思ったんだ」
俺の髪の毛をサラサラと撫でながら、「でもさ」と話しを続けた
「週明け、井坂さんに呼び出されて、お前が休職したって聞いて
訳が分からなくなってさ、久しぶりに混乱したよ」
「その後も、家に戻ってる気配が無くて、管理人に聞いたらお前引っ越したって」
ギュッと頭を抱えるように抱きしめられ、俺はちょっと苦しかったけど、黙って続きを待った
「信じられないから、鍵借りて中に入ったら持抜けの殻で、目の前が真っ暗になった」
「どのぐらい放心してたかわかんねーけど、でもこれが現実なんだって気付いて、
焦って携帯鳴らしたけど繋がらなくて」
「・・・・・」
「もう、俺どうして良いのかわかんなくて、その日は全然仕事にならなくて
トリや美濃に”邪魔だから帰れ”って言われてさ・・・本当、鬼の編集長が笑うよな」
自嘲気味に笑って話す
「それから、必死になってお前の事探したんだけど見つからなくて
実家にも問い合わせたけど、取り次いでもらえなくてさ
だけど、俺・・お前の事諦めること出来ないから、どこかに手掛かりが無いか考えてたら
井坂さんが教えてくれたんだ」
井坂さんが?
「正確な場所までは教えてくれなかったよ
”灯台もと暗”って一言だけでさ」
おいおい・・・タレこみは井坂さんか?
「近くにいるのかって思って、有給使って手当たり次第お前の行きそうな場所を探して
最後にあの図書館に辿りついたってわけ」
「・・で、俺はまんまと見つかったってことですか?」
「うん」
「俺って間抜けですね」
「そう?俺は運命だと思ったけど?」
「何故に運命?」
「俺とお前は離れることなんて出来ない」
「結構な自信家ですね」
「もう二度と離さない、離れないって決めたから」
「勝手に決めないでください」
「お前はイヤなの?」
「・・・・・」
「律」
「・・・・・」
「りーつ」
「・・・・・」
「答えて。返事をして」
「・・・・・」
「お願い、律」
「俺は・・・」
俺は高野さんに答えることなんて出来ない
もう引き返すことができないのだから
黙って高野さんの顔を見つめていると「分かったよ」と目を細めて優しく微笑む
何が”分かった”のだろうか・・でも高野さんは「おやすみ」と言って少し腕を緩めて、俺の頭を撫でいていた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico