世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Eパート 6/9】 ---------------------------
翌朝、高野さんは仕事に行かず、まだ家に居座っていた
「高野さん?仕事は?」
「今日も休み」
ウソだろ?編集長が二日連続休むなんてありえない
「あのぉー時期的にネームチェックですよね?」
「うん」
「だったら仕事行ってください!」
「大丈夫。トリに任せてあるから」
おいおい・・仕事放棄かよ・・・
平然としてソファーでコーヒーを飲んでる高野さんを見てると、ピンポンとチャイムが鳴った
「高野さん、大人しくしてて下さいよ!」
「へいへい」
俺は一応釘を刺して玄関に行くと、安岡さんが「おはようございます。律様」と挨拶を交わした
とりあえず、中に入ってもらうが、こちらも一応念の為高野さんが居座っていることを伝える
すると、安岡さんは一瞬驚いたが、すぐさま冷静に「承知致しました」と答えた
リビングに行くと、高野さんが不貞不貞しくソファーに腰掛け、安岡さんを睨んでいる
背後にはドス黒いオーラが見えるのは気のせいだろうか・・・
安岡さんもそんな高野さんを一瞥した後、クスッと笑い「いや失礼」と告げ
「早速本題ですが」と話しを切り出した
「律様、明日の段取りですが、事前にお渡しした資料の通り中盤で発表となります」
「・・・・」
「旦那様からの伝言ですが、当日は発表までの間監視付きとなります」
「それは俺が逃げるかもしれないってこと?」
「・・・・はい。旦那様はそのようにお考えです」
「全くもって信用ないなぁー俺」
自嘲気味に目を細めて笑う
「申し訳ございません」
安岡さんは深く頭を下げ、「でも」と付け加えた
「明日は監視付きですが、今日は違いますよ?」
チラリと高野さんの方を見て、また視線を俺に戻す
「それってどういう意味?」
尽かさず高野さんが参戦してきた
「言葉の通りです」
「俺が律を連れて逃げても良いってこと?」
「私は何も聞こえませんが?」
「ふーん」
ガシッと俺の腕を掴み「律、俺と一緒に行こう」と引っ張る
俺は首を左右に振り「ダメですよ」と高野さんに答える
「何で?」
「俺一人の我儘で許される事態じゃないってことです」
しっかりと、ちゃんと目を見て高野さんに答える
そう、もう俺一人の我儘で回避できる事態ではない
これは小野寺出版としても、今後の社運を掛けているのだから
恐らく出席者の殆どが同業だろう
そんな中での正式発表ということは、結婚式当日に花嫁が攫われること以上にダメージが大きい
「律様、明日の朝お迎えに参ります」
「お願い・・します」
では。と安岡さんは部屋を後にし、俺は未だ高野さんに腕を掴まれたままだった
「律」
クルッと俺を正面から抱きしめ、「律」「律」と何度も呼ぶ
俺はそんな高野さんの背中に腕を廻して、まるで子供をあやすように背中をポンポンと叩いた
「仕方ないので、今日一日は高野さんと一緒にいてあげます」
ギューと、窒息しそうなぐらい力強く抱きしめられ、「く・・苦しいです」と苦笑いをした
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico