世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Eパート 8/9】 ---------------------------
小野寺出版主催 海外進出記念パーティ当日
俺は囚われた宇宙人ヨロシク状態で、現在個室監禁中
外部との接触は一切許されず、扉の外にも部屋の中にも黒服の方が居座っている
俺は昨日高野さんから受け取った指輪を右手で弄りながら時間を持て余していた
本でも持ってくれば良かったなぁー
チラリと後を見ると、安岡さんが神妙な顔つきで壁にもたれかかっている
「律様。本当によろしいのですか?」
「別に今生の別れって訳でもないし、逢うと思えば逢えるし、それにね・・・」
左手薬指にキスをひとつ落として
「もう大丈夫だから。俺は一人じゃないから」
安岡さんもそれ以上のことは聞かず、刻一刻と会見時間が迫ってきた
「律様、お時間です」
ゆっくりと腰かけていたソファーから立ちあがり、父のいる控室へと向かった
*
「律、今日は記者団も来ている。分かっていると思うが、お前は「ちょっとまって!」」
数回、深く深呼吸して背筋を伸ばして俺は父に言った
「父さん、俺の約束だけは守ってもらうよ。
今回は逃げも隠れもしない
でも、これが最後。最初で最後の親孝行だと思って」
「約束とは?」
「家督は継がない、結婚もしない、丸川も辞めない」
「何を言ってるんだ!往生際が悪いぞ!」
父の荒げた声に一瞬怯んだが、グッと喉を鳴らしてそれでも俺はこの人に言わなくちゃいけないんだ
「好きな人がいます」
「誰だ?それなら話しは早い。今日の記者会見で婚約発表も兼ねればいい」
「いいんですか?同性ですよ?」
「なっ・・血迷ったのか!律!」
「血迷ってなんていません。俺は10年前も、今も、その人のことが好きなんです」
「っ・・・・・」
「もう諦めてください。俺は父さん達の人形じゃない!」
バンッと壁を叩き、ちょっと勢い付けたから痛かったけど、うん。大丈夫
ずっと、俺の傍で黙っていた安岡さんが口を開いた
「旦那様、よろしいですか?」
「なんだ!!」
「律様を・・・もう解放してもよろしいのではないでしょうか?」
「安岡!貴様まで何をいう!」
父は安岡さんの襟もとをキツク締め上げ、怒りで顔が真っ赤になっている
「子供の人生を、親が勝手に決めるのは傲慢です。
思い通りにならないからと言って、約束を反故するのは大企業の社長として如何なものかと思います」
「っ・・・・・」
「親として子供の幸せを願うのでしたら、律様を縛り付けていた鎖を解いてください」
お願いします。と安岡さんは何度も父に懇願する
バッと掴んでいた襟もとを解き、父は息を整え、髪を掻きあげたあと
「・・・分かった。律の自由にしなさい」
「ありがとう。父さん・・・」
「旦那様、ありがとうございます」
「・・・律、時間だ。行くぞ」
「はい!」
俺は、安岡さんに一礼して、父の後に続いた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico