世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Eパート 2/5】 ---------------------------
綺麗に掃除された部屋は、以前の小野寺の部屋と配置は左程変わってなく
ここが俺の隣部屋じゃないって事実だけが重く圧し掛かる
渡されたコーヒーを飲みながら、ジッと小野寺を見つめる
居心地が悪そうになった小野寺は「仕事はどうしたんですか?」と話しかけてきた
「今日は休み」
ポツリと返事を返すと、「はぁ・・そうですか・・・」とブツブツつぶやく
お前を探すために今日は休んだんだ
それぐらい察しろよ!
その後ダンマリを決めた小野寺にイライラした俺は
「あのさ。お前辞めるの?」と聞くと、きょとんとした顔で俺を見る
続けて「また、俺の前から消えるの?」と聞いても何も答えない
小野寺は落ち着いていて、余計イライラする・・・
「何か言えよ」と怒りが露わになった声で問い詰めると
「丸川は既に退職してますよ?井坂さんから聞いてませんか?」
「おっかしいなぁー」と首を傾げて答えやがった
「ぶざけんな!」
声を荒げて怒鳴り付けると「何言ってんの?」とまるで他人事のように云った
頭に血が昇った俺は小野寺の襟首を掴み立ちあがらせると「痛いな・・乱暴は辞めて下さい」と
落ち着いて答えた
コイツ、自分の云ってること分かってるのか?
なんで、離れて行くんだよ!
どうして、俺を置いて行くんだよ!
また・・・俺を独りにするのか?
俺を・・捨てるのか?
思ってたことを口にした途端、涙が流れた
置いて行かないで・・・独りにしないで・・・
縋るように小野寺を抱きしめた
*
暫く無言のままでいると、小野寺がオズオズと俺の背中に手を廻してきた
そのあと、俺に彼女がいるやら毎晩深夜帰宅してるやら
ブツブツ話し始めた
あー林さんのことを言ってるのか
って云うか、見てたのか?
なんだ・・・コイツ俺に嫉妬してるのか
そう思ったら、少し気持ちが浮上してきた
「お前、妬いてんの?」と聞いても「俺には関係ない」と云い、「嫉妬?」と聞いても「別に」と答える
調子に乗って「俺って愛されてる?」と聞くと「何故そうなる?」と淡々と答えた小野寺をギュッと抱きしめる
耳元で「律、俺の傍にいて」と囁くと「タイムオーバーです」と答えた
は?何言ってんだ?
「時間切れです」ともう一度云い直し「俺、今月中に渡英しますから」と国外逃亡を宣告してきた
いつ戻ってくるのか、暫くってどのぐらいなのか?
淡々と冷静に答える小野寺を一度引離し顔を伺う
「本当ですよ」
俺の目を見て答えたその台詞は嘘ではないようだ
まだ間に合うだろうか・・
引き留めるために何か伝えようとすると「高野さんが俺の事を拒絶したのがいけないんです」と
理解できないことを言い出した
以前、俺が「お前の事、分かんなくなった」と云ったことを、俺が小野寺を拒絶したと捕らえたらしい
俺がどんなに口説いても頑なに「好き」と云わないからだろ?
馬鹿なやつ。素直になれよ・・・でもそこが可愛いんだけど・・・
押し問答を繰り返し、「旅行じゃないんですから、キャンセルなんてありませんよ」「無責任すぎます」と
キャンキャン吠えるから「それでもお前と一緒にいたい」と伝えた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico