世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Eパート 5/5】 ---------------------------
受付で丸川書店 井坂龍一郎の代理だと名乗ると、すんなりと会場に通してもらえた
立食パーティーの形式で、各々が名刺交換をしている
俺は後の壁に寄りかかり、腕組みをしながらまだ暗い、雛壇を見つめていた
雛壇の前に用意された椅子へ続々と記者団が入場してきた
流石大手企業ともなると、マスコミの人数も凄い数だ
会場のライトが薄暗くなり、雛壇にスポットライトが当たる
暫くすると、小野寺社長と律が席に着いた
遠くからみると、あぁー住む世界が違うんだなと思い知らされる
端正な服装、人を引き付ける容姿に加え、緑かかった瞳にサラサラと揺れる栗色の髪
つい数時間前まで俺の腕の中で子供のように甘えていた人物と同一とは思えないほど
律は臆することなく堂々と背筋を伸ばし前を見据えている
記者会見が始まり、淡々と小野寺社長が今後の展望について語る
ひと通り話し終わると、質疑応答が始まり、律への質問が集中する
跡を継ぐのか?
婚約者とはどうなったのか?
そして・・・指輪の話題に触れた時、律はコホンと業とらしい咳払いをして
「虫よけです」と答えた
おいおい・・虫よけかよ・・・
少しがっかりしていると「・・・嫉妬深い恋人がいますので・・・」と話しを続けた
嫉妬深いねぇー間違ってはいねぇーけど、お前だって結構嫉妬深いんだぜ?
自分じゃ気付いてないのか?
「三年後迎いに行きますから」
その台詞を聞いた時、俺は慌ててにやける口元を手で覆った
きっと、俺は今顔が真っ赤になってるんじゃないか?
我慢できない
今すぐ抱きしめたい
会場を出て俺は控室へと向かった
*
控室のドアにもたれ掛るように待っていると、足元が覚束ない小野寺が安岡の肩を借りて近寄ってきた
俺に気付いた小野寺は間抜けな顔をして「あのぉー何故ここに高野さんが居るのでしょうか?」と恐る恐る聞いてきた
「うーん。逢いたかったから?」
そう答えると「どうして疑問符?」と怪訝な顔をされたが、とりあえず控室に入りフラフラの小野寺をソファーへ座らせた
井坂さんの代理で来たことを伝えると「職務放棄か!」とキャンキャン吠える
記者会見で「嫉妬深い恋人」と云われたことに対して問いただすと「十分、嫉妬深いですよ」と一喝された
調子が戻ってきた小野寺は「三年後、高野さんを迎えに行きます」と再度俺に向かって話した
迎えに行くって・・・「俺が嫁?」と聞くと「ちょっとキモイですね・・・」と云われ、俺は少しガッカリしたが
気を取り直して「まー料理も掃除も洗濯も俺の方が出来るからな。別に俺”嫁”でもいいよ」と伝えると
「やっぱりキモイんで、やめます」と撤回してきた
「迎えに来てくれないの?」
お前がちゃんと俺のことを受け入れてくれたことが嬉しかったんだ
「・・・三年後、俺を見つけてください」
あぁ、見つけてやるさ。どこに逃げたって俺がお前を探しだしてやる
覚悟しておけよ・・・律
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico