世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Fパート 1/1】 ---------------------------
最初の半年は何だかんだ忙しくて、毎日が慌ただしくて
一年経って、少し落ち着いた頃になると、寂しくなって、泣きたくなって
二年経った頃には、空を見上げて”同じ空の下にいるんだ”って思うとまた頑張うて気持になって
やっと三年が過ぎた
俺の負けづ嫌いと意地が競り合って、なんとか三年での売り上げも目標以上になった
新企画も、日本のベストセラーを翻訳して出版して、
映画化やミュージカル化まで漕ぎつけて、俺は満足していた
だから・・・もういいよね?あの人のところに帰っても。
*
帰国後、残処理やら引き継ぎやらで会社に缶詰め状態になっていた
日本での俺の部屋は、安岡さんが以前のマンション
そう高野さんの隣を引き払わず更新していた為
そこに移ることになった。
とは言っても、バタバタしていたので、結局引越しやら荷解きは人任せにしてしまったが・・・
久しぶりの帰宅後、もう深夜近くなっていたが、少しは家事を出来ようにと、慣れない料理をしようとしたが
これまたうまくいかず・・・真新しいフライパンを真っ黒に染め、たわしでゴシゴシ洗いながらコゲを落す
部屋もすぐ散らかるので、掃除機をかけてなるべく綺麗にするように心がけて・・・
高野さんには帰国していることを伝えてない
時折、ベランダ越しに明かりが漏れているのを見ると、心が躍る
いつ気付くかな?
そう言えば、帰国後携帯を変えてから高野さんに連絡してなかったな。
心配してるかもしれないから連絡を入れてみよう
『ごめんなさい。携帯が水没したので買い換えました。
残処理をしていたので連絡が遅くなりました。』
送信!これでヨシ!
チロリーン♪
『りょーかい』
随分と味気ない返信だなぁー
別に俺が連絡しなくても、心配してなかったのかな?
悶々と考えてたら、隣のドアがパタリと閉じる音がした
あ・・高野さん外出するんだ。
どこ行くのかな?と思いながらも、携帯と財布を持って俺も釣られるように外に出た
1階につくと、既に高野さんの姿はなく、あー見失ったか・・とガッカリした
見つけてもらうまでは、俺から逢いに行かない!なんて意地を張ってる俺は、本当馬鹿だなぁと思う
折角外に出たから、図書館でも行こうかな。
懐かしい街並みを見ながら、ゆっくりと目的地へ向かう
風が心地いい。うーんと背伸びをして、中に入ると、静寂な独特の雰囲気が漂っていた
*
俺が高校一年の頃、三年間憧れていた先輩に思わず告白した場所が学校の図書室だった
ストーカー紛いのことをして、ただ見ているだけで幸せで
それでも思いが通じて、短い期間だったけどお付き合いして。
離れちゃったけど、また再会して、恋をして、俺は同じ人に二度恋をしたんだ
そんな事を思い出しながら、本の背をなぞりながら取ろうと腕を伸ばした時
まさか思い人が背後に立っているなんて、普通思わないだろ?
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico