世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 律 Aパート 4/6】 ---------------------------
翌朝、父の秘書兼小野寺家執事兼元俺の世話役--安岡さんと一緒に車で小野寺出版へ向かった
社長室にて、今後のスケジュールおよび調整、作業分担などを話し合う為だ
自宅でも良かったのだが、資料が無いことから会社へ行く運びとなった
「律様、今後のスケジュールですが、取り急ぎ火急な用件につきましては
今まで通り、社長決裁を頂くことになっております。
また、律様は日中お勤めですので、その他要件につきましては帰宅後の作業となります」
「はい。」
「月一回の役員会議につきましては、お手数ですが調整して頂き、必ず出席願います」
「はい。」
「パーティー等が開催される場合も、社長代理として出席願います」
「・・・それは出席しないとダメなんですか?」
「はい。同業他社、政財界の方も出席されますので、小野寺出版の社長代理として出席願います」
「・・・はい。わかりました」
「では、取り急ぎ、この資料をお読みください」
渡された資料は、小野寺出版で企画会議で決まったここ5年分の資料
キングファイルが20冊以上もある
「この資料をお読みになれば、大体の傾向と対策が分かります
小野寺出版が今までどのように歩んできたのか、
作家と編集者の意気込みも汲み取れるかと思います
律様の主な業務は、原石となる作家の評価をお願いします」
キングサイズの資料をパラパラ捲りながら、「分かりました」と安岡さんに答えた
「身の回りのお世話も含め、
律様には負担が掛らぬよう配慮するようにと社長から命を受けております
何かございましたら、何なりとお申し出ください」
「いや・・別に子供じゃないんだから身の回りの世話なんていりませんよ」
「いいえ。この状態がどのぐらい続くかはまだ分かりません
律様まで体調を崩されては困ります」
何だかんだと安岡の説得に負け、大げさだなぁーと思いながらも
よろしくお願いしますと頭を下げるしかなかった
とりあえず、安岡から受け取った資料を自宅に運ぶ為、車に積めこみ
マンションへと向かった
段ボール6個
俺が持とうとすると、安岡さんからのダメ出しが出て
仕方なく、俺は運ばれてくる段ボールを玄関で受け取り、部屋の奥へと運んだ
全部の段ボールが運ばれた後、安岡さんは「ちょっと失礼」と言ってズカズカと
部屋の中に入り、テキパキと片付け始めた
「いや・・あのぉー俺自分でやりますから・・・」
と一応声をかけるが、「律様はソファーに座ってて下さい!」と言われ、
俺の周りには強引な人ばかりだ・・・と少しゲンナリしていた
2時間後、見違えるように綺麗になった部屋で、俺は安岡さんにコーヒーを淹れ
「ありがとうございました」と礼を言った
「いいえ。お気になさらないでください。律様のお世話をするのは楽しいですから」
ニコッと笑われ、つられて俺も笑顔になってしまった・・・
「律様は昔からひとつのことに集中すると、他のことが出来なくなる傾向があります
それだけ一生懸命なのは存じておりますが、もう少し力を抜いても良いかと思います」
「うーん・・・でもこれって性格だと思うんだけど?」
「常に直球勝負の律様には難しいかもしれませんね」
クスクスと笑い、「では、そろそろ失礼致します」と立ちあがった
玄関の扉の前で、「律様、スペアーキーをお持ちですか?」と聞いてきた
「うん。あるけど?」
「では、お預かり致します。」
「え?」
「今後必要な書類は、日中に律様のお部屋に運ばせて頂きます。」
「あーーそういうことね。うん。よろしく」
では失礼致しますとふかぶかと頭を下げ、帰って行った
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico