世界一初恋 高x律 葛藤
【SIDE 高野 Aパート 1/1】 ------------------------
−−ずっと焦がれていた思い人は、神様の気まぐれか悪戯なのか、
突然俺の前に現れた −−
高校生の頃、俺を取り巻く世界は輝きはなく、ただ息をして生きているだけの日々だった
両親は顔を合わせれば謂い合いし、俺のことなど見向きもしなかった
幼い頃は、俺を見て欲しくて足掻いていたが、中学に入った頃から諦めた
両親に愛されることのなかった俺は、他人との距離を置き、関心を持たないようにした
キズつくのはイヤだから
親の愛情を知らない子供だった俺は、結構歪んだ性格の持ち主だったと思う
誰か俺に気付いてくれるかも?と淡い期待を捨てられず、
何人か付き合ったりしたが、結局長続きしなかった
そんな時、律と--『織田律』と出会った
突然告白された時はコイツ何言ってんだ?と思ったが、
アイツの幻想を壊してやろうと”付き合う”ことになった
親の愛情を注がれ、何不自由なく幸せに育ったアイツを見て、イライラしたこともあり
八つ当たりをしたこともある
それでも、アイツは俺を避けず、酷い事を云ってる俺に「好きです」と囁く
いつの間にか、俺の世界は輝きを増し、アイツと・・律と一緒にいることが嬉しくなり
もう離れられないと思った
たぶん、これが俺の『初恋』
だが、互いの感違いから離れ離れになり、俺は律を探したが『織田律』は見つからず
突然俺の前から姿を消した
まるで・・・最初から居なかったかのように・・・
*
再会間もない頃はすぐに気付かなかった
ただ、小野寺を見ていると何か沸々と湧き上がる思いが俺を掻きたてる
『学生の頃とか、図書館の本全冊読むとか、フツーにしてたんで』
一瞬心臓が止まるかと思った・・・いや・・止まってたと思う
10年間、俺の記憶から消えなかった
唯一、俺の心を掴んだアイツをもう一度「好き」になった
同時に、もう二度と俺の前から消えないよう、離れないようにと嫌がるアイツの腕を掴む
学生の頃、プライドが邪魔して言えなかった言葉
アイツにちゃんと伝えられなかった言葉を、
今度は失敗しないように、逃がさないようにと
何度も何度も小野寺に伝える
「好きだ」
「小野寺、好きだ」
アイツは俺に「好き」とは言わないが、顔を見れば分かる
真っ赤な顔して、俺を見上げるエメラルドの瞳は、正に「目は口ほどにモノをいう」といったところか
嫌われてはいない。意識はされている。好意もあるだろう
ただ、素直になれなくて俺に云わないだけ
だけど、律・・・
俺だって不安なんだ
お前が俺以外のヤツと笑顔で話しているのを見ると、無性に不安になる
お願いだ・・律・・・
俺の全てをお前にやる。だからお前の全てを俺にくれ・・・
不安になる気持ちを抑えつけながら、小野寺を抱きしめキスを落せば
今度はお前が触れるだけの優しいキスを俺に返す
これが答えってことでいいんだよな?
俺はアイツの肩に顔を埋め、ぎゅっと優しく抱きしめた
作品名:世界一初恋 高x律 葛藤 作家名:jyoshico