世界一初恋 高x律 最初で最後の恋
初めて逢ったのは今から半年前
自宅マンションの近くにある図書館で、何時も通り目的の本を探していると
サラサラの栗色でスラリとした青年が俺の目の前を横切った
腕には角遼一の『瓶の蓋』を大事そうに抱えていた
俺も借りようと思っていた小説だったから、自然と背表紙のタイトルへ視線を向けた
その視線に気付いたのか、青年は苦笑しながら「直ぐ読み終えると思いますので」と
小声で俺に話しかけた
「あ・・いえ。すみません」
振り返り様に見た青年の目の色は、珍しくエメラルド色の瞳だった
--- 綺麗だ
色白の肌に栗色の髪、そして瞳はエメラルド色
一瞬で俺の鼓動が高鳴る
10年ぶりの感覚
今まで『織田律』以外で心から欲しいと思った人物はいなかった
それからというもの、校了明けには必ず図書館へ赴き
自然と彼を探していた
*
毎回逢える訳ではない
それでも逸る気持ちを抑えつつ、閲覧室で彼を待つ
昔とは違い、現在は個人が登録するICカードを使って自動貸出システムが適用されている
ライブラリープライバシー、個人情報が漏れないようにセキュリティが強化されている
つまり、彼の借りた本を再び手にとっても『名前』が分からないということだ
久しい訳ではないので、直接名前を尋ねることも出来ない
”気持ち悪い”と思われるのは厄介だ
--- 昔のアイツもこんな気持だったのかもな・・・
10年前の恋人を思い出し、ニヤリと口角が上がった
*
開館時間から閲覧室で張っていた時、彼が小脇に本を抱え歩いてきた
表情からして若干疲れが伺えたが、嬉しそうに俺の斜め前の席に座る
ジッと見つめていると、俺に気付いたのかペコリと軽く会釈し「こんにちは」とポツリとつぶやく
声を掛けられたことで、我に返り返事を返す
やってることは中学生のようだが、それでも今日のミッションは達成された
半年かけて、やっと俺を覚えて、挨拶を交わす仲になった
作品名:世界一初恋 高x律 最初で最後の恋 作家名:jyoshico