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世界一初恋 高x律 最初で最後の恋

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前回の会話から、小野寺には同性愛の話題を振ってはいけないことが判明し
俺は手を拱いていた

--- 俺を意識させるには、どうすればいいか
--- 嫌われたくない

臆病な自分に気付いたのも、最近だった
過去に何人か関係をもったこともあるが、これほど臆病になるのは高校以来か・・
突然最愛の恋人を失った経験を過去に持つ俺は、同じように小野寺を失いたくないと、
中々一歩踏み出せないでいた



年の瀬が近づく12月初め、同業他社間の忘年会交流が開催された
丸川書店からはエメ編編集長の俺と専務の井坂さん、営業代表で横澤が主席していた

忘年会の前日、通勤途中で小野寺に尋ねた時は出席すると話していたので、
広い会場を見渡し、小野寺を探しつつ、名刺交換という儀式も遂行していた

会場に入ってから30分程経過した時、会場の扉から入ってきた小野寺を見つけた
隣には貫録のある人物、小野寺出版の小野寺社長だった

以前部屋呑みの際、軽い気持ちで尋ねたときに小野寺の父は勤め先の社長であることは
知らされていた
まぁー本人は「周りから”七光り”と呼ばれるので迷惑です」と気分を害していたが・・・
世の中には”一光り”すらもない連中ばかりなので、そこは気にするなと励ました

さり気無く小野寺に近づいていくと、小野寺社長の会話が途切れ途切れに聞こえた
「・・・・息子は、高校一年の時にイギリスへ留学してまして・・・・
 ・・・ええ、昔から本ばかり読んでまして・・・・
 ・・・今は、文芸の編集者を担当しています・・・」

--- 高一の時に留学?

「いやぁー小野寺社長。ご無沙汰しています」
井坂さんと小野寺社長はゴルフ仲間で、仲がいい
井坂さんはチラリと小野寺を見ると、社長へ視線を戻し話しを続ける

「ご子息にはご婚約者がいるとか。
 正式に婚約をされれば、小野寺出版は安泰ですね」

--- 婚約者?

「あっ・・あのぉー井坂さん?婚約は親同士が決めた事ですので・・・」
小野寺はシドロモドロになりながら、井坂さんの言葉に反応し答えていた

「律、お前はまだそんなことを言ってるのか?
 そろそろ身を固めて、私を楽にしてもらいたいものだ」
小野寺社長と井坂さんは楽しそうに談笑している

俺は小野寺に近づき「お疲れ様」と声を掛けた
苦笑いをしつつ、返事を返した小野寺はこの場に居たたまれなくなったのか、
そそくさと会場の外にあるデッキへと消えて行った

俺はグラスワインを二つ持ち、小野寺の後を追った

「どーぞ」
片方のグラスワインを渡すと「ありがとうございます」と答え、一口含む

「留学してたの?」
気になったので尋ねてみると、複雑そうな表情で「ええ」と答えた
話しを聞くと、とある事情で登校拒否になり、イギリスへ留学したと話した

「婚約者って?」
俺は少し眉間に皺を寄せて尋ねると、困った表情で「親同士が勝手に決めたんです。俺は断ってますが・・・」
と手に持ったワイングラスをクルクルと廻しながら答えた

偶然が重なり過ぎている
『織田律』 と 『小野寺律』
ファーストネームが一緒、留学、婚約者というキーワードも一緒
そして、俺が唯一心を奪われたという意味でも一緒

意を決して聞く
「あのさ、『織田律』って名前に心当たりない?」

その時見た小野寺の表情は、
顔面蒼白で眉に皺を寄せ、エメラルドの瞳は大きく開いて、唇を一強く咬んでいた