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世界一初恋 高x律 記憶喪失

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--- しまった!

そう思った時には遅く、小野寺は俺の前から走って逃げた

仕事帰り、小野寺と一緒に本屋に立ち寄っていた
今日は宇佐見秋彦先生の新刊発売日だった

何気なく手に取り、レジへと向かおうとした時、声をかけられた
「あれ?嵯峨くん?」

「振り返った先には、見知らぬ女性」
俺は誰だか分からず首を傾げていると、高校の同級生だと話す
あー俺が記憶を無くす前の知り合いか

「さ・・・が・・・?」
小さい声での呟きが聞こえた時、俺は「ハッ!」と小野寺を見る
すると、青白い顔で俺を睨みつけ、逃走した

すぐに後を追ったが、見失ってしまった
例え俺の前から逃げても、自宅は隣だし、会社も一緒だ
帰りに寄って、話しをすれば大丈夫だと簡単に考えていた



小野寺の部屋のチャイムを鳴らしても出てこない
携帯を鳴らしても繋がらない
ベランダ腰に隣を伺っても、部屋は暗く物音もしない

タバコに火をつけ、深く吸って吐く
「どこ行ったんだ?」
隣人不在のまま、夜は明けた

翌日、出勤すると羽鳥が「小野寺が体調不良で今日休むと連絡がありました」と伝える
「あー。そう」
素っ気なく返事を返し、席に座る

書類に目を通す振りをして、一日をやり過ごす
俺は、全く仕事に身が入らなかった

そそくさと定時に上がり、小野寺の部屋へ行く
部屋に戻った形跡がない・・・・

実は今朝、小野寺の家の扉に小さな紙を挟んでおいた
扉を開ければ剥がれるようになっていた
それが、まだ扉に張り付いている

「なんだよ・・一体・・・」
バンッと廊下の壁に力いっぱい拳を叩き付け、ズルズルとしゃがみ込んだ