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世界一初恋 高x律 パラレル

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【SIDE 高野】

翌朝、目覚めると彼が起きていて、俺の顔をジッと見つめていた
「おはよう」
「おはようございます」

俺はそっと彼の目から零れる涙を親指で拭きとる
「どうして泣いてたの?」
彼は少し苦笑いしながら「そろそろお別れみたいです」とポツリと呟く

「何で?」
「カンです」
「またカンかよ」
「ええ。すみません」

その後、軽い朝食を一緒とっていると「この後、もう一人の”俺”に逢いに行ってください」と言う
俺は黙って彼を見ていると
「一発殴られるのは覚悟した方がいいかもしれませんね」
「あいつに?」
「いいえ。同居人に」
「はぁ?」
「・・・・・これ以上は言えません」
「カン?」
「・・・・”彼”なら・・多分殴りかかるかと思うんですよ」
「知り合い?」
「まぁそんなところです」
「ふーん」

その後、彼は何も話さなかった
元々、起きたら小野寺のところに行こうと考えていたから、別にいいのだが・・・
『同居人』という言葉が引っかかる

そそくさと支度し、隣部屋のチャイムを鳴らす
普通じゃ出てこないのは知ってるから、携帯も鳴らす
”早く出てこい!”と急かすようにドアを叩いていると、ガチャリと開いた

「おせーよ」と扉を掴んでこじ開けると、そこにいたのは・・・・俺?

茫然としていると、いきなり胸倉を掴まれ「泣かせるな!」「大事なら離すな!」と怒鳴り散らす

「お前だれ?」
そっくりさんにしては似すぎている

「俺はお前だよ」
「はぁ?」
「”高野政宗”だって言ってんだよ。ばーか」
「随分と男前が目の前にいると思ったら、俺か」

もう一人の俺はハァーと溜め息をついた後、俺を睨みつけて話しを続ける
「出直してこい。”律”の側には俺がいる」
「なんだと?」
「”律”が昨日倒れたの知ってるか?」
「・・・・・・」
「お前のせいだろ?」
「・・・・っ」
「そんな奴を”律”の側にいかせない」
帰れ!と言って扉を閉じようとするのを、もう一度グイッと開けズカズカと部屋の中に入る



寝室に入ると、律は嗚咽を漏らしながら泣き崩れていた
近づきそっと抱きしめると、小野寺の身体は以前より痩せて細くなっていた

「ごめん。律・・・ごめん」
日が経つにつれて弱っていくのを知ってたのに、俺は八つ当たりして、こいつを追いつめた
サラサラする髪を軽く梳きながら、背中をポンポンと叩き小野寺が落ち着くまでずっと抱きしめていた

暫くすると、視線を感じてドアの方に顔を向ける
もう一人の俺がジッと睨みながら見ていた

「気を使えよ。それとも俺達のラブシーンみたいの?」
お前に俺の”律”は渡さない。意地悪くニヤリと笑うと
「見てて欲しいならみてるけど?」ともう一人の俺が不敵にニヤリと笑う

所詮、”俺”だ
考えてる事も同じだし、行動も同じだろう。

そこでふと考えた。こいつ・・・俺の”律”に手出ししてないだろうな?

問いただすと、「さーね」と余裕な笑みを浮かべて軽くあしらってきた
ムカつく!だから俺もこいつに真実を教えてやった
そしたら急に態度を変えて「ちょっかい出してないだろうな?」と聞いてくる

ああ。そうだよ。こいつは”俺”だ
さっきのお返しに余裕をかましながら「さーね」と答えると殺気だって「殺すぞ」と牽制する
ほら、お前だって余裕ないだろ?

すると、さっきまで泣き崩れていたはずの小野寺が俺の顔をグイッと無理矢理前に向けて
「ちょっと高野さん?どういうことですか?ちゃんと説明してください!」とキャンキャン騒ぎ出した

「お前バカか?だから俺の部屋に昔のお前が居るんだよ」
「何故?」
「知るか。お前だって部屋に”俺”が居るじゃねーか」
「・・・・・っ!」

混乱している小野寺に説明していると、パタリと玄関のドアが閉まった
ああ。お前も”律”に逢いに行ったのか

”俺”達は”律”の側から離れちゃダメなんだ
”俺”達は”律”が居ないと生きる意味がないんだ

楽しいときも、哀しいときも、ずっと、ずーと一緒に二人で共有して生きていくんだ
これからお互い思い出を作って、過去じゃなく未来を生きていく

だからお前も、もう一度手を掴んで今度こそ離すな

「律」
俺の頬を掴む小野寺の両手を包み込むように重ねて、顔を近づける
啄ばむように離れては触れて、その度に名前を呼んで、お互いの存在を確認する
抱きしめた感触が、声が、鼓動が俺を包み込む

--- 俺の”律”はここにいる・・・