世界一初恋 高x律 パラレル
【SIDE 高野】
どうやら彼は夜になると現れ、朝になると消えることが分かった
何が切っ掛けで現れるのか、本人もよく理解していない様子だった
小野寺と一緒に過ごしている時は”彼”は現れない
まぁーあいつのことだから、昔の自分と遭遇なんてしたらパニックになって
収集が付かなくなり、面倒事が増えるだけだからいいんだけど
最近はブツブツ文句を言いながらも、一緒のベットで寝ている
夜中、眠った彼を消えないように抱きしめて添い寝していても、
目覚めた時には姿がない
だから毎日が妄想や幻想のような気がして、
家に戻って彼が「おかえりなさい」と言ってくれると嬉しくてたまらない
誰も待っていない暗い部屋に慣れているハズなのにな
*
職場では大人の小野寺と一緒で、家に戻れば幼い小野寺がいて
俺は毎日が充実していた
とは言っても、流石に修羅場突入となれば家に戻れず、
事前に彼には伝えておいたので、問題ないだろう
そんな折、小野寺が携帯片手にそそくさと部屋を出て行った
気になって後を着いて行くと「俺だけど・・・いる?」と会話が聞こえる
気付かれないようにジッと耳を澄ます
誰と話してるんだ?
お前の部屋に誰がいるんだ?
最近油断していたのかもしれない
毎日職場に小野寺がいて、隣人で、家に帰ればもう一人の小野寺がいて・・・
小野寺が俺の元から離れて行くなんて考えてもみなかった
どんなに近くにいても、遠くに感じるてしまう
話し終わった小野寺に声を掛けると、後ずさりしながら俺から距離を取る
--- イライラする
逃げる小野寺の頭を掴み問いただす
それでも小野寺は抵抗し、俺から離れようとする
--- なんで俺から離れる?
俺は小野寺の言葉を遮り、口を塞ぐ
自分の思いを伝えるように深く、何度も何度も角度を変えながら口づける
自力で立てなくなった小野寺の腰を片腕で支え、息をも呑みこむように続ける
苦しくなったのかドンと胸を叩かれ我に返る
「何するんですか!」
潤んだ瞳で上目使いで見上げられた後、小野寺の表情が変わった
眉間に皺を寄せ歪んだ表情で、俺を突き離して逃げていった
--- 俺はどんな表情をしていたんだ?
口元を片手で覆い、茫然と立ちすくむ
作品名:世界一初恋 高x律 パラレル 作家名:jyoshico