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樹ニ入ル(誰が為に陽光は輝くネタバレ)

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「くっそ、何がオマエらなら十分だろう、だ」
 ざん、と。戦斧を足元の雪につきたて、ソードマンは毒づいた。それを聞いたパラディンが、大きくためいきをつく。
 ようやく魔物が動かないことを確信し、彼らは相好を崩していた。メディックが順繰りに皆の様子を確認する。アルケミスト、ガンナー、パラディン、と。そこまで進んだところだった。
「やぁやぁ、皆さんすごいですねー。この魔物を倒してしまうなんて」
 どこか押しつけがましく、軽い調子の声がかけられた。かつてリスを従えた衛士と彼らはやりあったことがある。その彼をどこか思い起こさせるような口調だった。
 こんにちは、と。少し離れたところでその人物は片手をあげた。だれもがその人物に見覚えがあった。同時に、誰かはわからなかった。当然といえば当然だ。頭から足先まで、衛士の証であるフルプレートアーマーで身を包んでいるのだ。顔立ちもなにもわかるはずがない。その人物が発する耳障りなキンキン声に聞き覚えがないこと。甲高い印象はあるものの、女性の声ではないこと。わかったのは、その程度だった。
 彼はざくざくと魔物に近寄った。そして、ほうとかふむとかいちいち声をあげながら、魔物の死体を確認する。
「いやぁ、すごいですねぇ。戦ってる音が聞こえたから、早く逃げろと言いに来たんですが。本当にヤツだ。これでこの階は安心だ。よかったよかった。これで公宮にいい報告ができます」
 そう言いながら、彼は一番近い位置にいたソードマンに近づき、その肩を親しげにポンと叩いた。はぁ、どうも、と。突然のことに戸惑う様子を見せる彼に対し、ギルド名は? お近づきのしるしに一杯どうです? おつかれでしょう、なあに酒じゃありません、疲労回復に効く木の実のジュースでね、と。立て続けに話しかけながら、衛士は何やら飲み物らしきものの入った革袋を差し出す。ソードマンはそれを受け取った。そして、さぁさぁぐっとという親しげな態度から反射的といった動作で、それに口をつけた。