Sore/nante Fate
遠坂凛を背中に。
俺、衛宮士郎は全身青タイツと肉薄する。
これから始まる戦闘。
それは俺と遠坂の命をかけた戦いだ。
タイツから一瞬でも目を逸らしてはいけない。
圧倒的な恐怖、強烈な圧迫感。
殺気が俺の体を突き刺し蝕む。
言葉を交わす時間は無い。
初手で決めなければ――――死ぬ
「はあああああ!!」
素早い動きで間合いを詰める、手には先ほど強化した机。
前からは素早く精密な槍の嵐――その流れに無駄はないが…
「動きが止まって見えるぜ!」
いける。
圧倒的な存在感を感じさせる奴だったから警戒はした、
しかし所詮コスプレした変態、魔術師である俺に叶う事などあり得ない!
「終わりだ!」
回避はできない。反撃する時間も与えない。
強化で底上げした俺の身体能力。
それは常人には絶対に対処できない一撃を放つ。
「うぱああああああああああああああああああ!」
がーん! ばりばりばりーーー! ばしゃーーーん!
「ふん、ふん、ふんっ」
何度も何度も机をたたきつける。
「ふーっふーっふーっ悪は滅した…大丈夫か遠坂――――っ何!?何だこれは!」
それは校長の銅像だった、しかし今はもう見る影もない。
銅像はスクラップ校長へと姿を変えていた。
「変わり身の術!?まさか忍びの者――?
「いい加減衛宮くんは早く私たちの後ろに隠れてくれないかしら?」
俺の現実逃避は無粋な一言によって終わりを告げた。
「ばばば、ばかやろう、俺が奴を引き留めるから遠坂は逃げろ!」
「足、震えているわよ。」
「初めての殺し合いだからな、武者ぶるいだ。かっこいいだろ?」
「普通にかっこ悪いわよ!」
そんなストレートに言わなくても…
気がつくと、紅い男とタイツは思い出したかの用に戦闘を始めていた。
相変わらずタイツの殺気がねっとりと俺に絡みついてくる。
この状況で俺ができる事は――――。
「遠坂!逃げるぞ!!」好きだああああああ
とりあえず遠坂を安全な場所へ・・・
遠坂はきっと巻き込まれ属性を持っているんだ!
「ば、馬鹿、逃げるのは衛宮くんよ!私が時間を稼ぐから早く逃げ―――
「馬鹿やろう!!」(演技)
「え――?」
俺の豹変ぶりに驚いたのか、遠坂は呆然とその場に佇んでいる。
「お前、死ぬ気か?」
「ち、違う…私は――
「馬鹿野郎が!命を粗末にするんじゃねえ!!」(演技)
俺の激励に遠坂の体がビクッと震える。
「どのみち二人揃ってアレから逃げ切る事は出来ないから、遠坂一人犠牲にして生き延びて・・・・・・―――――
―――それで俺が満足するとでも思っているのかよ!!どうなんだ遠坂!!」
二人揃って無言
互い見つめ合い、挙動を探りある。
・・・・・・。
数秒程時間が達、遠坂が口を開く。
その声には決意が満ちていた。
「衛宮くん、ありがとう。あなたの気持ちは嬉しいわ。」
けど、と言葉は続く。
「私は冬木の管理者として、マスターとしてここに残らなければならないの。だから」
「マスター…だって?」
コクリと遠坂は頷く。
(これは混乱、錯乱しているのか――?マズイ…戦場では命取りになる。)
「意思は、硬いのか?」
「ええ」
(すまん遠坂、恨み言は後で聞く。)
俺は迷うことなく遠坂へと飛び込み抱きついた。や、やわらかい・・・
「へ―――?」
身を硬直させる前に腹部に拳を叩き込み、前かがみに崩れたところで、首筋を狙い打つ。
「あ―ぐっ!」
はぁ余り本気は見せたくなかったんだが、そうは言ってられないか。
遠坂を肩に担ぎ、自分の気配を完全に断つ。
完璧なまでに、己の存在を…一部の隙も残さない。
こうして俺は、無事校庭から逃げ切れた………………わけではない。
……………………。
…………
作品名:Sore/nante Fate 作家名:mo