機動戦士ガンダムRS 第3話 崩壊の大地
しかしキラは、そんなことはお構いなしにマン・マシーンに照準を合わせてアグニを撃とうとした。
しかし友軍機は、アグニの銃口を左手でつかむと下に下げた。
「おい、パイロット。
アグニでの攻撃をやめろ。
それは、ヘリオポリスに穴をあけるほどの破壊力を持っている。
すぐに攻撃をやめろ」
そんな高出力ビームがビームシールドで防がれているからである。
そのためそんなことを言われても実感がわかなかった。
「え?
でもマン・マシーンが」
そういってマン・マシーンを再び見ると撤退していった。
「もうマン・マシーンは、撤退した」
(先の攻撃が効いたのか)
キラは、少し得意げになっていた。
※
それは、アークエンジェルでも確認できた。
「敵マン・マシーン、離脱します」
ダリダ伍長の報告にラミアス艦長は、ひとまず安堵の息を漏らした。
「着陸して。
相対速度あわせて。
重力の発生に注意して」
アークエンジェルは、相対速度を合わせながらゆっくりヘリオポリスの地表に近づいていった。
※
ドゴス・ギアのマン・マシーンデッキでは、帰艦したユーピテルの補給作業があわただしく行われていた。
「第5プログラム班は、待機」
「インターフェイス、オンライン」
アイリス曹長は、ユーピテルのコックピット内で先の恐怖が頭から離れず硬直していた。
「・・・・・長」
「・・・・曹長」
「・・リス曹長」
「アイリス曹長」
アイリス曹長は、自分を呼ぶ怒声で我に返った。
すると開かれたコックピット前で整備員が立っていた。
「な、何?」
アイリス曹長は、まだ状況がわからずそれを言うのがいっぱいいっぱいだった。
整備員は、ため息をついた。
「何じゃありませんよ。
もう整備が始まってるんです。
いい加減コックピットから出て体を休めてください」
整備員は、あきれながらそういった。
「すみません」
アイリス曹長は、あわててコックピットから出ようとした。
そのときヘルメットを通して全通信が入った。
「ガンダムサイガー、帰艦。
専用整備員は、整備に当たれ」
このような体制なのは、ガンダムサイガーの構造や部品などがユーピテルとまったく異なっており専用のマニュアルが存在するからであった。
そのためガンダムサイガーの整備に熟知した専用整備員が必要となる。
彼らは、手際よくガンダムサイガーに取り付くと整備をはじめた。
アイリス曹長は、ガンダムサイガーのコックピットから出てきたサオトメを追った。
※
着陸したアークエンジェルにガンダム5機は、搬入されシグーハイマニューバとメビウス・ゼロもアークエンジェルに着艦しようとしていた。
ストライクガンダムのマニピュレーターにトールたちが乗っており彼らは、アークエンジェルの右舷カタパルトに搬入された後ストライクガンダムのマニピュレーターから降りた。
「ミゲル中尉」
するとラミアス艦長たちブリッジ要員が出迎えきた。
「ラミアス大尉。
ご無事でなりよりです」
ミゲル中尉は、敬礼して言った。
「あなたこそよく『G』を護ってくれたわね」
ラミアス大尉も敬礼して言った。
そのときストライクガンダムのコックピットが開きキラが出てきた。
キラを見たラミアス大尉たちは、目を疑った。
キラは、そんな視線を感じながらワイヤーで降りてきた。
「おいおい、民間人じゃないか。
あの坊主がガンダムサイガーを追っ払ったって言うのかよ」
コジロー・マードック曹長は、いまだ半信半疑だった。
キラが降りてくるとトールたちが駆け寄ってきた。
「ミゲル中尉、これは?」
ラミアス大尉は、ミゲル中尉に詳細を求めた。
しかしミゲル中尉は、どう答えていいかわからなかった。
「これは、驚いたな」
突然通路のおくから男性の声が聞こえて皆がそっちを見た。
するとパイロットスーツを着た男と仮面の男がいた。
「地球軍第7機動艦隊所属ラウ・ル・クルーゼ中佐だ」
「同じくムウ・ラ・フラガ大尉」
2人の男は敬礼して所属部隊、名前と階級を言った。
「第2宙域第5特務師団所属マリュー・ラミアス大尉です」
「同じくミゲル・アイマン中尉です」
「同じくナタル・バジルール少尉であります」
ラミアス大尉、ミゲル中尉とバジルール少尉も敬礼して所属部隊、名前と階級を言った。
「乗艦許可を出して欲しいのだが。
私たちが乗ってきた艦も沈められてさらに部下も失ってしまって。
この艦の責任者は?」
クルーゼ中佐が質問した。
もちろん責任者とは、艦長のことだった。
「自分です。
許可を出します」
ラミアス大尉が名乗り乗艦許可を出した。
「で、あれは?」
今度は、フラガ大尉がキラたちを見てミゲル中尉に質問した。
「見てのとおりの民間人の少年です。
コロニー軍襲撃の際未調整のままイージスで出撃したアスラン・ザラ中尉を援護するためにストライクに乗りました。
キラ・ヤマトといいます」
フラガ大尉は、何かを察した。
「先の戦闘でもユーピテルと互角の戦闘を行いさらにガンダムサイガーを撃退しました」
「あの死神を撃退した?」
ラミアス大尉たちは、動揺した。
「それは、違う。
あいつは、アグニを連射されるとヘリオポリスが破壊されると感じたため撤退しただけだ。
彼の力では、ない」
クルーゼ中佐は、キラの技量説を否定した。
「でもユーピテルと互角の格闘戦を行ったのは、事実だぜ」
クルーゼ中佐の冷たい言いようにフラガ大尉が反論した。
「敵パイロットの実戦経験が浅かったのだろう。
いくらマン・マシーンが高性能でもパイロットがそれを引き出せなければ意味が無い」
クルーゼ中佐は、冷酷に現実的に物事を言った。
しかしフラガ大尉は、それでも少し確かめたいことがあった。
そしてフラガ大尉は、キラに近づいた。
その後にラミアス大尉とバジルール少尉が続いた。
その後にミゲル中尉とノイマン曹長が続いた。
そしてフラガ大尉は、キラの前に立った。
「何ですか?」
キラの中は、不安でいっぱいだった。
「君、スーパーコーディネイターでしょ」
軍人たちは、驚いた。
ミゲル中尉は、俯いた。
「はい」
キラは、否定しなかった。
軍人たちは、その答えに今度はひそひそ話を始めた。
トールは、そんな軍人たちの態度が気に入らなかった。
※
ドゴス・ギアでは、直接白いガンダムと交戦したアイリス機から交戦記録が抽出されブリーフィングルームに映し出されていた。
マン・マシーンパイロットたちがそれを見ていた。
その模様を見ていたパイロット間では、動揺が隠せなかった。
「アイリス曹長の証言によればこの白いガンダムと赤いガンダムのほかに異なった運用目的のガンダムが少なくとも3機いることになる」
アイリス曹長は、サオトメの説明にうなずいた。
「しかも最終調整も終えてほかの3機もこれくらい動けると考えるとこのままほうっておくことは、決してできない。
捕獲できればいいがそれができないのであれば破壊する。
アーガマもどきもろともだ。
侮るなよ」
そういうとサオトメは、部下に敬礼した。
「はい」
作品名:機動戦士ガンダムRS 第3話 崩壊の大地 作家名:久世秀一