機動戦士ガンダムRS 第3話 崩壊の大地
これは、旧国際連合に先立ってコロニー連邦共和国が有視界接近戦闘を行わなくてはならなくなったことに起因していた。
ミノフスキー物理学を応用した兵器は、例外なく電波(マイクロ波〜超長波)と一部の可視光線と赤外線を察知できなくなる。
このため従来の電波による交信、レーダーやセンサーの多くが使用不能となり長距離誘導をなされるミサイルの誘導が不可能となってしまい有視界下における戦闘を余儀なくされることとなる。
よって西暦で起きレーダーがまだそれほど実用化されていない第二次世界大戦の巴戦などの航空戦術を採用しなければならなかった。
※
「コロニー全域に電波干渉。
Nジャマー、数値増大」
ダリダ伍長がディスプレイに映るニュートロンジャマーの数値を見てバジルール副艦長に報告した。
「何だと?」
バジルール副艦長は、動揺が隠せなかった。
「やっぱりこっちが出て行くまで待つ気は無いか、あの野郎」
その報告にフラガ大尉が立ち上がった。
「またヘリオポリス内に仕掛けてくるつもりですか?」
バジルール副艦長は、不安そうにフラガ大尉に質問した。
自業自得とは、言えバジルール副艦長は心を痛めた。
「サオトメのことだ。
コロニーへの損害は、最小限にとどめる戦いをする」
フラガ大尉は、サオトメのことをあまり知らないがコロニーごと敵を殲滅する戦いはしないことだけは知っていた。
※
ラミアス艦長は、通路でキラにもう一度ストライクガンダムに乗るように説得していた。
「お断りします。
僕たちをもうこれ以上戦争になんか巻き込まないでください」
しかしキラは、強く断り続けていた。
「キラ君」
ラミアス艦長は、わかっていたが少し悲しかった。
「あの人が言ったことは、正しいのかもしれない。
僕たちの外の世界では、戦争をしているだって。
でも僕らは、それが嫌で戦いが嫌で中立のここを選んだんです。
それを」
キラは、途中から悲しい表情になり最後には何を言いたいのか自分でも分からなくなってしまった。
「ラミアス艦長。
至急ブリッジへ」
そのとき艦内通信が入った。
「どうしたの?」
ラミアス艦長は、壁にある通信パネルでブリッジとの通信を開いた。
「マン・マシーンが来ます。
早くお戻りになって指揮を執ってください」
それを聞いたトールたちを恐怖が襲った。
「既にオロール少尉とマシュー少尉がジンに搭乗しミゲル中尉も予備のジンに搭乗しました。
『G』4機には、76mm重突撃機銃の装備作業を行っています」
バジルール副艦長が現状を説明した。
「解りました。
アークエンジェル発進。
総員第一戦闘配備。
フラガ大尉とクルーゼ中佐のモビルアーマーとモビルスーツは?」
「だめです。
2機とも出られません」
ラミアス艦長は、2人を期待したが2機とも出られる状況ではないと解ると落胆した。
「では、大尉と中佐にはCICをお願いします」
そこで通信が切れた。
「聞いての通りよ。
また戦闘になるわ」
ラミアス艦長がトールたちに振り返っていった。
「何とかこの危機を乗り切ってあなたたちをしかるべきところと連絡が取れるところであなたたちを適正に処置します。
でも死刑や監獄入りには、絶対にさせないから安心して」
ラミアス艦長の言葉にミリアリアは、トールの手を握った。
キラは、ラミアス艦長の言葉に怒りを感じた。
「卑怯だ、あなたは」
キラの言葉は、一見怒っているようには聞こえないが確実に怒りがあった。
「マン・マシーン相手にジンは、戦力にならない。
だからあの5機が必要だけど1機は、僕がOSを書き換えたために僕しか扱えって言いたいんでしょ?」
そこには、怒りとともに一種のあきらめも含まれていた。
※
アークエンジェルは、スラスターを吹かして周りにあった搬入できなかった補給物資と砂埃を飛ばしながら離陸した。
「ヘリオポリスからの脱出を最優先とする。
戦闘では、コロニーを傷つけないように留意せよ」
ラミアス艦長がブリッジ要員に指示を出した。
「そんな無茶な」
副操舵士として配属されていたがコロニー軍の攻撃により減少したクルーの穴を埋めるためにCICに異動したジャッキー伍長が無理な要求に愚痴った。
モビルスーツデッキでは、ストライクガンダムの発進準備が行われていた。
「3番コンテナを開け。
ソードストライカーパックを装備させろ」
マードック軍曹の命令で壁と天井が開いてシュベルトゲベール、追加バッテリー、マイダスメッサー、サーマルアキュムレータとパンツァーアイゼンが出てきてストライクガンダムに装備された。
「ソードストライカー。
剣か。
これならヘリオポリスを傷つけることも無いな」
キラは、少し安心した。
ブリッジでは、ジャッキー伍長が敵影を確認した。
「ヘリオポリスに接近する熱紋を確認。
ユーピテルです」
そこに光学映像も映った。
「やっぱりビーム兵器は、装備していないか。
ありがたい」
フラガ大尉は、少し安堵した。
「しかしアークエンジェルの装甲は、ラミネート装甲だ。
フェイズシフト装甲では、ない。
攻撃を受け続ければ撃沈もありうる」
クルーゼ中佐が状況を楽観視したフラガ大尉を叱った。
「モビルスーツ隊、出撃させろ。
コリントス、装填。
レーザー誘導、厳に」
バジルール副艦長が矢次に命令を出した。
「主砲、レーザー連動。
焦点、拡散」
ラミアス艦長の命令で艦首両舷のゴットフリートがにせり上がりマン・マシーン4機に向かって撃った。
しかしマン・マシーンには、命中しなかった。
※
サオトメは、敵が主砲を使ってくるのに気づいた。
「散開」
サオトメの命令で全機が散開したため命中しなかった。
「シグマン大尉とジャック少尉は、アーガマもどきを。
サウス中尉は、俺の援護を」
「了解」
サオトメは、通信を開いて命令した。
※
トールは、外が見られるモニターを探していた。
そして見つけた。
「おい、こっちのモニターから外が見られるぞ」
サイたちは、急いで声の方向に走っていった。
到着するとそこには、既に何人かの軍人がいた。
モニターには、マン・マシーン隊とモビルスーツ隊の戦闘が放送されていた。
※
ガンダムサイガーは、背部大型ビームサーベルを構えた。
「そら、墜ちろ」
ミゲル中尉は、76mm重突撃機銃でガンダムサイガーを攻撃したがまったく命中せずシャフトを支えているワイヤーに命中してしまった。
ワイヤーは、切断したまま宙を舞った。
さらにミゲル中尉は、一連謝した。
ガンダムサイガーは、さらによけたため地表に命中した。
※
サオトメは、ガンダムサイガーにムラマサブラスターを構えさせた。
先に攻撃してきたのは、ジンだった。
ジンは、76mm重突撃機銃でガンダムサイガーを攻撃したがサオトメは難なく回避した。
しかしそれによってシャフトを支えているワイヤーに命中してしまった。
ワイヤーは、切断したまま宙を舞った。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第3話 崩壊の大地 作家名:久世秀一