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SAO二次元創作【魔女と呼ばれた処刑者】1-1

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この歳の女の子が、ゲームのシステムなど理解出来るはずもない…。親もいないこの世界が心細いのであろう。そう思ったわたしは、女の子の手を取り感覚で軽く操りカーソルを表示させる。そこには不思議なカーソルがいくつもあったのだが…人のカーソルを見たのはこれが初めてだったわたしは、彼女の名前も見る事無く…。とにかく手早くトレード欄を開かせ、干し肉を押し付けた。

「確り食べるんだぞ…いいな」


わたしはそんな事を言って無言で無表情の女の子の頭を撫でて立ち上がり、黒鉄宮の碑がある中央を後にしようと外に出た…だが、わたしの一連の行動は既に周囲へと見られていた…。



広場へ出た私は、13や12位の沢山の子供達からの視線に襲われたのだ…過去、外資系企業で働く父の下積み時代、ひょんな事から戦地へ赴いた父は、その非難地で私に似ていたという女の子にあめ玉をあげたのだが、その次の瞬間…それを見ていた子供達が父を取り囲み、財布の中身を全損させるという事態に発展したという話を思い出し、苦笑した。

「…成る程、子もまたしかり…か」

私は諦めて子供達の人数を確認し、アイテムストレージ内にある残りの狼の干し肉のストックを確認する。


「十一人だから…一人5つか…」

わたしがそう言いだすと、子供達はキラキラと瞳を輝かせて我先にと殺到する。

「こら!全員分あるから!並べ!並ばないか!!」


私がそう声を荒げると、子供達は素直に一列に並び、わたしはアイテムトレード欄を開いて一人一人に干し肉を渡して行った。干し肉がよっぽど嬉しかったのか…子供達はこぞってがっついては子供らしい笑顔を浮かべだす。わたしは生まれて今までヒトのために等と言って良い事をした事がない…だから、こんな笑顔が見れるのならば…たまに戻って来て食料を提供するのも良いかもしれない…。そう自己満足に浸っていた矢先だった。

「姉ちゃん!僕に戦い方を教えてくれよ!」


本来なら非マナープレイヤーの台詞である、しかしそんな事を言って来たのは最後尾に並んでいた少年だった。歳は12歳位で、黒髪をツンツンに尖らせて、子供達の中でも一際わんぱくそうで、実に私好みの愛らしい少年だった。

「…」

一瞬、わたしはどうしたものか…と顎に手を置き、少年の愛らしい顔を見つめる。

カーソルを合わせると…少年の頭の上に一本のライフバーが表示されるだけで、名前とレベルは分からない…これはカーディナルシステムが作り出した名前やレベルを利用した不正行為をプロテクトする機能であり、名前やレベルを確認するには自己申告かパーティーを組む、若しくはデュエルを申し込むという手段しか存在しない。

「僕、タクトっていいます!!…僕も皆の為に最前線で戦いたいんです!!お願いします!」

少年は歳相応な真っ直ぐな姿勢と熱意で必死に私に訴えてきた。しかし…わたしは真っ直ぐな姿勢と熱意は大嫌いだ…何故ならば無意味な夢や理想を語り、それに向かって真っ直ぐな姿勢と熱意を貫こうとしていた連中は皆、裏で父のご機嫌を取りたいがためにそうしている連中ばかりだったからだ…。それならMMOトゥデイの管理人が立ち上げた《軍》という組織に志願すればいい。わたしは率直にそう思った。


「なら軍に志願すればいい、わたしは低レベルの…ましてや子供の相手をしている暇なんてない」


私は自分でも驚く程に威圧感たっぷりに返答した、しかし少年は歯を食い縛るだけで真っ直ぐに見つめる瞳の輝きを曇らせようとはしなかった。

「…足手まといは御免だ…もう少しましな装備を身に付けたら声を掛けてくれ」

そうであってもわたしは首を横に振るだろう、そこまではいわずに、タクトの頭をポンポンと叩いてから立ち上がり、埃も付かないのに埃を払う仕草をしてから始まりの街の出口を目指した。

「……」

その帰り道の足取りは重く…、一歩一歩足を地面に踏みしめる毎に何かに足を引かれるような感覚に捕われた。

今一度後ろを確認する…《隠れ身(ハイディング)》スキルもろくに上げていない健気な少年が、バレるまいと露天の影に身を隠す…。

「やれやれ…」


わたしは盛大なため息を洩らし、フィールドに出てしまえば諦めるだろう…とフィールドに出た。

転移結晶を使ってしまっても良かったのだが、転移結晶は高値で取引されるアイテムが故…子供に追われる程度で使うのは流石に勿体なさすぎる…。

だからわたしは気にせず歩きで帰る事にした…空は既に暗くなりつつあり、外には夜専用のアクティブモンスターが徘徊する。こんな時間に外に出るのは本来なら自殺行為に他ならない…だがわたしのレベルは23…第1層の時点でこれ程にレベルを上げたプレイヤーがどれ程いるのだろうか?と己の愚直さを笑った。


そうしている間に大きな門下をくぐり抜け、そのままフィールドに出る…案の定、外にはアクティブなアンデット型モンスターが溢れている。

「……」

しかしアクティブモンスターでも力の差位は理解出来るようだ…23にもなった私を襲おう等と考える不届きなモンスターはこのフィールドには存在しない…そう思ったがつかの間、目の前の地面から手が伸び、地面に触れるなりはい上がって現れた大量の人型のアクティブモンスター《ゾンビ》が臭いが伝わって来そうな醜い外見をわたしの顔全に晒しだした。

ボコッボコッと、次々に這い出るゾンビ達の数は数十に及ぶ、しかしその固体一つのレベルは5…単なるゴミに等しい雑魚だ、アクティブモンスターであっても私を襲う事はない…わたしは平然とゾンビを無視し、脇を擦り抜けてゆく。


「な!!なんだこいつ!?」

同時に私の耳を貫く聞き覚えのある声、驚きと共に振り向いた私が見たのは、沢山のゾンビに囲まれて退路を断たれ、死ぬかもしれないという極限的状態でパニックに陥り、剣を振り回しながらも決して泣くまいと表情を力ませるタクトの姿だった。

「っ……」

あの少年は、愚直にわたしの後を付いてきたのだ…子供ならではの好奇心で…フィールドに出たのだ、死ぬことすら省みず…そうしている間にもタクトは背後からゾンビに殴り倒され、緑だったゲージが一気に減少していく。


「馬鹿が…」

子供を見捨てるなんて冷たい事は…私には出来なかった。

「はああああ!!!」

わたしは反転するなり背中の槍を回して右手に持ち…持ち前の俊敏値で瞬く間に目の前に立つゾンビの背中に槍を突き立てるなり筋力補正にものを言わせてゾンビの身体を持ち上げて投げ飛ばし、退路を確保するや中央で蛇に睨まれて動かない蛙のようなタクトの襟首を掴んで後ろに引き倒すと、頭上で槍を振り回すことで、槍系範囲ソードスキル【トルネードパイル】を発動した。

私を中心に凄まじい竜巻が立ち上がり、周囲に撒き散らされた衝撃破がゾンビの群れを纏めて爆散させる。ゾンビ達は愚かにも突然の乱入者に動きを止めてしまいその隙には私の硬直時間はなくなっている、尚も湧き出る大量のゾンビを、わたしは片っ端から槍で貫き、手足で蹴飛ばして、私なりに手厚く葬ってやった。


「お…お姉ちゃん…」

一段落ついた後、タクトは母に怒られる前の子供のようなそわそわした態度をみせる。