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SAO二次元創作【魔女と呼ばれた処刑者】1-1

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「馬鹿かお前は!!!死にたいのか!!?」

私が真剣に怒鳴れば、タクトはビクリと肩を打ち上げ私を見上げたまま、円らで大きな瞳から涙が滲んでくる。


「だって…だって僕…お母さんに…お母さんに会いたいんだもおおおおん!!」


タクトはそう心情を吐露して声を挙げて泣き出してしまった。お母さんに会いたい…思って見ればこの歳の子供は皆、母が恋しいのは当たり前である。それでいて私は…子供を泣かす行為に耐性が一切ないのだ。そうなった時点で、思い切りひっぱたいて始まりの街にたたき帰そうという思考を頭から抜き去ってしまっていた。


それと同時にこの少年は、まだ親が恋しい世代だ…心細いに違いは無い、そう悟ったわたしは、ならばせめて…この世界では母親の変わりでいてあげよう…と、わたしは覚悟を決め、決めた時には泣きじゃくる少年を抱き締めていた。


「お姉ちゃん?…」

タクトは、キョトンとわたしの行為を見ていた…今頃彼の目の前には私を黒鉄宮の地下牢獄に幽閉させるハラスメントなるタグが立ち上がっているだろう、だがわたしは不器用に笑って見せる。


「ついてくるなら泣き言は言うなよ…足手纏いだと感じたら即座に始まりの町へ叩き返す…わかったか?」

わたしは目を見ながらそう言えば、タクトの表情が明らかにパアッと明るくなり愛くるしい笑顔で大きく頷いた。

「うん!うん!わかったよ!!お姉ちゃん!」

その笑顔のタクトは、外見や性格に似合わず可愛いものが大好きな私の心を大きく鷲掴みにした。


「そ!それと…そのお姉ちゃんと言うのは止めてくれ…」


発作を起こしたような私は、いけない事をしてしまいたくなる…という出かけた言葉を生唾と共に飲み込む。

「じゃあ!先生っ!」

タクトはニコニコと笑いながら、私を慕うようにそう言った途端、恐らくわたしはとんでもないにやけ顔をしていただろう、涎も垂らしていたかもしれない。…夜だったのが幸運だったかな…。



「よし、ならば私の村まで歩く…出てくるモンスターのターゲットは全てわたしが取るから…仕留めろ」

わたしはカーソルを操って今まで一度も使われなかったパーティー結成画面を操り、タクトは頷きながら同意ボタンを押した。


こうして…わたしと小さな弟子との日々が始まった…タクトは飲み込みがよく、彼のレベルはうなぎ登りにあがって行った。それでもわたしは夜だけ最前線に向かいハイスピードのレベリングを続け、彼とは常に20レベル以上の差を付けるようにしている、それは何か不足の事態があっても、タクトの事を守れるようにする為だった。


そうして出会ってから一年のある日、そんな私達の幸せの日々が硝子細工のように砕け散る事件が起きた…。

その日は37層の迷宮区でドロップする装備を売るお金の稼ぎがてらに、タクトのレベリングを行った帰りの出来事である…彼はこの時47にまでレベルを上昇させていたのだが…。わたしは勿体をつけるのが嫌いだ…だから言おう、この日…タクトは永久にログアウトする事になる…そして、わたしがいくら悔やんでも悔やみ切れず、忘れる事の出来ない日ともなったのだ。

「先生、今日はがっぽり稼ぎましたね〜」

すっかり私のペースに慣れたタクトは、その小さく愛らしい容姿を、軽装で固めたダメージディーラーてあるわたしと連携しやすい様に、と重装備のタンカー使用に固め、わたしと似た武器がいい…と我儘で上げだして、その小さな身体の倍はありそうな重槍と、つい先日モンスターからドロップしたレアなタワーシールドを背中に担いで、わたしの後ろをちまちまとした小走りでついてくる。


「そうだな、…今日の夕食は期待してるぞ?」


タクトは最近、忙しい先生の食べる物はいいもので無くては!と、料理のスキルを上げだした…現在私たちが住居にしている第32層の街の宿屋には、料理スキル上げに使え、尚且つ無料で使えるキッチンがある。わたしは毎日タクトの作る料理を食べる事が、ハイスピードでありながらも過酷なレベリングへ行く私の背中を押してくれる唯一の時間であった。


「任せてよ先生!、僕!頑張るからねっ!」


タクトはニコニコと太陽のような笑顔で笑いながら、レシピに思考を凝らしだした…。小さなシェフの邪魔は悪い…わたしはそう考えて口をつぐみ、迷宮区の帰路を歩み続けた。現在この時点でのわたしのレベルは62、本来なら最前線で戦う攻略組と同じ位ではあるのだが、わたしは攻略に興味はなかった…何故なら、タクトとこうして送る毎日の生活にとても充実していたからだ…。こんな毎日がずっと続けばいい…わたしはレシピを考え付いたらしいタクトを横目に見ながら、そう思い、ある壁を見つけて止まった。


「ん…」

わたしが見た壁にはカーソルが現れ、それが隠し扉である事がすぐに理解出来る。


「先生?」

突然足を止めた私をタクトが怪訝な目で見上げた。

「これは恐らく…アラームトラップの部屋だ」


それを聞いたタクトは顔を顰める。

「え…良くパーティーが全滅するっていうやつですよね?…」

私は頷いて壁に触れると、壁が開いて奥に宝箱が出現する。

「タクト、先に安全エリアで待っていてくれ」

わたしがそう言いだすと、タクトは明らかな心配を顔に出す。

「わたしの心配なら不要だ…それにこんな扉があっては…欲に溺れて入った馬鹿なパーティーが全滅しかねないのだから…今の内に潰しておく必要があるだろ?」

途端、タクトは母と別れる時のような悲しげな顔だった。


「う…うん…そうだよね…じゃあ先生!早く片付けちゃってくださいね?」

「ああ」

タクトは小さな体を翻し、迷宮区の闇に向かっていった。わたしはタクトの姿が角に消えるまで見送ると、トラップルームへと足を踏み入れた…。無論、先程までの私の言葉は真っ赤な嘘である…このダンジョンにはトラップルームが無数に存在し、しかも一時間おきに再リキャストされるのだ…しかも、中で出現するモンスターは5レベル程高く手強いモンスターが多い…それでも入る理由はただ一つ…このダンジョンのトラップルームのモンスターが落とすという換金アイテムを手に入れる為だ…勿論、装備を整える為ではない…わたしとタクトのホームを買うためだ。近頃の狩りのお陰で大分懐が暖まって来ている。多分、今日このトラップルームをクリアすれば、わたしの買おうとしているフラワーガーデンと言われるフローリアにホームを建てる事が出来るであろう。

わたしは宝箱を開ける事無く思い切り蹴飛ばし、激しくアラームが鳴り響くのを聞いた…同時に入り口が閉鎖され、転移無効の赤い灯りが四方を照らす…そして大量のモンスターが現れ周囲を取り囲む、だれもが顔を青ざめさせるであろうそんな中で…わたしは鬼神のように笑っていた。


「はあああああ!!」


そして、わたしによる一方的な虐殺は30分も続き、わたしの体力ゲージが黄色に差し掛かった所で、モンスターは狩り尽くさた。わたしの視界にはアイテムストレージに入り切らなかったアイテムが生め尽くしている。

「タクトを外で待たしておくべきだったな…」