we're wasting time!
その通りは駅から放射状に伸びるうちの目抜き通りの1本だ。ガス灯が均等な間隔で並び、舗装された道路の両側にはとりどりの商店が建ち並ぶ。
大佐が狙撃された時間帯は真っ昼間だ。その時間であればまだ人通りもそれなりにいただろうに。
・・・それとも、目撃者がいた方が都合が良かったのか。
まだ早い時間帯だったのでほとんどの殆どの店は閉まっていたが、途中にある広場ではちょうどまだ朝市がやっていた。
「おや兄さん、今日は非番かい?」
顔馴染みの女性が気さくに声を掛けてくる。何か買っていっておくれよ、と声を掛けられるがままに適当に目に付いたプラムを詰めて貰った。故郷の山手の方でよくなっていた物を食べて怒られたなぁなんて微妙に感傷に浸っていれば、ワゴンのおかみさんが釣りを手渡しがてら「で、大佐さんは大丈夫なのかい?」と世間話の延長のような調子で聞いてきた。予想外のネタに至極まぬけな表情をしたんじゃなかろうか。
「へ?」
「いや、ほら。昨日襲撃にあって怪我したって聞いたからさ」
「怪我・・・って、聞いた?誰から?」
新聞じゃなくて?と聞けば、ハボックの持っているタブロイドに気付いたのか、眉を寄せておっさんじゃあるまいしあたしはそんなの読まないよ、と返された。
「さぁ、判らないよ。あたしも皆が話してた事の聞き伝えだからねぇ。…や、そんな事はどうでもいいんだよ。怪我は軽いのかい?」
「や、本人いたってピンピンしてるけど…つか、その話いつ聞いたの?」
「あたしは朝市の準備の時だね」
「ちょ、ちょっと悪いんだけどさ、誰から聞いたか教えてくれない?」
作品名:we're wasting time! 作家名:みとなんこ@紺