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みとなんこ@紺
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we're wasting time!

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「・・・ってことで。だいぶ噂は街中に広まってるみたいですよ」
「なんだそれは…」
 ハボックがタブロイドとプラムを片手に司令部に帰ってきての第一声に、上官と副官は流石に目を瞬かせた。曰く、
「軽傷から重体・死亡までよりどりみどりでしたよ」
 何の事だと思えば、街で今囁かれている例のタブロイドをにぎわしているアレの事だ。
「何故もうそんなに広まってるんだ…」
「広場のおばちゃんたちは今朝のコレとか噂で聞いたって言ってるんですが、正しい出所までは追えずです」
「それだけ不特定多数に伝わってるのなら、正確なところは難しいな。ご苦労だった」
「いえ。…あと、それよりちょっと気になる事が」
「何だ」
「襲撃云々はまぁホントだから良いとして、今日の噂話してる人の中に、昨日ほんとに銃声みたいなの聞いた気がするって言う人が混じってるんですよ」
「銃声を?」
 ホークアイの問い掛けに、ハボックは一つ頷いた。
「ええ。さっきブレダんとこ寄ってきたんですけど、別に昨日そんな通報受けてもいないし、巡回中に聞いたって話もないそうです」
「銃声を聞いたという時間は?」
「これも証言はわりと揃ってて、恐らく大佐が狙撃された時間の後、21時くらいだと」
「・・・3時間か。随分開きがあるな」
「そう、ですね」
 それが確かに銃声で、その音を聞いたという証言が正しいのなら、あの通りで2度、銃が使われた事になる。
 しかし21時くらいには現場の検証だなんだとあの付近に配置した憲兵が朝まで巡回だなんだと目を光らせていたのだから、もし銃声がしたならば何らかのリアクションがあり、それはこちらにも伝わったはずだ。
 それ以前に、狙撃に使われるライフルにはサイレンサー付きだった。そもそも銃声は響かないはずなのだ。
「・・・ハボック、その銃声を聞いた住人の住所は確認したか?」
「話半分の人もいるんで全部じゃないですけど、しっかりしてそうな所だけ、だいたいは」
「地図を」
 市内の拡大図にはそれぞれ狙撃を受けた現場と、跳弾の角度からして恐らくここからだろうとあたりを付けたビルがチェックされている。
 それからハボックの仕入れてきただいたいの位置を。
「…近いですね」
「この近辺の聞き込みと空き部屋の捜索を。このブロックだけで構わん」
「了解です」
「大佐、中佐からお聞きしたライターは、おそらく両方白です。ただ、こちらにも一つ気になる事が」
「気になる事?」
「彼はその話を軍が箝口令を引いてるから本当だと言ってその話を聞いたそうなんですが、その話を吹き込んできた男が特定できませんでした」
「いつ聞いたと言っている?」
「昨夜の酒場のカウンターで隣り合った男だそうです。教えられた通りの方へ行けば憲兵や軍が警戒中だったので、これは本当かもしれないと」
「支局へ舞い戻って慌てて一面を差し替えたというわけか。たいしたネタ根性だが、もう少し考えた方がいいな」
「そうですね」
「箝口令まで出ているような事、事件の起こった場所まで知ってるとなれば、普通犯人かそのお仲間の可能性が高いと思うが…」
 まぁ知らぬままの方が幸せなこともある。今更わざわざ教えてやることもないだろうが、何かに本格的に巻き込まれる前にさっさと気付いて欲しいものだった。
「・・・でもやっぱこれおかしくないですかね」
 いつの間にか何やら熱心にタブロイドを読んでいたハボックが呟く。
「『夜の帳を切り裂く凶弾!』・・・またずいぶんと大袈裟だな」
「ちなみにこのタブロイドでは大佐、ちゃんと撃たれて瀕死の重傷負って今頃病院で手術受けてる事になってますんで」
「…むしろこの表現では死んでないか?そのうち勝手に葬式も出されそうな勢いだな」
「去年は誌面で結婚してましたからね」
 途端、何か嫌な事を思い出したのか、表情が歪む。
「ああ、これ、あの時と同じ新聞なのか…」
「そろそろ訴えても勝てるんじゃないですか?」
「だから何が問題なの?」
 一度脱線させると何処までも戻ってこないのを、無理矢理軌道修正させる。副官の声に篭もった険に慌ててハボックはいや大したことはないんですけれども!と慌てて続けた。
「こいつに情報流した奴は十中八九狙撃した側の関係者でしょう? ホントに大佐仕留めたいんだったら、こんな大騒ぎになられる方がまずいんじゃないんですかね」
「騒ぎを起こす事自体が目的だったということ?」
「本当に大佐が目的だったのか、それとも何か他に目的があったのかはしならく様子を見てみないとわかりませんけど・・・何かもう最初っから撃っちゃうならもうちょっとやり方ってもんがあったと思うんですよね」
「私を狙って得するというか、安心する連中はいくらでもいるだろうが、どうせやるならもっと派手にやるだろうな。その方が周りにアピールも出来ることだし」
 まぁ確かに毎日のようにラブレターフロムテロリスト、みたいな感じの生活だが、慣れすぎではないだろうか。昨日狙撃されたっていうこと、忘れているのかもしれない。
 そうだよな、いつももっと腕のいい人に狙われていたりするから、そういうのに慣れてるのかも。
「ハボック」
「は、ハイイィ!?」
「お前、自分が顔に出る方だといい加減学習した方がいいと思うぞ」
「え、ちょ、いや別にそんな何も…って発火布出さないでください!前髪もタバコもダメですってか今日これしか吸っちゃダメって彼女が、ああぁぁ!!」
 言い終わる前に問答無用でタバコを灰にされた。
 しおしおと萎むハボックを余所に、何事かを考えていたホークアイが視線をあげる。
「・・・大佐。そういえば今週の視察ですが、ラナールの製薬工場の予定だったんですが、本日先方より、器機の不具合の修理ということで日付の変更の申し出がありました」
「・・・横流しのあそこか。このタイミングで?」
「何か噛んでますかね」
「さぁな。どう関係があるかないか繋がりはわからないが、調べてみる価値はありそうだが」
「ま、取りあえずまた来られても困りますし、しばらく護衛について回るんで逃げんでくださいよ」
「………。」
「……何でそこで目逸らすんですか」
「別に」



作品名:we're wasting time! 作家名:みとなんこ@紺