機動戦士ガンダムRS 第4話 サイレントラン
ドゴス・ギアのブリッジでは、サオトメが戦闘予定宙域の地図を見ながら敵がどう動くか作戦を練っていた。
「この陣形では、敵は手も足も出まい」
ブライアン艦長は、サオトメの見事な作戦を賞賛していた。
「いや、敵はこちらの思いもしない策でこの状況を打破してくるはずだ」
サオトメは、戦闘予定宙域をさらにリアルCG画像に切り替え立体的に見た。
そして味方艦と敵艦の間にデブリがあるのに気づいた。
「そうか。
そういう手があったか」
サオトメは、1人納得していたがブライアン艦長は何のことかさっぱり分からなかった。
※
アークエンジェルでは、η艦隊を発見していた。
「大型の熱量を感知。
戦艦のエンジンと思われます。
距離、200。
イエロー3−3−1−7。
マーク0−2チャーリー
針路、0シフト0」
ロメロ伍長が敵艦の位置を報告した。
「横か。
同方向へ向かっている」
フラガ大尉が敵の針路を言った。
「気づかれたの?」
ラミアス艦長は、動揺していた。
「しかしだいぶ遠いです」
だがバジルール副艦長は、冷静だった。
「目標は、本艦を追い抜きます。
艦を特定。
ロンバルディア級です」
ロメロ伍長が敵艦の正体を報告した。
「クソ。
先回りしてこっちの頭を抑えるつもりだぞ」
フラガ大尉は、サオトメの策を言った。
「アレキサンドリア級とドゴス・ギア級の位置は?」
バジルール副艦長がロメロ伍長に他の敵艦の位置を聞いた。
「待ってください」
ロメロ伍長も他の敵艦を探していた。
「本艦の後方300に進行する熱源。
いつの間に」
ブリッジにいた皆が戦慄を感じた。
「このままでは、いずれアレキサンドリア級とドゴス・ギア級に追いつかれるか逃げようとエンジンを使えばあっという間にロンバルディア級が挺進してくるぞ」
フラガ大尉が手も足も出ない状況だと言った。
「おい。
3隻のデータと宙域地図をこっちに出してくれ」
フラガ大尉が敵と宙域データを要求した。
「何か策が」
バジルール副艦長が淡い期待を抱いた。
「それは、これから考えるんだ」
フラガ大尉がバジルール副艦長に振り返って言った。
※
「敵影補足。
敵影補足。
総員第一戦闘配備。
軍籍にあるものは、直ちに持ち場に着け」
オペレーターのロメロ・パル軍曹が艦内放送で戦闘になると告げた。
※
「ベッドに入ったばっかだったのに」
愚痴りながらダリダ伍長がブリッジに向かっていった。
※
食堂に集まっていた避難民は、その放送におびえていた。
「キラ・ヤマトは、ブリッジへ」
キラを呼ぶ放送にミリアリアがはっとなった。
「キラは、どうするんだろう」
ミリアリアは、自分の心配よりキラの心配をした。
「あいつが戦ってくれないとかなり困った事態になるんだろうな」
サイは、キラが戦わなかった場合を考えていった。
「ねえ、トール。
私たちだけこんなところでいつもキラに頼って助けてもらってばっかりじゃない」
「『できるだけの力を持っているならできることをやれ』か」
トールは、フラガ大尉の言葉を思い出していた。
そしてある決意をもとにサイとカズイを見た。
2人ともうなずいた。
※
「艦長、ヘリオポリスで拘束した民間人の学生たちが艦長に話があると」
ダリダ伍長がラミアス艦長に報告した。
「今は、取り込み中だ。
文句なら後で聞いてやる。
こっちは、今忙しいんだ。
おとなしくしてろといってやれ」
作戦を練っていたラミアス艦長の代わりにバジルール少尉が答えた。
「いえ、それが自分たちも艦の手伝いをしたいと言ってきているのですか」
その言葉にラミアス艦長が驚いた。
※
「キラ」
キラがブリッジに向かっている最中に軍服に着替えたトールたちに会った。
「トール。
皆」
「よう、キラ」
「どうしたの、その格好」
キラは、皆が地球軍の軍服を着ているのが不思議だった。
「僕たちも艦の仕事を手伝おうかと思って。
人手不足なんだろ」
「ブリッジに入るなら軍服を着ろってさ」
サイとカズイがここに至る経緯を答えた。
「軍服は、地球軍のほうがかっこよかったから少しあこがれてたんだ」
トールが地球軍の軍服にあこがれていたことを明かした。
「なら正式に地球軍に入隊するか?」
後ろにいたダリダ伍長がトールを誘った。
「それは、遠慮します」
トールは、即効で断った。
「お前にばかり戦わせて守ってもらってばかりじゃな」
「こういう状況なんだもの。
私たちもできることをできることをしたい」
キラは、トールとミリアリアの言葉に励まされた。
「ほら行け」
ダリダ伍長がこのままでは、ずっと立ち話をしてしまうと思いトールたちを押しブリッジのほうに向かわせた。
「それじゃ後でね」
ミリアリアが去り際にキラに言った。
「ああ、お前もまた出撃するなら今度はパイロットスーツを着ろよ」
ダリダ伍長がキラに忠告した。
※
ロンバルディアからアルテミスが見えた。
「あれがアルテミスか。
既に傘を展開中か」
ロンバルディアの艦長のグラハム・カインズ少佐が敵情を言った。
「しかし小僧の言うことは、本当に正しいのか。
敵の新造艦をついに発見できなかったが」
グラハム艦長は、サオトメの考えに半信半疑だった。
「ドゴス・ギアから通信です。
『180°回頭し相対速度をアルテミスに合わせ微速前進せよ』とのことです」
通信士のアディン・ハーマン軍曹が報告した。
「180°回頭。
相対速度をアルテミスに合わせ微速後進」
グラハム艦長は、気が進まないが命令なので仕方なく部下に命令した。
※
ドゴス・ギアでは、サオトメの出した敵の予想作戦にブライアン艦長があきれていた。
「サオトメ、それは作戦ではなく運任せだぞ」
ブライアン艦長は、素直に感想を言った。
「自分たちの母艦を囮に別働隊が敵母艦を攻撃する。
確かに運任せですがこれ以外策は、無かったんです」
サオトメの導き出した答えは、肉を切らせて骨を断つ作戦だった。
「まあ予想が外れても直掩部隊は、いたほうがいいですから」
このためドゴス・ギアの部隊が攻撃に参加しアレキサンドリアの部隊は、直掩部隊として待機している。
※
アークエンジェルのブリーフィングルームでは、キラがパイロットスーツに着替え首のチャックを締めた。
「ほう。
やっとやる気になったってことか、その格好は」
キラが声のしたほうを見るとブリーフィングルームにフラガ大尉が入ってきた。
「大尉が言ったんでしょ。
あの4機だけじゃ本来の力が出ない。
ストライクが加わらないと意味が無いって。
戦いたいわけじゃないけど僕もこの船を護りたい。
皆が乗っているんですから」
キラは、仲間を護る為にストライクガンダムに乗る決意をした。
「俺たちだって同じさ。
意味も無く戦いたがるやつなんかそうは、いないさ。
戦わなくちゃ護れないから戦うんだ」
キラは、うなずいた。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第4話 サイレントラン 作家名:久世秀一