神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~ 第1~9話
二日後、まずはマルチスキャナがスーパーMRIとして納入された。
「へーこれが月村重工製の新型機ねぇ」(安田
「ええ、MRIとしてはこれまでの10倍の解像度を誇り、
他にCT、超精密デジタルレントゲン、超高精度エコーなどの機能も搭載しています」(皇
「所で古い機械は売っちゃったけど、部屋はどうするの?CT室が空くけど」(安田
「あそこには新しいシステムを入れる予定です、今度の医療機器博覧会が終わり次第になりますが」(皇
そして、その後ヴァルハラに3D電子カルテとレーベンが導入されていった。
手術から七日目、なのはが目覚める予定日だったが一向に目覚める気配はない。
手術直後殆ど血の気が無く、とても生きているとは思えないほど冷たかった体も、今は暖かくなり血色もだいぶ良くなった。
でも、目覚める気配はまだ無い。
そんななのはを前にハラオウン家一同、はやて、ヴォルケンリッター3人、
高町家、すずか、アリサ、忍、皇が集まっていた。
「でも何であれだけの科学技術が発達していながら魔法まであるのに医術が進歩していないんだ?」
皇が尋ねる。
「それは、医療魔法に限界があるからなんです」
「医療魔法の限界?」
シャマルは説明する。
血管の吻合を伴わない程度の切り傷であれば、どんなに大きい傷でも
回復魔法で充分に直せるのだという。
骨折も骨を接いでおいて回復魔法で治るのだそうだ。
必要時間は1時間程度で充分だという。後は火傷にも回復魔法。
でもその程度しかできないのだそうだ。
「人間の体の中は一人一人違うの、厳密に言えばの話だけど」
そう、一人一人血管の位置や内臓の位置が微妙に違う。
場合によっては内臓が左右逆な人もいる。
だから、そんな一人一人に合わせたきめ細やかな魔法なんて組むことは出来ない。
しかも、病気やら怪我なんて物は千差万別、魔法はそこまで器用ではないのだ。
そもそも魔法とは、その人が持つ魔力エネルギーをデバイスという変換器とプログラムの力を借りていろんな物理現象を起こしているに過ぎない。
回復魔法だって実際の所細胞の分裂を促進させて傷の治りを早くしているだけのことだ。
それ以上のことは出来ないのである。
回復魔法が追いつかないような怪我では、もうどうしようもないのだ。
今回のような場合、移植医療を手がけるような医師なら何とかなったかも知れないが、
そこまでの医者は殆ど開業医になってしまい、地上本部にはいないのだという。
魔法に頼り切ったミッドチルダでは、あまり腕の良い医者自体いない。
だからあの医師達はなのはを見捨てたのだ。
「生体ポッドがあるじゃないか?」
「ヴィータちゃん、あれはね……」
生体ポッドは、使用目的が厳密には違う物だ。
生体ポッドはやはり手術後の治療に使う物で大きな怪我を直接治してくれる訳ではない。しかも怪我の治り自体遅い。
生体ポッドは手術後や大きな火傷などの治療に使われる物で、実際の所治るスピード自体は遅い。
生体ポッドの中では体温を下げ、ゆっくりとしたペースで体に傷が残らないよう回復させることを目的としていたり、大きな怪我や病気の延命装置でしかないのだ。
「だから私は北見先生や安田先生の様な技術が欲しい!
どんな怪我でもどんな病気でも必ず治せるそんな医者に少しでも速くなりたい!
私だけの力ではなのはちゃんを助けてあげることは出来なかった……
目の前で消えかけている命を救うことさえ出来ないなんてそんな思いはもうしたくない!」
涙を浮かべて力説する彼女の姿はとても一途で可愛らしかった。
その日、夕方遅くまで待った物のなのはが目覚めることはなかった。
「今日は俺が残るよ、昨日は父さんだったし」
恭也が残り、全員を帰らせた。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~ 第1~9話 作家名:酔仙