神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~ 第1~9話
一方管理局
ここにまだ年を越せそうにない人物が居た。
レティ提督である。
「レティ提督、禁止されている管理外世界への技術供与をしたというのは本当かね?」
「申し訳ありません、ですがあの高町なのはを救う為であり、高町家とのいざこざだけは避けたいとの政治的配慮から供与に踏み切らざるを得なかったのです」
レティ提督は管理局法に違反してオーバーテクノロジーを供与した罪に問われていた。
そして、査問委員会にかけられていたのである。
「そんな死にかけの魔導師など救ってどうなる?もう再起不能なのだろう?」
「あなた方には血も涙もないのですか?子を持つ親ではないのですか?」
「だが罪は罪だ、それなりの処分をせねばな」
「そうですか、ではこの映像をご覧下さい」
そこに映し出されたのは、あの時に記録された癒着の証拠映像だった。
「これは、ヴィータ一等空士から事情聴取した時提出された記録映像です。
事情聴取の際、高町士郎氏が同席され映像を確認しています」
査問委員会に緊張が走る。
(アリサさん、今こそあなたの仕込みを使わせて頂くわ)
「いいこと、もし何かあったら高町のおじさまの名前を使いなさい!
それだけで管理局は震え上がるから、私がこの1年半掛けて仕込んだ事を今こそ使う時よ!」
アリサはレティにそう言い放っていた。
「えっ?なのはの強さの秘密ですか?知ってますよ、なのはは伝説の戦闘民族サムライの出ですから。
サムライって言うのは97番世界で伝説にまで成っている戦闘民族で、とにかく強いんです。
なのははその一族の中では一番弱いんです、なのはのお兄さんなんかあの100倍は強いから」
アリサはなのは達に会う為に管理局へ遊びに来ると事有る事にそう言う話をしていた。
加えて高町恭也との模擬戦の映像、高町なのはの子供離れした戦闘センスと巨大な魔力、信じるに足る要素はいくらでもあった。
小さな子供の言うことを大人達は素直に信じてしまった。
こうして管理局内にサムライ伝説がじわじわと浸透していった。
(フッ、今に見てなさいよ、私が大人になったその時は骨の髄までしゃぶってあげるわ)
既に管理局をターゲットに定め黒い企みを徐々に進めていたのだ。
「高町士郎氏は激怒されています、今はなのはさんがあんな状態ですから側を離れることは無いと思いますが、何かあったその時はどうなるか判りません。
それに、最後に写っているあの機械兵器あちらの世界まで何者かが持ち込み、
私やなのはさんを襲撃しました。
尤も全て高町家とヴォルケンリッターに処理されてしまいましたが」
「何と!では高町家は……」
「はい、はっきりと断絶宣言をされました。
この先管理局の使者である私と家族同然の付き合いをしているリンディ提督、アースラのスタッフ以外は全て殺すと宣言されました、あちらの世界には誰も行かせないことです」
査問委員会は既にその用をなさなかった。
「不味いぞ、高町なのはですらあの強さだ、あの100倍以上強い奴らとはどんな化け物だ?」
「攻められて勝ち目はあるのか?」
「で、高町なのはの容態はどうなのかね?」
「未だ意識不明の重体であり、予断を許さぬ状況には代わり有りません、もしもの事が有れば……」
管理局は恐怖のどん底に叩き込まれていた。
結局、査問委員会は何の処分も決めないままに解散し高町家対策をどうするのか?と言う議論にすり替わっていた。
「ふう、おかげで助かったわ」
レティがほっと胸を撫で下ろしていた。
作品名:神手物語(ゴッドハンドストーリー)~名医の条件~ 第1~9話 作家名:酔仙