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IS  バニシングトルーパー α 002

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 さすがは国内屈指の研究機構だけあって、予想通り防衛戦力としてかなりの数のPTが配備されていて、グラウンドにも戦闘ヘリが何機か泊まってあった。
 研究施設にしては些か物々しく思えるが、扱っているものを考えると、それも納得できてしまう。

 「拡張性よりも運動性を重視した機種ですが、やっぱりこの辺の地形と気候に合わせて改造されてますね。武装は標準装備と違いますし、高感度センサーまで増設してあります。実は自分もこの間、タ○ヤから発売されたプラモデルを購入しましたけれど、やはり実物は迫力が違いますね。あっ、あちらにあるのは……」
 「ええっ、うるさいわね! 少し静かにしなさい!!」
 機嫌の悪さ丸出しの大声で、セシリアはクリスを黙らせた。
 PT好きにとっては堪らない光景だろうけど、セシリアからすれば、なぜそんな風情のないマシンに夢中なのかまったく理解できない。
 戦闘能力でも、ISの方が圧倒的なのに。

 案内の人と共にしばらく歩くと、奥の建物から白衣を着た技術者らしい人間が何人か出てきたのが見えた。事務的な笑顔を浮かべて、まっすぐにこっちへ向かってくる。

 「お待ちしておりました、ミス・オルコット」
 「また会えて嬉しいわ、Dr. ウィリアムズ」.
 会話のできる距離まで近づくと、ちょっと太ったリーダー風の男とセシリアが簡単な挨拶を交わした。すでに面識が何回かあったからか、それとも学者気質だからか、合流した人達は時間を無駄にすることなく、セシリアと共にさらに奥へ歩きだす。

 「……ビットシステムの搭載したISはですね、世界中でもイギリスにしかありません。立体化戦術を求められえるISにとって、きっと強力な武器となるだろう」
 「わたくしも同感ですわ」
 「代表候補生の中でビットシステムの適性が一番高いあなたが試作一号機を稼動していけば、試作二号機の完成度もきっとさらに高まっていくことでしょう。忙しい時に本当に申し訳ありませんが、この三日間、よろしく頼みますよ」
 「はい。ところで、“試作一号機”というのは、正式の名称でしょうか」
 「ああ、それなんですが、実はうちの連中、ネーミングセンスがなくてね。よろしければ、正式名前はミス・オルコットにお任せします」
 「分かりました。では早速ですが、実機を見せていただけます?」
 「それは……こっちとしては助かりますが」
 一瞬驚いた表情を浮かべた後、Dr. ウィリアムズはその場に立ち止り、薄く笑う。

 「到着したばっかりですし、まずは部屋でゆっくりしていただくつもりでしたが」
 「お気遣いには感謝しますが、お互いも時間が惜しいのでしょう」
 自信満々の笑顔で、セシリアはDr. ウィリアムズの視線を真正面から受け止めた。
 華奢な体をしているが、仮にも代表候補生に選ばれる人間。専門の訓練を受けてきたセシリアの身体能力は、その辺の成人男性よりも高い。

 「分かりました。ではミス・オルコット、こちらへ。執事のキミには、先に部屋へ案内致しましょう」
 それを思い出したのか、すぐに納得したDr. ウィリアムズは部下に何か言い付けた後、セシリアに実験場の道を示し、後で荷物を携えているクリスに別の案内役をつけた。

 「ではお嬢様、先にお部屋へ行きますので、まだ後ほど」
 「勝手に一人で昼食をとってはダメですよ」
 「分かっておりますとも、お嬢様」
 お昼まであと二時間ほど。午前は多分完成したISを装着し、簡単にセッティングするだけで終わるのだろうから、さすがに無理言ってまでついて行くことはない。
 簡単な会話を交わして、クリスは案内役と共にその場を後にしたのだった。



 *



 「ミサイルポッドにガトリングガンまで、随分と本格的だな」
 愛用のデジタルカメラを近くに並んだPTに向けて、クリスは独り言のように呟きながらシャッターを連続して切った。
 用意した部屋で荷物の整理をしてすぐ暇になったから、せっかくだからPTの見学をと思って、外に出てみた。そして幸運なことに、敷地内で見かけたPTは全機起動中だった。
 今セシリアたちのいるはずのドーム状実験場を包囲する形で配備されて、センサー全開で警備任務を遂行している。その様子だと、実験場内部にも相当の数が配備されているのだろう。
 PTという陸戦兵器は軍に限らず、民間保安会社や一部の警察部署にも採用されており、その殆んどは軍用機のデチューンモデルだが、今ここにあるのは全部標準軍用モデルが火力と索敵能力を強化したタイプ。
 おまけに銃を構えた複数の軍人らしき人物が、周囲に歩き回っている。

 「なんか、ぴりぴりしてるな……」
 この光景を見たクリスは、素直な感想を口にした。
 もっとPTの写真を撮りたかったが、さすがに不審者と思われて連行でもされたら面倒だから、さっさと部屋に戻ろう。

 「おい! そこで何をしている!」
 「ひぃっ!」
 踵を返した瞬間に、背後から男性の怒鳴り声が響いた。クリスはびっくりして、思わずその場に立ち止る。
 少し痩せ気味の男性軍人一人が、クリスの後から近づいてくる。

 「貴様、さっきからコソコソと、一体何者だ!?」
 「と、通りすがりの使用人です、はい」
 「はああ?!」
 クリスの返事を聞いて、軍人はますます不審な目で睨んでくる。

 「貴様、そのカメラは何だ。まさか、どこかのスパイじゃあるまいな?」
 「ええっ!?」
 「身分証明を出せ」
 「も、持ってません……」
 「なら一緒に来い!」
 「ちょっ、そんな……!」
 「お待ちなさい」
 軍人に腕を掴まれて、どこかに連行されそうになったクリスに、助け船を出す人物が突如に現れた。
 長いコートを着て、サングラスをかけたショートヘアの女性だった。彼女の顔を見るなり、軍人の顔色が少し変わった。
 来た方向から推測するに、おそらくは実験場の中から出て来たのだろう。

 「彼は不審者ではなく、オルコット家の人間。それは私が保証するわ」
 ゆっくりと近づいてきて、女性は軍人にそう言いながらサングラスを外し、その冷静さと鋭さが兼ね備えた瞳で、二人を見る。
 その目は彼女の声と同様、感情は伴わないが、人に服従させる何かを感じさせる。

 「……分かりました。では、自分はこれで」
 彼女とクリスの顔を交互して見て、軍人はあっさりとクリスの腕から手を離して、自分の持ち場へ戻っていった。

 「大丈夫かしら」
 「あっ、はい。ありがとうございます」
 少し乱れた服の襟を整えて、クリスは女性に正面を向けて、礼を言った。
 軍人の態度から察するにおそらく目上の人間だろうけど、目の前にいるこの女性はとてもあの軍人と同じ人種には見えない。

 「礼を言うほどのことじゃないわ。……私の名はヴィレッタ・バディム。ここのセキュリティアドバイザー」
 自分から名乗りを上げたヴィレッタ・バディムは友好的な笑みを浮かべて、握手を求めるように手を差し出した。

 「呼ぶときは、ヴィレッタでいいわ」
 「あっ、はい。自分はクリストフ・クレマン。クリスと呼んでください」
 少々どもった声で返事して、クリスはその手を握り、ヴィレッタと握手を交わした。