図書館戦争 堂x郁 記憶喪失(郁視点)
午前中のハイポート、リペリングのメニューを終え、若干身体が疲れていると感じたが、郁はまだまだ平気!と気合を入れ直して柔道着に着替えた
午後の格闘訓練では、玄田隊長自らが相手をすると言って、ズルズルと郁を引きずって行く
「笠原!思いっきり投げて構わんぞ!」
「はいっ!」
「始め!」
号礼が聞こえた瞬間、郁は熊のような体系の玄田背後に回り込み、一気に大外刈りを繰り出した
ダーーーンと大きな音が道場に響き渡る
玄田は引っくり返ったままガハハハハと笑い、傍らに座った郁の頭をガシガシと撫でる
--- もげる!首がもげるーーーー
玄田の腕を取り抵抗するが、ビクともせずされるがままになっていると、堂上が近づき「いい加減起き上がってください!」と一喝し玄田の腕を掴んだ
やっと解放された郁はグチャグチャになった髪の毛を手櫛で整えながら立ち上がった
*
その後も訓練は続き、玄田から「笠原!お前は大技ばかりだから寝技も習得しろ!」と何故かニヤニヤしながら言われた
「寝技ですか?隊長相手だと私の身体が壊れます」
「それもそうだな。それなら線の細い堂上か小牧当たりに稽古つけてもらえ!」
「はぁ・・・後でお願いしてみます」
訓練終了後、近くにいた小牧を捕まえ「小牧一正!寝技教えて下さい!」と尋ねると、「うーん」と悩んだ後に「俺より堂上の方が得意だから聞いてみたら?」と返事が返ってきた。
男子更衣室に戻る堂上を見つけ、郁は「寝技教えてください!」と言うと「ハァ?」と素っ頓狂な返事が返ってきた
小牧に言われたことを伝えると、堂上は片手で顔を抑えながら何やら考えている様子だった。
そもそも上官に直接教えを乞うなんて、身の程知らずなのだろうか?
同僚の手塚に相手してもらった方が良いかもしれない
「他の方に聞いてみます!」と踵を返そうとしたので「分かった!俺が教える!」
と郁の腕を取り告げた
その後、明日の業務後に練習に付き合ってもらう約束を取り交わし別れた
*
何かしら理由を付けて、堂上と一緒にいられるということが嬉しかった
例えそれが「訓練の一環として」という色気すらない状態だったとしても、近くで堂上と接することが出来ると思うと、緩む口元を隠しきれない
柴崎からは「何か良い事あったのぉ?」と聞かれたが、「何でもないよ」と答える
チラリと柴崎を見ると、お風呂上がりで火照った頬は赤く、女の自分から見てもドキッとする程色気が漂っていた
せめて身長がもう10cm低ければ、私も女の子らしく振舞えるのだろうか?
170cm大女且つ戦闘職種、胸なんてAカップだし、化粧すら殆どしない
特殊部隊という枠組みの中だけで見れば、この身長は有利だと思うけど
やっぱり女としては好きな人に可愛くみられたい・・・
--- 好きな人・・・
堂上一正のことが好き
声を聞くとドキドキするし、側にいるだけで嬉しいと感じる
上官と部下という関係だけど、それでも一番近くであなたを感じたいと思う
この気持・・・知ってる
でも思い出そうとすると頭が痛くなる・・・なんでだろう?
*
翌日の業務終了間際、他館リクエストの処理を終え廊下を歩いていると、階段から堂上の声が聞こえた
気付かれないように気配を消し、チラリと見ると同室の柴崎と何やら立ち話をしている様子だった
邪魔しちゃ悪いと思い、その場を離れようとしたところ「きゃっ!」と声が聞こえ振り返ると、堂上と柴崎が抱き合っていた
その瞬間、目の前が真っ白になった
と同時にフラッシュバックのように記憶が甦って来た
慌ててその場を去り、人目に付かない場所まで来ると、ガクッと膝が折れその場に座り込んだ
『彼女は居ない』
堂上がハッキリとそう言ったことを思い出した
『付き合わない・・・今は他のことで手一杯だ』
--- これが堂上の本心かもしれない
--- 教官は優しいから私を傷つけないように接してくれてたのかもしれない
教官も自分のことを好きだと思っていたが、それは勘違いだったのかも・・とグルグル考える
最悪の方向へ考えが進んでいく
--- このまま記憶が無いことにして、教官に接した方がお互いの為になるかも
郁が出した結論は、記憶が戻ったことを黙っておくというものだった
作品名:図書館戦争 堂x郁 記憶喪失(郁視点) 作家名:jyoshico