図書館戦争 堂x郁 記憶喪失(郁視点)
店を出た後、小牧と毬絵、手塚と柴崎はそれぞれ連れだって離れて行く
郁は堂上の顔をチラリと見て「映画・・・どんなのみたいですか?」と聞く
堂上は返事もなしに慣れた手つきで携帯を操作し、現在公開中のリストを見せながら
「笠原はアクション映画の方がいいだろう?」と聞いてきた
確かにラブストーリーものは恥ずかしくて凝視できない
身体を動かすことが好きな自分はアクション映画の方を好むと何故知ってるのだろうか?
「まぁ〜なんだ、お前の上官だからな。趣向は大体分かってる」
「そっか・・そうですよね?それじゃ行きましょうか?」
上官って部下の趣味とかも把握するもんなんだ・・
根っから真面目なんだなぁー堂上さんは・・・
呑気に考えながら映画館へ向かっていた
*
映画が終わり、近くの喫茶店に入り待ち合わせの時間を潰していた
二人っきりだと会話が続かない為、郁は一生懸命映画の感想を話し、間を繋いだ
堂上は静かに郁の話しを聞き、途中相槌をいれる程度だった
--- やっぱり私と一緒じゃ楽しくないのかな
折角の機会だし、今後二人っきりになるチャンスなんて無いだろうから聞いてみよう・・
郁は思い切って「柴崎とお付き合いされないんですか?」と聞いてみた
すると、堂上は取り乱すことなく「何故そう思う?」と切り返してきた
「傍から見てもとてもお似合いで・・・理想的でしたから」と図書館に行った時の堂上と柴崎の姿を思い出しながら伝えた
すると、堂上はプイッと顔を背け「付き合わない・・・今は他のことで手一杯だ」と素っ気なく答えた
--- お似合いなのになぁー
でも、堂上の返事を聞いてホッとしている自分が不思議で仕方なかった
*
夕食は釜めし屋だった
店内は静かで、個室制になっていた
それぞれが今日一日のデート内容を話しながら時は過ぎて行った
食事がひと段落したところで、郁は「明日、茨城に帰ります」と伝える
この二日間で感じたのは、記憶はどうあれ「本を守りたい」という純粋な気持ちは失われておらず、今の自分は「守れる」立場であると気付いた
上官や同僚と接して、皆が今の自分を受け入れてくれることにも感謝したい
堂上達の役に立ちたい。足手まといにはなりたくない
ちゃんと出来るか不安な部分もあるが、きっと身体が覚えているハズだ
その気持を皆の前で伝え、「ご指導の程、よろしくお願いします」と敬礼した
*
茨城に戻った後は散々な目にあった
寿子からは「防衛員なんて女の子のすることじゃありません!」やら「怪我したらどうするの?!」やら・・・
仕舞には「あなたがやらなくても他の人が代わりに本を守ってくれるわよ」と地雷を踏んだ
キレかかった郁を止めたのは克宏だった
「ここは任せなさい」と言って、寿子を宥めやっとの思いで基地へ戻ることが出来た
戻って来てからは業務部への貸出という名目で柴崎と一緒に子供達への読み聞かせをしていた
以前の自分を知る子供達が「郁ちゃんどうしたの?ボクのこと忘れちゃったの?」と言う度に胸が苦しくなるが、それでも以前と変わらず接してくれている姿を見て戻って来て良かったと思うことができた
堂上とも以前に比べれば普通に接することができ、業務連絡や日報を渡すときなど、頭をポンポンと叩いてくれる
堂上が触れた個所が熱くなり、心臓が跳ねる
ドキドキしすぎて心臓が壊れてしまうのでは?と思う程だった
クリスマスも近づき、館内の飾り付けやイベントの企画などで毎日慌ただしく過ぎてていた。
そんなある日、堂上から「明日、訓練を行う」と告げられた
まだ戻って来てからそれほど経っていなかったが、正直なところ身体を動かす機会が少なく、訓練と聞いて意気揚々としていた
作品名:図書館戦争 堂x郁 記憶喪失(郁視点) 作家名:jyoshico